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第336話 オクトーバーフェスト


 オクトーバーフェスト当日。

 今日は朝からひっきりなしに馬車がやってきている。


 客層はいつもとだいぶ違い、年配の方が多め。

 それもロッゾさんのような渋いおじさんが多く、お酒に釣られてやってきたお客さんたちであることが分かる。


 メダルシステムについてはしっかりと説明してくれていたようで、今のところ問題なく換金できているようだ。

 朝から来ているお客さんということもあって、今のところ全てのお客さんが金貨1枚での換金をしてくれている。


 まぁこの時間帯からのお客さんは、メダルシステムでなくともお金を落としてくれていたとは思うけど、スムーズに受け入れられているのは嬉しい流れ。

 本格的にお店が開かれるのはお昼頃だけど、早めに開いている場所で早くもワイワイと楽しそうに飲み会が始まっている。


 そんな楽しそうな声を聞きながら、私はせっせと農作業を行う。

 今日は屋台の店主は全てサムさんが雇ってくれた人がやってくれるため、農作業が終わり次第、私たちもオクトーバーフェストに参加可能なのだ。


 そのモチベーションがあってか、私もいつも以上に体キレている感覚がある。

 シーラさんと息を合わせて収穫を終え、その後間引きを行ってから、今日の業務は終了。


「佐藤さん、お疲れ様でした。この後は何も仕事をしなくていいんですよね?」

「はい、大丈夫です。オクトーバーフェストを楽しみましょう」

「なら、早速回りませんか? 色んなお酒を飲めると聞いて楽しみにしていたんです」


 そう嬉しそうに話しているシーラさん。

 シーラさんは護衛をしなくてはいけないからという理由で、普段はあまりお酒は飲まないんだけど、お酒自体は好きなようなのだ。


 今日は王都の兵士さんを雇ったこともあり、護衛のことも気にせず飲むことができるためハイテンションになっている。

 普段も戦力は揃っているため、お酒を飲んでも大丈夫ではあるんだけどね。


「もちろん回りましょう。私はどんな人が来ているのかが楽しみです」

「模擬戦大会の時と似たような客層になるかと思いましたが、明らかに客層が違いますもんね」

「有名な方も来てくれていたら面白いんですが……今のところは呑んだくれのおじさんばかりですね」


 朝から飲んでいるお客さんは既に出来上がっているようで、ハイテンションな人が何人か見受けられる。

 迷惑を掛けたら罰金という枷が効いているのか、今のところ暴れている人がいないのは素晴らしい。


 そんなことを考えながら、早速私たちも屋台を回ることにした。

 まず立ち寄ったのは、黄金酒を売っている屋台。


 他の屋台よりも気合いを入れて作っており、今日に合わせて特注の酒瓶とラベルも用意した。

 オクトーバーフェストではコップで飲むため、あまり意味ないように思えるかもしれないけど、屋台に並べられるのは酒瓶だからね。


 『ジョルジュの黄金酒』という、カッコいい金色のフォントで書かれた名前。

 ベルベットさんに協力してもらい、目を引くイラストも描かれているため、見た目から凄く美味しそう。


 そんな特注の屋台とラベルの影響もあってか、明らかに黄金酒の屋台だけ人が多く集まっている。

 私たちはいつでも飲めるわけだし、わざわざオクトーバーフェストで飲む必要がないんだけど……飲みたいものは飲みたいからね。


「おおー、佐藤さん。もう私たちの番ですよ」

「行列でしたが、回転率がいいので提供までが早いですね」

「メダルはお釣りが必要ないですし、大正解でしたね」

「ですね。その分受付が若干混んでしまっていますが、行列がいい具合に分散できていると思います」


 他の屋台でも提供が早いのが分かるし、お金の計算をしなくていいのは思っている以上に大きいようだ。

 私も他のお客さんに習ってメダルを手渡し、代わりにコップ1杯の黄金酒を頂いた。

 そして、農作業で乾いた喉を潤すように、黄金酒を一気に呷る。

 

「ーーはぁー! 仕事の後のお酒は美味しいですね」

「はい。体に染み渡っていくのが分かります」


 コップのサイズは200mlということもあり、私もシーラさんも一気飲みしてしまった。

 すぐに次の1杯が欲しくなるけど、ここは別のお酒を飲みたいため、必死に我慢をする。


「やっぱり黄金酒のクオリティは高いですね。このまま飲んでいたいところですが、他のお酒も飲んでみたいので移動しましょうか」

「賛成です。私は異世界のお酒が飲んでみたいのですが、佐藤さんはどうですか?」

「もちろん構いませんよ。異世界のお酒エリアに行きましょうか」


 サムさんが用意してくれた、この世界のお酒を飲んでみたい気持ちがあったけど、まだ焦る段階ではない。

 まずはシーラさんの希望で、地球のお酒を飲みに行くことにした。


 もちろん全て私が用意したお酒で、異世界のお酒のみコップのサイズが半分となっている。

 更に1人当たりの制限もかけているけど、こればかりは貴重なNPを使ったため、仕方がない部分が大きい。


 高価なお酒は何一つ用意していないけど、量を用意するとなったら安価なものでも結構なNPを使うからね。

 他のお酒よりも値が張ってしまうのは仕方がない部分が大きい。


 そんなことを考えながら、異世界のお酒エリアに向かっていると、異世界のお酒エリアで何やら揉めているのが見えた。

 今回のイベントで初めての揉め事。

 来るタイミングが悪かったと思いつつも、主催者として見て見ぬふりはできないため、様子を窺いに行くことにしたのだった。



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