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第318話 サレヴォ廃神殿


 神殿の扉は、もはや扉として機能していないほど壊れており、そのまま中に入ることができそうだった。

 鍵が開いていなかったらどうしようという心配はあったものの、心のどこかで鍵が閉まっていたらいいなと思っていたため、少しだけ落胆してしまう。


「すぐに中に入れそうだな! 昼なのに真っ暗だぜ!」

「私が魔法で照らします。中に魔物がいるなら、光に向かって来る可能性がありますので、将司は防げるようにしておいてください」

「任せとけ! ガッチリ防ぐからよ!」


 しっかりと確認を取ってから、唯さんは廃神殿の中を照らした。

 最初の注意もあり、私も身構えていたんだけど、魔物が襲ってくる様子はない。

 それどころか、建物内から何の音もしないため、少なくとも入口付近には生物がいないのかもしれない。


「何の音もなしか。何かいるなら、襲ってこなくても動くよな?」

「何の気配もないし、大丈夫だと思う! でも、念のために私から入るね!」


 美香さんは軽くそう言うと、何の抵抗もなく廃神殿の中に入っていった。

 そして、安全を確認できたようで、中に招き入れる声が聞こえてきた。


 誘われるがまま私も中に入ったのだが……想像以上の光景に息を呑む。

 外壁の装飾も細かくて驚いたが、中にあるもの全てが超一級の職人によって造られたであろう壁やガラスで覆われている。


 それでいて、椅子や机などの家具はほとんどなく、残されているのは壊れた木の椅子のみ。

 すっからかんの内装が、こだわり抜かれた外観とのギャップを生み出し、凄まじく不気味に思える。


「なーんにもないね! 木の椅子しか置かれてなかったのかな?」

「恐らくですが、盗まれてしまったんじゃないでしょうか? 外観の凄まじさから考えると、きっと高価なものが置かれていたはずですから」

「なるほど。盗賊や山賊もいるって話だったもんな。これじゃ誰も寄り付かないわけだ」


 奇妙さや不気味さはあれど、何もなく風化した建物からは、かつてあった神秘的な要素は一切感じられない。

 現代の日本であれば心霊スポットとして有名になっていたかもしれないが、この世界は本物の魔物が出現するため、心霊なんて類いは存在しない。


 この先も何もない部屋が続くであろうことは目に見えているけど、ここで引き返すという選択肢はない。

 唯さんと将司さんが先頭を進み、私が真ん中。


 後ろを美香さんと蓮さんが守るという、最強に安全な布陣で廃神殿の奥へと進んでいく。

 入口からすぐ先には、神殿らしく神に祈りを捧げるであろう礼拝堂があった。


 ただ、礼拝堂ももぬけの殻であり、飾られていたであろう神を模した像すら盗まれていることが、何も置かれていない仰々しい台座から分かる。

 一種の観光スポットとしては面白いが、警戒していた危険な魔物もいない。


 かつて何があった部屋なのかを考察しながら、ゆっくりと廃神殿を見て回った。

 凄く大きな建物ではあるが、造りは意外と大雑把で、計6部屋しかなかったため探索はすぐに終了。


 冒険気分で来ていた蓮さんたちは不満そうではあったものの、私は貴重な体験を安全に行えたことで凄く満足だった。

 このまま帰る流れになっていたんだけど、物足りなさそうだった美香さんは各部屋を隅々まで探索しており、そして……とうとう変な場所を見つけてしまった。


「ねね! 来て来て! 講壇の下から風が抜けてる気がして見てみたら、隠し扉があるっぽい!」

「本当だ。わずかだが風が抜けている。美香、よく分かったな」

「勘が働いた! 多分、どっかにスイッチみたいなのがあると思うんだけど……みんなで探そう!」

「見つからなかったら、ぶっ壊して入ろうぜ! 廃墟だし、壊しても怒られないだろ!」

「将司、それは駄目です。無法地帯になっているからといって、意図的に壊す行為は見過ごせません」

「唯は本当に固いな!」


 私も唯さんと同意見だった。

 お邪魔させてもらっている身だし、そもそも私はあまり奥に進みたいとは思えない。


 とはいえ、このまま隠し扉のスイッチが見つからなければ意見が対立するだろうし……一生懸命探す。

 適当にペタペタと壁を触っていると、一か所だけ建て付けの悪い部分を見つけた。


 私はその部分を強めに押すと、カチカチという機械音の後に、ゴゴゴといういかにもな音を響かせながら、床の扉がゆっくりと開いた。


「おおー! 佐藤さん、よく見つけたな!」

「佐藤、ナイス! 扉の奥は……地下に繋がってるみたい!」

「どうしますか? 行きますか?」

「もちろん! 行かなきゃ気になって夜も眠れなくなる!」


 奥に進むことで満場一致となり、美香さんを先頭に地下へと進むことになった。

 怖さが勝ってはいるが、奥が気にならないといったら嘘になる。

 私は真ん中で守られる形で、階段を下りていくことにしたのだった。



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