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第32話 やる気満々


 マッシュを従魔にしてから10日が経過。

 育てる作物を増やしたことで、1日当たりの収穫量がかなり増えた。


 この十日間でマタンゴに費やした6000NPの回収は済んでおり、今現在の所持NPは8462。

 ペースが非常に速いが、次の魔物を購入できるくらいのNPが既に貯まっている。


 今のところの目標はシーラさんおすすめのキャットメイジか、私が良いと思ったソイルシルフ。

 シーラさんによると、キャットメイジは農作業で重宝しそうな土属性の魔法を使えるだけでなく、水、火、風の四元素全ての魔法を扱うことができるらしい。


 そして、私が良いと思ったソイルシルフは土と風の魔法しか扱えず、更に体も20センチ前後と小さい魔物。

 魔法以外では役に立ちづらいということで、シーラさんはキャットメイジを推薦してくれたのだが……問題なのは値段。


 ソイルシルフが10000NPなのに対し、キャットメイジは30000NPもするのだ。

 マッシュのお陰で一日で稼げるNPは増えたとはいえ、30000NPは流石に高い。


 お昼ご飯のサンドイッチを片手に頭を悩ませていると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 視線を向けると……馬車から降りたベルベットさんがこちらに駆け寄ってきている。


「佐藤、また手伝いに来たわ! しかも、今回は泊まり。それも六日間連続で!」


 そう叫びながら近づいてきたベルベットさん。

 満面の笑みであることから、ここを気に入ってくれていることが分かり、こちらもほっこりした気持ちになる。


「また働きに来てくれて嬉しいです。ですが、ここに泊まっても大丈夫なのですか?」

「ええ、しっかりとお父様に許可をもらってきたから。私の仕事も全て済ませてきたし、何も問題ないわ」

「そういうことなら良かったです。お部屋は空いていますので、自由に使ってください」

「ええ。遠慮なく使わせてもらうわ。それと、報酬は本の続きを2冊でお願いするわ」

「分かりました。その代わり、キッチリと働いてもらいますよ」

「最初からそのつもり! それと、馬車にお土産があるから持っていっていいわよ」

「お土産……ですか?」


 何を持ってきたのか検討もつかないのだが、ベルベットさんは特に何も言及することなく、別荘の中に入っていってしまった。

 私は首を傾げながらも、手に持っていた食べかけのサンドイッチを口に押し込み、馬車のところに行ってみることにした。


 馬車にはベルベットさんの付き人のような人が乗っており、無言のまま後ろの荷台を指差した。

 私は軽くお辞儀をしてから、馬車の後ろに回り込んでお土産とやらを確認する。


 馬車の荷台に積まれていたのは、色々な道具。

 農業に使える道具はもちろん、調理器具やランタンなんかもあり、便利道具の詰め合わせを持ってきてくれたようだ。


 なるべく施しは受けないようにしようと思っていたけど、流石にこの便利グッズは嬉しい。

 これを受け取らないという選択は……取れない。


 私はとりあえず全ての道具を馬車から下ろす。

 そして、道具を全て下ろし終えたタイミングで、馬車は王都に戻るように動き出し始めた。


「…………王女様に手を出したら、例え異世界人であろうと命はないと思え」

「て、手なんか出しません!」


 初めて喋ったと思いきや、ドスの効いた声で脅してきたベルベットさんの護衛らしき付き人さん。

 私は必死に手を出さないことを伝えたのだが、付き人さんは私の言葉に返事をすることなく帰っていってしまった。


 完全に本気の目をしていたため、ベルベットさんにはある程度心を開いてもらった感じはあるが、ベルベットさんは周りからは良く思われていなさそう。

 何があっても手は出さないと心に決めつつ、私はベルベットさんのお土産を運んだ。


「あっ、佐藤。お土産はどうだったかしら? 金目のものではなく、使えるものを選んだつもりだけど」

「凄くありがたいです。金銭価値の高いものでしたら、受け取れなかったのですが……こちらは大事に使わせて頂きます」

「ええ、遠慮なく使って。私が快適に働くための道具でもあるから」

「本当にありがとうございます。お礼と言っては何なのですが……」

「本をプレゼントしてくれるのかしら!? そういうつもりじゃなかったんだけど……どうしてもというなら受け取らせてもらうわ」


 まだ何も言っていないのに、そう言って詰め寄ってきたベルベットさん。

 ちなみに漫画を渡すつもりではないんだけど……凄く言い出しにくい空気。


「……いや、本でのお返しではありません。今日と最終日は異世界料理で持て成すということを伝えようとしていたのですが……勘違いさせてしまってすみません」

「うぅ……。いや、別に期待していた訳じゃないから……気にしないでいいわ」


 ベルベットさんは口ではそう言っているが、表情は完全に落ち込んでいる。

 1冊210NPだし、今の手持ちのNPを考えたら、便利な道具のお礼にプレゼントしても構わないのだが……ここは渡さない方がいいと判断した。


「その代わりといってはなんですが、この6日間いつも以上に頑張ったと私が判断したら、今回の報酬は本を2冊から3冊に増やします」

「それ、本当!? 私、本気で頑張る!」

「期待しています」

「任せて! 何でもやるわ!」


 気にしていないという発言は何だったのか、一気にやる気が出た様子。

 さて、ベルベットさんのやる気も出たようだし、私は早速午後の作業に戻るとしよう。


「それじゃ私は畑仕事に戻りますので、ベルベットさんは別荘に荷物を置いてきてください。午前中は働かなくても大丈夫ですので、ゆっくりしていて――」

「いいえ、今すぐにでも働くわ! 2冊か3冊かでは大分違うからね! 荷物を置いたらすぐに準備して来るから!」


 私の言葉も聞かずに、荷物を持って別荘に向かって走って行ってしまった。

 露骨にテンションが下がっていたし、少しでもやる気を出してくれたらいいなと思っての提案だったけど、やる気を出しすぎる結果になってしまったみたい。


 ……まぁやる気を出してくれることはいいことか。

 そう自分の中で結論を出し、私はライムにご飯を与えに行っているシーラさんに事情を説明しに向かったのだった。



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