表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

360/363

第345話 大満足


 私の胃もたれ事情は置いておいて、揚げ物が最高に美味しいことは間違いない。

 感動して唐揚げをたくさん食べてくれているクリスさんに、私は微笑ましい気持ちになりつつも、あまり食べすぎないように止める。


「クリスさん、唐揚げ以外も食べてみませんか? お腹いっぱいになってしまいますよ」

「これで満腹になれるなら本望なんだけど、確かにせっかくなら他のも食べた方がいいわね」

「そちらの白いやつや、茶色いお肉はおすすめです」

「白いやつ? 妙にとろーりとしているのね」


 クリスさんは私が勧めたグラタンに興味を示すと、小皿に取り分けて早速パクリ。

 こちらも気に入ってくれたようで、またしても目を見開いている。


「――これも美味しい! クオリティが高い料理ばかり。これが異世界の料理なの?」

「食材も異世界のものを使っているので、完全な異世界の料理ですね。全部美味しいと思ってもらえるはずですよ」

「流石に気になってきた」


 クリスさんは腕まくりをすると、グラタン、ハンバーグ、フライドポテト、チョレギサラダ、餃子、焼き鳥と、並んでいる料理を片っ端から食べ始めた。

 細身だし、食は細いのかと思ったけど、その食べっぷりはシーラさんにも勝るとも劣らない。


「……はぁー、幸せ。こんな料理を毎日食べているの? 私が移り住みたいぐらいだわ」

「流石に毎日は出していませんが、月に2回ほどは出していますね」


 +αでイベントがあった際の食事会もあるから、毎週1回ぐらいは食べることができる計算になるかもしれない。

 軽食なら割と頻繁に地球の料理を作るし、移り住めばかなりの確率でありつくことはできる。


「うちが一番驚いたんは食事やったなぁ。いなり寿司に出会えて、生きてて良かったって思えるくらいやし」

「私は全ての料理ね。これまではあまり食に興味がなかったのだけど、これを機に目覚めてしまいそうで怖いわ」


 そう言いながらも、食べる手を止めないクリスさん。

 更にもうワンプッシュしたところで、ようやく限界を迎えた様子。


「もう何も食べられない。娯楽に食事。天国みたいな場所ね」

「すみません。言い忘れていたんですが……デザートがあるんですが、食べられますか?」

「むむむ……。い、頂くわ!」


 お腹を擦りながら躊躇はしていたんだけど、すぐに食べる決断を取った。

 あまりにも幸せそうに食べていたため、デザートがあることを伝えるのが遅れてしまって申し訳ない。


「それでは、もう少し時間が経ってからお出ししますね。今日は泊まりになるんですもんね?」

「ええ。佐藤がいいと言うなら、泊めさせてもらうつもりだったわ」

「もちろん大丈夫ですよ。こんなに暗くては帰るのも大変でしょうしね。それでは、ひと休みしてからデザートをお出しします」


 一度解散とし、後片付けを行ってから再集合をかけることにした。

 例によって、クリスさんは漫画を読んでいたようだけど、料理のおいしさを知ったからか、再集合には渋らずにやってきてくれた。


「そろそろデザートを、と思ったのですが……お腹の方はいかがですか?」

「まだ全然お腹いっぱいだけど、デザートなら食べられるぐらいには減ったわ。一体どんなデザートを食べられるのか、本当に楽しみ」


 クリスさんはこれまで見たことがないほど、ウキウキした表情を見せてくれている。

 女性が甘い物に目がないというのは、この世界でも共通みたいだね。


「それでは持ってきますので待っていてください」


 私は台所に戻り、先ほど作ったシュークリームを持ってきた。

 作ったといっても、一番重要な皮の部分はノーマンさんが焼いてくれ、私は中にクリームとカスタードを詰めただけだけどね。


「お待たせしました。シュークリームというデザートになります」

「……ん? なんだかデザートっぽくない見た目ね。リング状みたいな見た目」

「私も見たことがないです! これは新しいデザートですか!?」


 クリスさんをもてなす会と分かっていたからか、今日は黙々とご飯を食べていたシーラさんだったけど、初めて見るシュークリームを前にして飛び出してきた。


「はい。外の生地が良いアクセントになって、美味しいはずです」

「楽しみです! 早速食べていいですか?」


 そう尋ねてきたものの、返答を待たずにシュークリームに手を伸ばし、そのままパクリと頬張った。


「――んんー! これは新しいです! 美味しいー!」

「……ごく。そんなに美味しいの?」

「本当に美味しいですよ! クリスさんも食べてみてください!」

「なら、頂かせてもらうわ。……甘い! ――美味しい! やっぱり異世界の料理はおかしい!」


 恐る恐る食べた一口からすぐに、大きく頬張りながら叫んだクリスさん。

 自信はあったけど、気に入ってくれて良かった。


「一人三個まで用意しましたので、食べられるならどうぞ」

「もちろん頂くわ!」

「私も頂きます!」


 2人は競い合うようにシュークリームを食べ、あっという間に完食してしまった。

 食べ終わった後のこの満足げな表情を見るに、おもてなしは大成功といえる結果だったと思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 私の別作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 私の作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▲▲▲ 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ