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第331話 サプライズ


 お昼過ぎから、一気に宿泊客がやってきた。

 部屋の大きさ的に最大2名までしか案内できないということが功を奏して、スムーズにご案内ができていると思う。


 4人部屋以上の部屋も造ろうかどうか話していたけど、今のところは2人部屋までで十分な気がする。

 もう一棟建てるときが来たら、その時は団体向けの部屋も造るとして、今はこのビジホスタイルが最高に良い。


 4人部屋はないけど、4人家族のお客さんもちゃんと来ているからね。

 2名、2名で分かれさせているのは申し訳ないけど、ちゃんと隣の部屋を用意する配慮はしてある。


 基本的には自然で遊び、食事や大浴場で満喫してもらって、王都に帰ってもらうプラン。

 果樹園の方も、スキルの畑のお陰で何とか間に合わせることができており、ブルーベリー狩りの案内も各部屋に置いてある。


 家族で来てくれた方が早速申し込んでくれたみたいだし、初日から果樹園の方も忙しくなるはずだ。

 それから畑で採れた新鮮な野菜や、ジョルジュさん秘伝の黄金酒。


 他にはロッゾさんの作った武器や変わったアイテムや、ルーアさんのパーティがダンジョンで入手したアイテムも販売してある。

 更にフロント横には小さくはあるけど、休憩室のようなものを作った。


 本当は書斎室にして、漫画をずらりと置く予定の場所だったんだけど、今のところは短い巻数で終わる漫画を計50冊ほど置いてあるだけ。

 とても書斎室とは呼べないので、休憩室という名目で軽く休んでもらうための場所にした。


 いずれはずらりと漫画を並べて、貸し出しサービスなんかもやりたりと思っている。

 漫画はNPを必要とする高価なものだし、扱いには注意してもらわないといけないけどね。


 とまぁ、色々と楽しんでもらえる施設は用意したつもりだけど、まだまだ物足らない部分の方が大きい。

 イベント時に宿泊する場所として急ぎで建てたのもあって、観光場所もまだ少ないけど、いずれは収穫体験ができる大農場や、魔物と触れ合える魔物牧場も作りたいと思っている。


 たくさんの宿泊客を迎え入れながら、頭の中でそんな夢物語を描いていると、本日最後の宿泊客を乗せた馬車がやってきた。

 あとでこっそりと食堂を見に行くつもりだけど、この方を案内したら本日の私の業務はひとまず終わり。


 お客さんが出てくるのを待っていると、馬車から出てきたのはまさかのベルベットさんだった。

 流石に考えもしていなかったため、声を出して驚いてしまう。


「えっ? ベルベットさん……?」

「部屋が空いていたから来たの。駄目だったかしら?」

「い、いえ。駄目ってことはないんですが……わざわざお客さんとして来なくとも、ベルベットさんなら泊めてあげますよ?」

「お客さんとして来たかったのよ。お金を払えば、異世界のご飯も食べられるんでしょ? 時間がある時は泊まらせてもらうから」


 非常に嬉しいけど、ベルベットさんには色々と協力をしてもらっているし、お金を取るのは申し訳ない気持ちになってしまう。

 ただ、お客さんとして来てくれている中、お金を拒否するのも気持ちを無下にすることになるからなぁ。


「ベルベットさんなら無料で宿泊してもらっていいんですが、本当にお金を払って宿泊するんですか?」

「当たり前。そのつもりで来ているからね。その代わり、1人のお客さんとして扱ってね」

「分かりました。ベルベットさんとしてではなく、1人のお客さんとして扱わさせて頂きます」


 ベルベットさんに頭を下げてから、宿へと案内することにした。

 フロントにて鍵を受け取る前に、休憩室の存在に気が付いた。


「あれ? 漫画を置いているの!?」

「はい。少し休憩できる場所を作ろうと思って、漫画を置いておくことにしたんです。今のところ部屋への持ち込みは禁止ですので、ここで軽く読んで頂ければと」

「部屋に持っていっちゃ駄目なんだ……! うぅー、読みたいけど目立つよね……。――いや、読む! 見たことない漫画ばっかだし!」


 覚悟を決めたようで、ひとまず鍵を受け取って部屋に荷物を置いてから、休憩室に戻ってきたベルベットさんは漫画を読みだした。

 集中力が凄まじく、周りの目は気にしていない様子。


 そんなベルベットさんを後目に、私は食堂へと行ってみることにした。

 夜ご飯は規定の時間であれば、いつでも食べることができることもあり、既に2組だけではあるけどお客さんの姿がある。


「ねぇねぇ! これ、すんごく美味しいよ!」

「本当に……美味しすぎるな。なんだこの料理」

「果実も美味しかったけど、料理は群を抜いて美味しいわね。休みがオープン日とたまたま合ったから来てみたけど……ここって大当たりじゃない?」

「王都からも遠くないしな。子供たちのためにというより、俺がまた来たい」


 そんな会話をしてくれているのは、果樹園にも足を運んでくれた家族の方たち。

 嬉しい会話に思わずにやけてしまう。


「あなた、本当に美味しいですねぇ。このお食事を食べることができて、生きてきて良かったと思ってしまいましたよ」

「ワシもじゃ。大浴場にも感動したが、食事は幸せの域を超えておる」


 家族の方の奥で食事を取っていた老夫婦も幸せそうにしてくれているし、異世界をコンセプトの宿を建てたのは大正解だったと、オープン初日から思えている。

 これから大変なことも待っているだろうけど、1人でも多くの方を笑顔にできるように頑張ろう。

 私はそう強く心の中で誓ったのだった。



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