第33話 オムライス
「ふぅー、やっと作業終了! それにしても少し見ない間に畑が大きくなったわね」
「ベルベットさんが帰ってから、育てている作物は1.5倍くらいには増えているんですかね? ただ、畑が大きくなったのはここ最近のことですよ」
「ですね。佐藤さんがマッシュを従魔にしたことで、畑の余っていた箇所に作物を植えられるようになったのです」
「へー。近くで見ていたけど、確かによく働いていたわ。可愛くはないけど、働き者なのね」
ベルベットさんにそう言われ、少し照れくさそうにしているマッシュ。
マッシュは完全に私達の言葉が聞き取れるようで、こういう風に反応を見せてくれる。
ライムやスレッドも指示に従ってくれるし、聞き取れているのかもしれないが……。
表情が分からないから、伝わっているのかいまいち分からないのだ。
「マッシュは本当によく頑張ってくれています。今日もご褒美をあげないとですね」
「マッシュへのご褒美? 何か食べ物でもあげるの?」
「はい。マッシュは野菜が好物なんですよ。特に私のいた世界の野菜が好みのようで、与えると凄く喜びます」
「へー! マッシュは野菜を食べるのね。……私があげてみてもいいかしら?」
「もちろんです。収穫した野菜からあげてみてください」
私が許可を出すと、ベルベットさんは先ほど収穫したトマトをマッシュに手渡した。
受け取ったマッシュは満面の笑みを見せてから、勢いよくかぶりついた。
「本当に食べた! それにしても美味しそうに食べるわね」
「労働後のご飯が美味しいのは魔物も同じなんでしょうね。あと3、4個あげてから、私達もご飯にしましょうか」
「賛成。さっきは本じゃなくて少しだけガッカリしたけれど、今から異世界料理が食べられるのは結構楽しみかもしれない」
「腕を振るうので楽しみにしていてください。前回ベルベットさんに食べてもらったのは、料理というよりはほぼ食材でしたからね」
「そうなの? フライドポテトなる料理は凄く美味しかったけど……更なる美味しい料理を食べれるのね!」
王都に帰らなくてはいけないことから、前回は油で揚げるだけのフライドポテトしか作ってあげられなかったが、今回はここで寝泊まりするということもあって時間がある。
漫画のためとはいえ、ベルベットさんは前回以上に頑張ってくれたし、腕によりをかけて料理を作るとしよう。
私はひとまず先に別荘に戻り、料理の準備を行うことにした。
まずは食材選びから。
作る料理は……トマトも活かせるオムライスがいいだろう。
ということで、お米、卵、たまねぎ、鳥もも肉を購入。
一時期、ぱっかーんオムライスの動画を見るのにハマっていて、よく自分で作っていたためオムライスには自信がある。
……けど、一番失敗しそうで怖いのはご飯を炊くこと。
私は基本的に炊飯器でしか焚いたことがないため、鍋で焚くのは今回で人生三回目。
炊飯器が壊れてしまった時に三回だけ鍋でご飯を炊いた経験はあるけど、かなり前のことのため記憶が曖昧。
そんな状態でありながらも、高いNPを使って購入したお米を無駄にできないため、必死に記憶を呼び覚ましながら慎重にご飯を炊いた。
水加減、火加減、共に気を付けながら、沸騰しないように十分火にかける。
多分だけど、無事に焚けた……はず。
更に十五分ほど蒸さないといけないため、お米の具合いは確かめられないが、成功していると信じて、オムライスの準備に取り掛かろう。
みじん切りにした玉ねぎを炒め、軽く火が通ったら一口大に切ったもも肉も一緒に炒める。
そうこうしている内にご飯が蒸されたため、蓋を開けて確認してみると――完璧に焚き上がっていた。
ここが一番怖かったところだったためホッとしつつ、焚けたご飯をフライパンの中に投入。
しっかりと混ぜ合わせながら炒めていき、自家製のケチャップ、それから塩コショウで味を調える。
これでチキンライスは完成で、後は卵部分を作るだけ。
ここの卵部分はマスターするまで作ったため、何の怖さもなく、慣れた手つきで筒状の卵を完成させた。
そして、形の整えたチキンライスの上に乗せ――オムライスの出来上がり。
後はもう二つ作ってから、シーラさんとベルベットさんの前で包丁を入れるだけだ。
「料理ができました。こちらが今日の夜ご飯のオムライスです」
「おむらいす? 上には……卵焼きが乗っているのかしら?」
「似ていますが少しだけ違います」
「うー、私も初めて食べる料理です! 香りもいいですし、お腹が空いてきました!」
オムライスを興味深そうに見ているベルベットさんと、いつものように料理の前ではウキウキなシーラさん。
二人の表情を見て心の底から満足しつつ、三人で和気あいあいとオムライスを食べたのだった。
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