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第308話 いなり寿司


 レティシアさんはしばらくここにいるとのことなので、引き受ける予定の元奴隷の方々に行ってもらう仕事を体験してもらおうと思っている。

 と、その前に、まずは食事でのおもてなしから。


 エレクトリックマウスを譲ってもらったからには、こちらも最大限のおもてなしをしないといけない。

 まぁ、レティシアさんではなくクリスさんからのプレゼントなんだけど、クリスさんの使いということだからね。


「レティシアさん、お腹は空いていますか?」

「はいな。朝からなんも食べてへんかったさかい、お腹がぐぅー鳴ってます」

「それなら今からお作りしますが、何か食べたいものはありますか?」

「いえいえ、特にこれ食べたいってもんはあらしまへん。あるもん適当に出してもろたらええです」

「なるほど……。それでは適当に用意させていただきます」


 なんでもいいという返答はかなり困る。

 親しい関係ならまだしも、好き嫌いも分からないからなぁ。


 ただ、色々と考えたところで分からないし、パッと思いついたものを作ろうと思う。

 レティシアさんは狐の獣人。


 キツネといえば、いなり寿司だろうか?

 まぁ実際のキツネの好物はネズミなんかの小動物で、その好物のネズミに見立てたのがいなり寿司という説がある。


 キツネという部分で考えるならネズミが正解なんだろうけど、ネズミ料理なんか知らないし出せないからね。

 私はチラッとエレクトリックマウスたちを見てから、この2匹に果物を小さく切って与える。


 もしゃもしゃと果物を食べているのを見て癒されてから……私はいなり寿司作りを始めることにした。

 今回作るのは、少し甘めの味付けのいなり寿司。


 小さい頃は助六寿司の何が美味しいのか分からなかったが、30歳を超えたあたりから好きな食べ物になった。

 甘い味付けのいなり寿司の上にガリを乗せて食べるのが、まぁ美味しい。


 私もいなり寿司の口になったところで、タブレットを操作して材料を買い揃える。

 油揚げと白ごまとガリだけで、後は米と調味料があれば作れる優れもの。


 まずはお米を炊きつつ、油揚げの下処理を行う。

 だし、醤油、砂糖を混ぜたものを火にかけ、そこに水気を切った油揚げを浸す。


 煮込んでタレを吸った油揚げを冷ませば、いなり寿司用の油揚げの完成。

 そのタイミングでご飯が炊けたため、酢飯にしてから冷ました油揚げに詰めていく。


 一口でいけるサイズのいなり寿司をどんどん作り、購入したガリを添えれば完成。

 私好みの甘めの味付けが、レティシアさんにも気に入ってもらえたら嬉しいな。


「お待たせしました。いなり寿司になります」

「イナリズシ? 聞いたことあらへん食べ物やなぁ。見た目も……なんやちょっと変わってはるなぁ」

「私は異世界からやってきてまして、これは異世界の料理なんです。お口に合うか分かりませんが、ぜひ食べてください」

「佐藤さん、異世界の人やったんやね。異世界の料理いただくん初めてやし、めっちゃ楽しみやわ。ほな、早速いただきます」


 とは言ったものの、食べ方が分からないようで首を傾げている。

 先に反応を見たかったけど、まずは私が食べ方を教えてあげた方がよさそうだ。


 最初はガリを乗せずに、いなり寿司単品で頂く。

 ――我ながら完璧ないなり寿司!


 甘さも抜群で、単品だと少し甘いけど、ガリを乗せたらさらに味が引き立つはず。

 早くガリを乗せたいところだけど、まずはノーマルのいなり寿司をレティシアさんが食べるのを待つ。


「まずは普通に食べるんやね。――おいしい! なんなんどすか? この美味しい食べ物は!」


 レティシアさんは笑顔でそう叫ぶと、勢いよくいなり寿司を食べ始めた。

 異世界の方にはほぼ確実に刺さっているため、特段心配はしていなかったが、レティシアさんも気に入ってくれたようで一安心。

 ただ、この勢いだとガリを使わずに食べきってしまいそうなため、私はレティシアさんの手を無理やり止める。


「ちょっと待ってください。他にも食べ方がありまして、このピンク色のものを上に乗せて食べるとサッパリした味わいになるんですよ」

「ほな、試してみますな。うーん……確かにさっぱりするけど、うちはなしの方が……いや、もう一個だけ食べてみよ」


 ガリは少し癖があるためか、1個を食べた時は怪訝そうな表情をしていたが、2個目からは慣れたのか味わって食べ、3個目からは美味しそうに頷いている。

 ガリなしもガリありも楽しんでもらえているようで良かった。


「最初は雑味に感じたけど、これ乗せて食べるんも美味しいわ。いうか、この料理、ポテンシャル高すぎひん?」

「気に入っていただけたなら良かったです。料理は比較的美味しいものが多いと思いますので、滞在期間中にご飯で困ることはないはずですよ」

「この料理さえあったら、ここではご飯の心配いらんの分かったわ。滞在が一気に楽しみになって、ほんまによかったわぁ」


 結構な量のいなり寿司を作ったが、レティシアさんはペロリと完食してみせた。

 おもてなしは大成功だし、きっといい報告をしてくれるだろう。



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