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第322話 職人たち


 ジレットの街から王都へ戻り、王都で蓮さんたちとすぐに別れて、私は別荘に帰ってきた。

 みんなの出迎えを期待していたんだけど、まだ未踏のダンジョンから戻ってきておらず、私が一番最初に辿り着いたようだ。


 すぐに話したいことがあっただけに、少しモヤモヤした気持ちになったけど、数日のうちには戻ってくるはず。

 ひとまずは、私たちをサレヴォ廃聖堂まで運んでくれたアッシュにご褒美をあげる。

 まぁご褒美といっても、帰り際に蓮さんたちが渡してくれた魔力塊だけどね。


 私からのご褒美を用意できていないだけに、少し申し訳ない気持ちになる。

 けど、そんな私のモヤモヤなんて気にする様子もなく、アッシュは夢中になって魔力塊を食べ始めた。


 従魔の全員が美味しそうに食べているけど、魔力塊って本当に美味しいんだろうか?

 ちょっとだけ食べたくなるけど、シーラさん曰く人間が食べてはいけないものらしい。


 魔力塊を錬金によって人間でも摂取できるようにしたのが魔力ポーションであり、私も一口だけ飲んだことがあるけど、美味しいとはとても言えない代物だった。

 まぁ、魔力ポーションは魔力塊の味が分からなくなるくらい色々なものを大量に混ぜているみたいだし、魔力塊とは全くの別物なんだろうけど。


 だからこそ、魔力塊を味見してみたいんだが……やっぱり止めておいた方がいいよなぁ。

 犬にネギ類やチョコレートを与えるのと同じで、下手をしたら命に関わる。


 私は羨望の眼差しでアッシュが魔力塊を平らげるのを見届けてから、アッシュさんの家へとやってきた。

 理由は特になく、ただ暇だったから。


 最初はシッドさんのところに行ったんだけど、今日も宿の建設をしていたため、声もかけずに戻ってきた。

 獣人族という人手も増え、さらに急ピッチで建ててくれていることもあって、宿は完成間近といった様子。


 建設の邪魔をしないためにも、私は顔を出さない方がいい。

 そんな理由からロッゾさんのところにやってきたんだけど、予想外にもロッゾさんも慌ただしそうにしていた。


「お? 佐藤さんか! 旅行から戻ってきたのか!」

「はい。先ほど戻ってきたんですけど……ロッゾさんは随分大変そうですね」


 家から出てきたロッゾさんは汗だくで、立派な髭から汗が滴り落ちるほど。

 作業中と知っていたら立ち寄らなかったんだけど、呼び出しておいて帰るのは忍びない。


「おう! 頼まれていた電撃を貯める装置を作っていてな! ちょっと中に入ってくれ!」


 私は案内されるまま、ロッゾさんの家に上がらせてもらうことにした。

 家の奥にある鍛冶場には知らない人が3人おり、私を見るなりペコリと頭を下げてきた。


「これが例の装置だ! ちょっと試してみたいんだが大丈夫か?」

「装置の前に、この方たちの紹介をしてほしいんですが……」

「別に紹介するほどの奴らじゃねぇんだけどな! このヒョロヒョロの奴がヨアン。こっちのちっちゃいのがインゴ。そんで、顎の長いのがヤンだ!」

「ロッゾさん、紹介が雑すぎますぞ! 私は王都で魔道具を作っているヨアンです。インゴは私と同じ店で働いておりまして、ヤンはロッゾさんの店の跡地で鍛冶師をしておりますぞ!」

「私はこの村の……長?のようなものをやっている佐藤です。よろしくお願いします」


 私は初めて出会った3人と挨拶を交わしてから、改めて装置の方を見させてもらう。

 かなり大きいけど、見た目は発電機に似ていた。

 渡した充電器やソーラー発電機を参考にしたんだろうけど、異世界の技術でここまで再現できているのは凄まじい。


「佐藤さん、どうだ? ちゃんと機能するか?」

「実際に試してみないと分かりませんが、機能しそうな感じはします。この短期間で作り上げてしまうなんて本当に凄いですね」

「まぁ俺だけの力じゃねぇからな! 試さないと分からないなら、早速試しに行こうぜ! 例のハリネズミは佐藤さんの家にいるんだろ?」

「私もすぐに試したいところなんですが、今はヘレナがいないので試せないんですよね」


 私のその発言に首を傾げたロッゾさんたち。

 ロッゾさんはともかく、ヨアンさんたちはヘレナを知らないから、何が何だか分からないだろう。


「ヘレナ? ヘレナと何が関係あるんだ?」

「エレックとトリックは、ヘレナにしか電撃を放たないんです。無理やり怖がらせれば放ってくれるかもしれませんが、絶対にやりたくありませんので」

「なるほど。みんなで出かけているから、今は試せないってことか! 納得はできたとはいえ、ヘレナにしか電撃を出さないって嫌われすぎだろ!」

「その逆なんですよ。嬉しくて電撃を出しちゃうみたいなんです」

「なんじゃそりゃ! 装置を試すとか関係なく、そのハリネズミたちが気になってきたな! 今から様子を見に行ってもいいか?」

「もちろんです。ヨアンさんたちにもお礼として、私の料理を振る舞いたいと思っていたので、別荘でご飯にしましょうか」

「うっしゃー! それは嬉しすぎるぜ! お前ら良かったな!」


 ロッゾさんは大きくガッツポーズをしたんだけど、ヨアンさんたちはキョトンとした表情をしている。

 次第に、おっさんの手料理で喜んでいるロッゾさんを奇妙な目で見始めていたけど、まぁ分かってもらうには食べてもらうのが早いと思う。



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