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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第363話 ピエロ


 優勝者のシーラさんを労った翌日。

 2日連続のイベントであり、今日は仮装パーティーが開催される。


 仮装パーティーは全員参加であるため、昨日は観客の1人だった方々も参加者として楽しんでもらえるはず。

 去年なんかは、ルーアさんが思わぬ脚光を浴びていたからね。


 本人は恥ずかしがっていたけど、今年も期待したいところ。

 この後の仮装パーティーに思いを馳せながら、淡々と農作業をこなしていく。


 午後までにはしっかりと農作業を終わらせ、ここからは私も仮装の準備を行う。

 去年はゾンビのコスプレであり、褒められたけど少し不服な結果ではあった。


 今年は――天使の格好を用意している。

 堕天使であるヴェレスさんが越してきたことからヒントを得て、天使の格好をすることにした。


 スマブラでもピットという天使キャラがいるし、刺さる人には刺さるコスプレ。

 そんなことを考えながら着替えを終えたんだけど……鏡に映る自分を見て、驚愕してしまった。


 天使というよりも、家を持たない風来坊にしか見えない。

 弱々しい上に、白いローブも汚らしく見えるし、容姿が普通のザ・日本人の男が天使のコスプレをしても、全くもって天使には見えないことが今、判明した。


 いや、冷静に考えれば分かることだったと思うけど、イベントに浮かれすぎて頭から飛んでしまっていた。

 鏡の前で5分ほど絶句していたが、何度確認しても容姿が変わることもない。


 仮装もこれしか用意していないし、最終手段として去年のゾンビのコスプレを着用する手もあるけど……去年と同じはさすがに気が引ける。

 なら、笑いものになったほうがマシだし、仮装パーティーを盛り上げられるならピエロになってみせる。


 そう強く自分に言い聞かせてから、天使の格好でイベントホールへと向かうことにした。

 去年と同様に、予定の時刻よりもかなり早めにやって来たんだけど、すでにかなりの人が集まっている。


 誰が誰だか判別できないため、声を掛けて確かめていこう。

 私は入口近くにいた、海賊王のコスプレをしている人に声を掛けた。


「どうも、佐藤です。えーっと、どちら様でしょうか?」

「俺だ。ドニーだ」

「えっ!? ドニーさんなんですか?」


 付け髭も相まって、声をかけても誰か全く分からなかったんだけど……まさかのドニーさん。

 コスプレのクオリティがめちゃくちゃ高いし、死ぬ前にニヤリと笑い、大海賊時代が始まりそうなほど。


「お嬢様に無理やり着せられたんだ。まぁ変な格好じゃないからまだいいが」

「なるほど。ベルベットさんが作った衣装だったんですね。すごく似合っていますよ」

「それなら良かった。……で、佐藤は何の仮装をしているんだ?」

「いやぁ……想像にお任せします!」


 このクオリティを前にして、天使の仮装をしていますとは言えなかった。

 私は手短に話を終えて、そそくさと逃げるようにその場を後にした。


 ピエロになる覚悟をしていたんだけど、純粋に疑問を持たれてしまうと恥ずかしさが増してしまう。

 体が熱くなるのを感じていると、今度は声を掛けられた。


「おお、佐藤なのじゃ! わらわの仮装はどうじゃ?」


 振り返ると、そこにいたのはヤトさんとアシュロスさん。

 去年はドラゴンの仮装だったけど、今年はエルフの仮装をしているみたい。


 耳をとがらせ、服装もローゼさんにだいぶ寄せている。

 アシュロスさんもエルフのようであり、薄着ゆえに肌の露出が多いので目のやり場に困ってしまう。


「今年はエルフの仮装ですか? すごくお似合いですよ」

「ぬっはっは! ローゼに相談して、衣装を決めたからのう! アシュロスはちょっと衣装が小さかったみたいじゃが!」

「事前に言ってほしかったです。仮装と割り切っていますが、ふと冷静になると恥ずかしくて顔から火が出そうです」


 アシュロスさんは私と同じく、顔を真っ赤にしている。

 まぁ、私とは恥ずかしさのベクトルが違うんだけどね。


「すまんのじゃ! それで、佐藤は何の仮装なんじゃ? ……ぷぷ、よく見ると今年も変な格好じゃな!」

「一応、天使の仮装なんですが……見えないですか?」

「て、天使……!」


 ヤトさんが軽く笑ったのに対し、吹き出したのは意外にもアシュロスさんの方だった。

 天使だと思っていなかったのもあるだろうけど、見事にツボっている様子。


「天使には見えんのじゃ! ただ、アシュロスは笑いすぎじゃ!」

「……ふふ、ふ……す、すみません。馬鹿にするつもりは……んっふっふ」


 笑いを堪えようとして、余計にツボに入ってしまったみたい。

 だいぶ恥ずかしさはあるけど、こうして笑ってくれた方が気持ちは楽。


「私の格好で楽しんでもらえたなら良かったです」

「アシュロスは失礼じゃな! 確かに佐藤の格好は変じゃが、そんなに笑うことはないじゃろ!」

「す、すみません。……で、でも、天使………ぷっふっふ」


 ヤトさんが宥めても笑いは止まらず、しばらくアシュロスさんは苦しそうに笑っていた。

 とりあえず、楽しそうなアシュロスさんが見られたから良しとしよう。

 今日はピエロのつもりで、他の方たちとの交流をしていこうかな。



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