第339話 二日酔い
体にまだお酒が残る中、気だるい体を起こして何とか起床。
久しぶりに飲みすぎたこともあり、頭がガンガンするけど、顔を水で洗って無理やり目を覚ました。
昨日は楽しかったけど、今日からまたいつも通り農作業をやらなくてはいけない。
私は準備を整えてから、外へと出た。
まだオクトーバーフェストの屋台や荷物が残っていたけど、サムさんによれば今日中に片付けて撤収するとのこと。
私たちも手伝うと申し出たけど、ボーナスをもらっているのに手伝わせるのはあり得ないと、断固拒否されてしまった。
こちらとしても片付けをやってもらえるのはありがたいし、手伝うにしてもまずは農作業から。
みんながぞろぞろと出てくる中、シーラさんだけは一向に出てこない。
いつもは一番乗りが多いため、出てこないのは心配だけど……
昨日の様子からして、酔いのせいで起きられなかった可能性が高い。
いつもお世話になっているし、わざわざ起こさずに寝かせてあげよう。
ということで、シーラさんは起こさずに農作業を行うことにした。
お昼近くになった頃。
慌てた様子のシーラさんが別荘から出てきた。
昨日の様子から考えると可能性は限りなく低かったけど、急性アルコール中毒で倒れていないか心配だったため、ただの寝坊と分かって一安心。
「佐藤さん、すみません! 完全に寝坊してしまいました!」
「全然大丈夫ですよ。昨日はかなり酔っぱらっているようでしたので、起こさなかったのは私の判断です」
「本当にすみません! 昨日も迷惑をかけていませんでしょうか? 実は何も覚えていなくて……」
「大丈夫です。少しふわふわしていましたが、迷惑なことは何もしていません」
私の言葉を聞き、ホッとした様子を見せたシーラさん。
喋った感じでは意識はハッキリしているように思えたけど、記憶がなくなっていたのは意外だった。
「楽しかったとはいえ、お酒に飲まれるとは不覚です。二度とこのようなことがないように気をつけます。本当にすみませんでした」
「そんなに謝らなくて大丈夫ですよ。私も楽しかったですし、イベントでは少しくらいハメを外してもいいと思います」
猛省しているシーラさんを励ましつつ、農作業の続きを行った。
シーラさんが「残りの仕事は全部1人でやる」と言ってきたけど、もちろんそんなことはさせられない。
全員で力を合わせ、夕方前にすべての作業を終わらせた。
私たちが農作業をしている間に、テントと荷物の片付けが終わっており、サムさんたちは撤収してしまっていた。
改めてちゃんとお礼を伝えたかったんだけど、昨日の夜に一言会話をしただけでお別れになってしまったのは残念。
オクトーバーフェストに参加し、宿に泊まっていったお客さんもすでに全員チェックアウトし、王都へと帰っていった。
ルチーアさん曰く、『サトゥーイン』は酔っぱらいのおじさんたちにも大好評だったらしく、また新たなリピーターを獲得できたと喜んでいた。
もっと余韻に浸りたかったけど、農業をしている以上は休めないから仕方がない。
お酒は次の日にも響くし、農業がない冬にでも、ここのみんなで飲み明かす日を作ってもいいかもしれない。
そんなことを考えていると、大浴場から出てきた2人の男性がこちらに向かってくるのが見えた。
あれは……ジョルジュさんとガロさん?
ガロさんは別れて以来会っていなかったけど、ジョルジュさんと合流できたのは良かった。
ただ、まだ帰っていなかったことには少し驚いた。
「おおー、佐藤さん。ちょうど向かおうと思っとったんじゃ」
「ジョルジュさんとガロさん、こんにちは。ちゃんと会えたんですね」
「佐藤さんのお陰じゃな! あれから酒盛りをしておって、気がつけば今日の昼間じゃったんじゃ」
「特に予定がないってことで、しばらくワシの家に泊めることにしたんじゃが、大丈夫かの?」
「ジョルジュさんがいいのであれば、もちろん大丈夫ですよ。私も2人には色々と聞きたいので、今夜一緒にお酒を飲みませんか?」
仲が良さそうに見えるし、どんな関係なのか尋ねてみたい。
ガロさんに至っては、強いということ以外は何も分からないからね。
「もちろん構わないぞ。美味しいつまみでも持って、ワシの家に来とくれ。ガロと飲んでいるからの」
「分かりました。おつまみを持って向かわせて頂きます」
そんな言葉を交わし、湯上がりのジョルジュさんとガロさんと一時的に別れた。
酒豪な感じがするし、気合いを入れないと潰されてしまうかもしれない。
「佐藤さん。もし潰れてしまったら、明日は休んでもらって大丈夫ですよ。今日の借りはすぐに返したいので」
「ありがとうございます。なるべく潰れないようにしますが、万が一の場合はシーラさんに任せました」
「はい。任されました!」
シーラさん的には、すぐに借りを返したいだろうけど、潰れないように善処する。
私は別荘に戻り、おつまみを何品か用意してから、ジョルジュさんの家へと向かったのだった。