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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第354話 台風


 全てのアンデッドを屠り、優雅に帰ってくるヴェレスさん。

 その強さにドン引きしてしまったけど、ピンチを救ってくれた事実に変わりはないため、私はすぐにお礼を伝えることにした。


「ヴェレス、駆けつけてくれてありがとうございました。おかげで被害を出さずに、アンデッド軍団を制圧することができました」

「いえいえ。佐藤様が襲われているのに、駆けつけるのが遅くなってしまいました。それに、私がおらずとも、あの程度の魔物たちなら皆さんで制圧できていたでしょうし……怒りのあまり、少々出しゃばった行動を取ってしまいました。申し訳ございません」


 制圧を終えて戻ってくるまでの間は褒めてほしそうな表情をしていたのに、途中から状況を思い出したのか、本当に申し訳なさそうな顔に変わった。

 確かにヴェレスさんが来ていなくても制圧はできていただろうけど、安全に、そして素早く制圧できたのは間違いなくヴェレスさんのおかげだ。


「謝る必要はないですよ。ヴェレスのおかげで安全に制圧できましたから」

「お優しい言葉をありがとうございます。色々と反省しないといけない点が多く……また別日に正式に謝罪をさせていただければと思います。本当に申し訳ございませんでした」


 ヴェレスさんは一方的にそう謝罪の言葉を述べ、深々と頭を下げてから、やって来たときと同じ位置に時空の裂け目を作り、引き止める間もなく帰っていってしまった。

 ……本当に台風のようで、私は何も言葉を発せずに固まってしまう。


 いきなり敵のような現れ方をしたと思ったら、一瞬でアンデッドドラゴンを含むアンデッド軍団を全滅。

 そして、なぜか深々と謝罪をしてから帰るというトンデモっぷり。


「……な、何だかすごい方ですね」

「私も呆然としてしまっています。ただ、ヴェレスのおかげもあって、危機は去ったということでいいんですよね?」

「はい。もう魔物の気配はありませんし――クロウも、迫ってくる魔物の姿はなくなったと合図を出してくれています」


 上空を飛んでいるクロウからの合図を受け、安全と判断したシーラさん。

 なにはともあれ、全員が怪我なく対処できて本当に良かった。


 全員が頭の片隅でヴェレスさんのことを気にしつつも、難を逃れたことに喜び合う。

 そんな中、慌てた様子で駆けつけてきたのは、ドレークさん率いる龍人族の方々だった。


「おい! 魔物が攻め込んできたって報告を受けて駆けつけてきた! 今、攻め込んできた魔物はどこにいるんだ?」

「皆さん、駆けつけてくださってありがとうございます。ただ、申し上げにくいのですが……」

「まさか、明け渡したとかじゃねぇよな!?」

「その逆です。もう魔物をすべて討伐してしまったんです」

「なんだよっ! そんな喜ばしいことを言いにくそうに言うな!」

「すみません。わざわざ来てくださったのに、無駄足に終わらせてしまったのが申し訳なくて」

「無事が第一なんだから、何もないのに呼びやがって――なんて言わねぇから! ……ただ、随分と早すぎないか? まだ開戦もしていない想定だったんだが!」


 これは説明するのが難しい。

 なにせ、私ですらあまり理解できていないからね。


「簡単に説明しますと、最近ここに越してきてくれた方が、一瞬で倒してくれたんです」

「へぇ、そんなに強い奴が来ていたのか! そいつはどこにいるんだ?」

「もう帰ってしまいました」


 私の返答に、首を大きく傾げるドレークさんたち。

 現れたときから意味が分からないし、どうやって帰ったのかも本人に説明してもらわないと謎のままだ。


「全くもって理解ができねぇ! 佐藤さんたちが夢でも見ていたってことじゃねぇよな?」

「私も理解はできていないので、後日話す機会があったときに聞いてください」


 私が伝えられるのはこれだけ。

 見たことを詳細に伝えることはできるだろうけど、ここからさらにダークエルフの方々や獣人族の方々にも同じ話をしなければならないだろうからね。


 ヴェレスさん本人から聞いた方がいいだろうし、これから長話をするにはあまりにも時間帯が悪すぎる。

 緊急事態はあったけど、明日も農作業をやらないといけないしね。


「本気でよく分からないが……佐藤さんもよく分かってないってことは分かった! とりあえずもう安全ってことでいいんだな?」

「はい。もう安全だということは、自信を持って言い切れます」

「それなら良かった! それじゃ俺たちは帰らせてもらう! 次にまた何か危険が迫ったときは、絶対に遠慮するようなことをせずに俺たちを呼べよ! 過剰防衛だったとしても、悪いってことはねぇからな!」

「ありがとうございます。また襲撃があった際は、必ず応援要請を送らせていただきます」


 ドレークさんは私の言葉に片手を挙げて答えると、颯爽と帰っていった。

 こういった気遣いの言葉をかけてくれるのが本当にありがたい。


 それからダークエルフの方々、獣人族の方々と順番に駆けつけてくれ、私は謝罪の言葉を交えながら、すでにすべてが済んだことを報告していった。

 全員がヴェレスさんのくだりで首を傾げる結果となり、そこだけはうまく説明できなかったのが申し訳ないけれど、寛大な対応を取ってくれて良かった。

 明日の朝から農作業を行わないといけないのは大変だけど、何とか気持ちを切り替えて明日に備えよう。



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