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第340話 ガロとジョルジュ


 きゅうりの漬物と枝豆、それからイカ焼きを用意して、私はジョルジュさんの家へと向かった。

 中からは楽しそうな声が聞こえているけど、話し方が似ていることもあって、どっちが喋っているのか判別できない。


「お待たせしました。おつまみを持ってきましたよ」

「おおー、佐藤さん。待っとったぞ。早く乾杯するとしよう」

「佐藤さんもガロも黄金酒でええか?」

「はい。黄金酒でお願いします」

「わしも黄金酒で大丈夫じゃわい」

「それじゃ乾杯じゃ!」


 グラスを合わせてから、注いでもらった黄金酒を一気に呷る。

 程よい甘さに、この後味の良さ。

 やっぱり黄金酒はレベルが高いなぁ。


「やっぱり美味しいですね。オクトーバーフェストでの評判はどうでしたか?」

「佐藤さんのお陰もあって、凄まじい売れ行きらしいぞ。黄金酒はここに来ないと売らないという制限もあってか、昨日と今日だけで在庫の半分がなくなっとったわ」

「それはとんでもないですね。造酒は追いつきますか?」

「明日からは購入制限をするから、多分じゃが在庫がなくなることはないと思うぞ。ワシの最高傑作が、世に広まってくれてホクホクじゃわい」


 ジョルジュさんは嬉しそうに酒瓶を抱きかかえており、我が子のように可愛がっている。

 一方で、ガロさんは話には興味なさそうにしているけど、黄金酒はお気に入りなのかグラスを手放さない。


 ……というか、ガロさんの顔が赤い気がする。

 乾杯する前は普通だったはずだから、乾杯前に飲んでいたってことはないと思うんだけど。


「売れたのは良かったです。……あと、ガロさん大丈夫ですか? 顔が赤いようですが、体調が悪いんじゃないでしょうか?」

「ふぉっふぉっふぉ。佐藤さん、これが正常な状態じゃ。ガロは酒好きなんじゃが、可哀想なことに酒には弱いんじゃよ」

「そうだったんですか。体調不良ではなくて安心しました」


 だから昨日も、早い時間帯だったのに既に酔っ払っていたのか。

 暴れていた男性も泥酔していたし、あの時点で酔っていること自体はおかしくないんだけど、ガロさんは一気飲みするようなタイプじゃないと思っていただけに不思議だった。


 お酒が弱いなら納得だけど……見た目は完全に酒豪って感じなだけに意外。

 思えばだけど、お酒が好きでお酒に弱い老人はあまり見たことがないかもしれない。


「……ヒック。うるさいのう。確かに弱いが、飲めるには飲めるぞ」

「ゆっくり飲んだほうがいいですよ。慌てなくても酒は逃げませんから。それよりも、2人の関係が気になります。あと……ガロさんって何者なんでしょうか? 昨日の動きが異次元だったので、強い方ということは分かるんですけど」


 聞きたいことがありすぎて、一気に色々と質問してしまった。

 そもそもガロさんが謎すぎるし、そんなガロさんとジョルジュさんがなぜ仲が良いのかも気になる。


「……ヒック。わしはただの老人じゃよ。昔はブイブイ言わせておったがな」

「その昔を知りたいんです。冒険者だったのですか?」

「ガロは冒険者じゃなくて、武闘家じゃな。この世界には結構な数の武闘会が開かれておって、ガロはそんな武闘会を戦って回っていたんじゃ」

「懐かしいのう。……ヒック。自慢するわけではないが、当時のギナワノスではわしの名前を知らん人がいないくらい、武闘会で勝ちまくっておったな」


 ギナワノスというと、冬に遊びに行く予定がある闘技場のある街。

 王国一の武闘会が開かれるって話だったし、そこで勝ちまくっていたとなると、やっぱりガロさんは凄い方のようだ。


「ギナワノスの闘技大会にも出ていたんですか? 私、今冬の大会を見に行くんですよ。ガロさんの名前を出せば、知っている人に出会えるってことですかね?」

「……ヒック。佐藤さんはギナワノスに行くのかのう。あそこは面白い街じゃから、前乗りするのがおすすめじゃぞ。ただ、わしを知っている人はもうおらんと思う。活躍したのは随分と昔のことじゃからな」

「そうなんですか。ガロさんのことが、もう知られていないのは残念です。助言通り、前乗りはさせてもらいますが、ガロさんは大会を見には行かないんですか?」

「戦うのは好きじゃったが、見るのは別に好きではなかったからのう。……ヒック。でも、今年は久しぶりに見に行ってもいいかもしれん」

「見に行くようでしたら、ギナワノスを一緒に回ってほしいです。もちろん、お酒を奢らせて頂きますので」

「おお! そういうことなら、喜んで案内するぞ。まぁ行くかはまだ未定じゃがな」


 ギナワノスに詳しく、更に闘技大会の参加者となれば、これ以上心強い方はいない。

 こうやって知り合えたのは何かの縁だし、もし武闘大会を見に行くようであれば、是非とも案内してもらいたいな。



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