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第29話 迎え


 辺りが橙色に染まり始めたタイミングで、本日の作業が全て終わった。

 シーラさんが途中までいなかったため、今日は中途半端で終わってしまうと思っていただけに、ちゃんと終えることができて一安心。


「ふぅー、疲れた! 見た目よりも意外と重労働だね!」

「ダンジョン攻略よりかは流石に楽だとは思いますが、農作業も中々大変ですよ。美香さんにも、育てた野菜が実る感動を味わってほしいですね」

「味わいたい! やっぱりしばらくここに――」


 そこまで言いかけた美香さんだったが、とある方向を見て急に固まってしまった。

 私もすぐに美香さんが見ている方に視線を向けると、こちらに歩いてやってきていたのは同じ勇者である蓮さん、将司さん、唯さんの三人。


「美香、本当にここに来ていたんだ」

「なんで何も言わずに行っちゃったんだよ! 本気で心配していたんだぞ!」

「将司、声を荒げるのは止めてあげてください。美香にも事情があったことは聞いていたでしょう?」


 熱くなっている将司さんを、唯さんが宥めてくれた。

 美香さんはというと、俯いたままで何も答えない。

 ここは気持ちを整理させてあげる時間を作るため、私が話をしよう。


「蓮さん、将司さん、唯さん。お久しぶりです。お元気そうで良かったです」

「え、えーっと、おじさんもお元気そうで良かった。それと、美香の面倒を見てくれてありがとう」

「いえいえ、気になさらないでください。こちらに来て大変では――」

「おじさんじゃなくて佐藤ね。……佐藤もありがとう。大丈夫。約束通り、話をしてくるよ」


 なるべく長い時間、三人と話をするつもりでいたのだが、そんな私の話を遮ったのは美香さんだった。


「もう大丈夫なのですか?」

「うん。使命とか戦いとかにうんざりして逃げ出しただけで、三人のことは大好きなままだから」

「それなら良かったです。別荘のリビングでゆっくり話してきてください。私とシーラさんは外で待っていますので」

「えーっと、佐藤さん。ありがとう。遠慮なく使わせてもらう」

「ええ、どうぞ。ゆっくり、じっくり話し合ってください」


 別荘の中に入っていく四人を見送り、私とシーラさんはのんびり外で待つことにした。

 話が気にならないといえば嘘になるが、四人の大事な話し合いを盗み聞きするほど野暮ではない。


「佐藤さん、待っている間は何をしましょうか。農作業もちょうど終わってしまいましたからね」

「スレッドがそろそろ動き出しますので、スレッドに何か与えてみようかなと。アンデッド系の魔物なので今日まで何も食べていなかったのですが、食べるという行為が行えるようであれば、ライム同様に進化することもできるんじゃないかなと思いまして」

「それは……確かに面白そうですね。早速、スレッドが眠っている小屋に行ってみましょう」


 私の提案に乗ってくれたシーラさんと共に、ほぼスレッドの家となっている物置小屋へと向かった。

 私達が小屋に着いたタイミングで、どうやらスレッドも目を覚ました様子。

 スレッドは片膝をついて、忠誠を誓うように頭を下げてくれた。


「そんなに堅苦しくしなくて大丈夫ですので、頭を上げてください」


 毎回、頭は下げなくて良いと伝えているのだが、スレッドは忠誠心が高いようで毎回頭を下げてくる。

 ライムのように気楽に接してくれていいんだけどな。


「スレッドに一つ尋ねたいことがあるのですが、スレッドはなにか物を食べることはできますか?」


 私がそう尋ねると、スレッドは首を傾げて考え込んだ。

 ボロボロとはいえ鎧を着ているため、こういう仕草を見ると本当に人間にしか見えない。


「佐藤さん、先ほど収穫したクラックドラフがあります。スレッドに渡してみてもいいですか?」

「もちろんです。渡してあげてください」


 シーラさんからクラックドラフを手渡されたスレッドは、興味深そうに眺めた後そのまま口元に持っていった。

 そして、先ほど収穫したクラックドラフをぺろりと平らげてしまった。


 ……アンデッド系の魔物でも、食べ物を食べることができるのか。

 原型が残っているスレッドはまだしも、流石にがいこつ剣士のような骨だけの体では難しそうな感じはするけど……この様子を見る限りでは、体が骨だけの魔物も食べ物を食べることができるのかもしれない。


「佐藤さん、食べることができたようですね。普通の野菜ではなく、ライムと同じように魔力塊を与えたら……スレッドも進化するのかもしれません」

「もしそうなのだとしたら、魔力塊の需要が一気に高まりますね。ちなみにですが、魔力塊ってどうやって手に入れることができるのですか?」


 先ほどチラッとタブレットで確認したのだが、魔力塊は商品欄には載っていなかった。

 つまりNPでは購入できないもののため、自力で入手しなくてはならないということ。


「魔力塊は魔物を倒すと手に入れることができるものです。ただ、以前裏山で倒したファングディアのような弱い魔物からは入手できる確率は低く、逆に強い魔物からなら高確率で入手できるアイテムとなっています」

「ということは、王都で購入したり、今回のように他の誰かから譲り受けないと手に入らないということですか……」


 自力で手に入れることができないと知って、少し落胆してしまう。

 頼めるとしたら、この国の王女様であるベルベットさんか、先ほど魔力塊をライムに与えてくれた美香さんぐらい。


 というか……交友がなさすぎるせいで、選択肢が限られすぎている。

 もう少し人と交流した方がいいとは思ってはいるが、ここは王都から絶妙に離れているため難しいんだよなぁ。


「一番現実的なのは、育てた野菜を売ってお金を手に入れ、そのお金で魔力塊を購入することですかね。最悪、ベルベット様にお願いするという手もありますが……」

「うーん、それは避けたいですね。理由を言葉に出来なくて申し訳ありませんが」

「ふふ。私も佐藤さんと同じく、避けた方がいいと思っていましたので謝らなくて大丈夫です。ただ、そうなると……やはり農業を頑張るしかなさそうですね」


 シーラさんと話し合った結果、農業を頑張るという結論に行きついた。

 何を行うにしても、一番重要なのは農業。

 

 魔力塊に関してはスキルで生み出した畑じゃなくても、大丈夫というのは大きい。

 人手不足で手が回るかは分からないけど。


「ですね。地道に農業を頑張りましょうか」

「はい。頑張りましょう」



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