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第326話 プレゼント


 大浴場も完璧で、20人ほどが一度に利用できる大きさ。

 この世界の人々は、あまり浴槽に浸かる習慣がないみたいだけど、宿のサービスの一つとなれば、利用する人はきっと多いはず。


「大浴場も完璧ですね。大きさも申し分ないです」

「一つしか造れなかったのは申し訳ねぇな」

「全然大丈夫です。このままお風呂に入りたいところですが……他の施設も見たいので我慢ですね」

「今日の夜にでも入ったらいい。一番風呂は佐藤さんの特権だ」


 一番風呂は憧れてしまう。

 お客さんが最優先だと思っていたけど、ここはありがたく入らせてもらおうかな。


 夜の入浴を楽しみにしつつ、次にやってきたのは食堂。

 別料金がかかってしまうけど、朝と夜ごはんをここで食べられる。


 奥にはキッチンも完備しており、今のところの予定ではノーマンさんのお弟子さんが働いてくれるとのこと。

 まだ確定ではないため、お弟子さんが来られなかった場合はヤコブさんに料理長を務めてもらうつもり。


 ただ、全体的に料理人の数が少なく、宿の宣伝をすると同時に料理人の募集もかけたいと思っている。

 ノーマンさんも知り合いに声をかけてみるとは言ってくれているけど、ノーマンさんには頼りすぎているからね。

 できれば迷惑をかけないように、私の方で見つけたいところ。


「キッチンもしっかりしていますね。大人数の料理も作れそうですし、食堂の利用者が多いことを願いたいです」

「その点は心配ないと思うぜ。飯の美味さは飛び抜けているし、飯目的で泊まる人も多くなるはずだ」

「食事についてはこだわりたいと思っていますが、そうなってくれたら嬉しいです」


 シッドさんの言葉に期待を抱きながら、キッチン周りを見ていった。

 食堂も広さは十分で、大勢の人が利用できる。


 賑わってくれたらこの上ないけど、これだけ準備してもらって利用者が少なかったらと思うと少し怖い。

 シッドさんの先ほどの言葉を何度も心の中で復唱し、自分を元気づけながら……フロントへと戻ってきた。


 ここからは全部屋を見て回る予定であり、流れ作業になるだろうけど、一度は目を通しておきたい。

 ソアラさんから全ての部屋の鍵を受け取って、私は5階の一番端の部屋から見て回ったのだった。



 全ての部屋が101号室と同じ造りではあるものの、手抜きは一切なく素晴らしい部屋。

 宿に問題がないことが分かったため、ここからは営業日まで準備を進めていく。


 ……の前に、シッドさんにお礼をしなくてはならない。

 お礼の品は準備できているため、料理を作ってお酒と一緒に持っていく。


 イベントホールでは、既に打ち上げが行われており、宿の建設に携わってくれた方々がお酒を片手に盛り上がっている。

 この打ち上げの主催はシッドさんであり、一番働いたであろうシッドさんが気を回しているのだから、これだけの方が協力してくれるわけだ。


 シッドさんは自分のポケットマネーから、イベントホールの貸し出し料や料理・お酒代を払うと言ってくれているけど、ここはもちろん私の負担。

 そもそも、このイベントホールを貸すのにお金なんて取るつもりはないけどね。


「シッドさん、大盛り上がりですね」

「おお、佐藤さん。準備してもらって悪いな。ちゃんと金は払うからよ。とりあえず佐藤さんも飲め飲め」


 話しかけるなり、渡されたお酒のジョッキを一気に飲む。


「かぁー。きっついお酒ですね」

「ガッハッハ。佐藤さんもいける口だな」

「ノリが悪いことはしたくないので。それと、お金はいりませんからね。今回は私が払いますので」

「いいや。俺が計画した宴会だから俺が払う。ここは譲れない」

「私も譲れません。それと……お礼の品を用意してあるので、ここで渡させてもらいますね」


 断固として拒否するシッドさんから話を逸らすべく、私はお礼の品について話を持ち出した。

 一瞬にして目の色を変えたシッドさん。

 その変わり様だけで、楽しみにしていてくれていたことがよく分かる。


「こちらがお礼の品です」

「ありがてぇが……なんじゃこれ?」


 私がプレゼントしたのは、ゴルフセットとゴルフボール。

 他の趣味を見つけてもらうべく、前々からプレゼントしようと思っていたものだ。


「ゴルフという球技のセットになります。今度、ロッゾさんと一緒にやりましょう」

「ああ。説明されてもよく分からねぇが、大事に使わせてもらう」


 嬉しそうにしてくれてはいるけど、反応としてはイマイチ。

 ゴルフは実際にやってみないと面白さが分からないし、クラブをもらってもピンとは来ていない様子。


 まぁ……正直、この反応は予想していた。

 ゴルフクラブも本命のプレゼントの一つだけど、もう一つプレゼントを用意してある。


「それと、もう1つプレゼントがありまして……DVD10本セットです」

「2つ目……だと? それもDVD……。もしかしてエッチなやつか?」

「はい。エッチなやつを10本です」

「くっは! 2つ目なんか受け取れないと言いたいのに、体が受け取っちまう!」


 顔は天を仰ぐような感じになっているけど、両手で優しく抱くようにDVDを受け取ってくれた。

 その後も大事そうに抱きしめていて、どれだけ喜んでくれているのかが聞かずとも分かる。


 エッチなDVDだけじゃひねりがないかなと思っていたけど、やっぱりエッチなDVDが一番喜んでもらえる。

 本当はVRのものをプレゼントしようと思っていたんだけど、ネット環境が必須っぽかったので断念。


 ネット環境がなくとも、パソコンがあれば何とかできそうでもあったが……そもそもパソコンがないからね。

 DVDだけでここまで喜んでくれるシッドさんやロッゾさんに、いつかVRゴーグルを体験してもらいたい。

 そんな密かな目標を掲げつつ、エッチなDVDをもらってテンションが最高潮になったシッドさんと一緒に、一晩中お酒を飲み交わしたのだった。



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