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第297話 怪しいお店


 辿り着いたのは、黒頭巾の店主さんのお店と似た小さな廃墟。

 期待感しかなかっただけに、外観を見て少しがっかりしてしまう。


 中に入ってさらにがっかりしたのだけど、何の特色もない普通の道具屋。

 値段は若干安いみたいだけど、売られている商品の品揃えは悪いくらい。


「このお店がおすすめのお店なんですか?」

「そうだが……慌てんなって!」


 バーネットさんはそう言うと、黒頭巾の店主さんと一緒にカウンターに立っている店員さんのもとへ話しに行った。

 少し会話をした後、何やら許可が出たようで、バーネットさんが私たちを呼び出した。


「ベルベットさん、シーラさん。ここに何があるんですか?」

「私も全く分からない。東側には初めて来たし」

「すみませんが、私も分かりません。ただ、少し楽しいですね」


 不安のあまり2人に聞いてみたけど、私と同じ状況のため何も分からないみたい。

 より不安になってくるが、バーネットさんは悪い人じゃないと思うし、大丈夫。


 不安のなかに、シーラさんと同じくワクワク感を覚えながらバーネットさんの下へ向かうと、急に商品棚が動き出した。

 映画やアニメなんかでよく見る仕掛け扉だったみたいで、ずれた商品棚の下に隠し階段が現れた。


「す、すごい! なんですか? この仕掛けは?」

「へっへ、驚いたろ! 上の店はフェイクで、下にある店が本命なんだわ!」

「俺の口利きで通しているからな。くれぐれも他言はしないでくれ」

「分かっています」


 黒頭巾の店主さんから念を押された後、隠し階段を下りていく。

 下の階層に広がっていたのは、いかにもファンタジーという感じの幻想的なお店。


 手前のフロアには魔法関連のものや希少品、アーティファクトの類が置かれていて、奥のフロアにはいろいろな生物が展示されている。

 小さなドラゴンのようなものまでおり、上の階層との違いに驚きが隠せない。


「こんなところがあったの? なんだか……他のお店と比べてもすごい」

「本当ですね。隠し階段から始まって、この内装。がっかりしていたこともあって、テンションが上がってしまいます」

「売り物も見たことないものばかりです。奥の生き物が展示されているところは特に気になりますね」


 私だけでなく、ベルベットさんやシーラさんもテンションが上がっているように見える。

 じっくりと見たい気持ちに駆られるが、奥から姿を現したのは葉巻のようなものを吸っている黒いドレスの女性。


 年齢は不詳な感じで、美貌とスタイルの良さから若々しい。

 色気もすごいことから、本当に年齢が読めない。


「あら、バーネットもついてきたのね。私の顔を見たくないでしょうから、来ないと思っていたわ」

「今回は仕事でついてきただけだ! 俺の客人でもあるから手を出したら許さねぇからな!」

「相変わらず馬鹿ね。何もないのに手を出すわけないでしょ」


 バーネットさんと軽口を叩いている色気のすごい女性。

 こちらに視線を向けると、ゆっくりと歩いてきた。


「こんにちは。私はここのお店のオーナーのクリスティーナよ。気軽にクリスと呼んでちょうだい」

「クリスさんですね。私は佐藤と言います。そして、こちらの2人がベルベットさんとシーラさんです」

「ベルベット? なるほど。バーネットが護衛している理由が分かったわ。よろしくお願いするわね」


 手を差し伸べてきたため、私はすぐに握手をした。

 体がビクッと反応してしまうほど、手は氷のように冷たかった。


「それで、何を探しているの?」

「探しているものは特にないんですが、面白いものがあれば購入したいと思っています」

「あれ? そういえばオーラバードが欲しいって言ってなかったか? クリス、オーラバードって売ってるよな?」

「ええ、そっちの籠に入っているわよ」


 先ほど泣く泣く諦めたオーラバード。

 クリスさんの案内についていくと、確かに鳥かごに入ったオーラバードがいた。


 ただ、先ほどのオーラバードとは金額の桁が違う。

 希少種だったりするのだろうか?


「さっき通りで見たオーラバードは10分の1くらいの金額だったんですが、このオーラバードは希少種ですか?」

「違うわ。通りで売られているのは密猟で捕られた個体。こっちは正当なルートで取引されている繁殖個体よ」

「じゃあ、やっぱり通りで売られていた個体は違法なものだったんですか」

「ふふ、あの通りで売られていて違法じゃないものはないわよ。ここで売られている額が相場に近いの。まぁ、これでも相場よりは安くしているのよ?」


 高いと思ってしまったけど、見た目や能力を考えたら妥当な金額かぁ。

 でも、白金貨10枚はお高い。


「私、1羽購入します」


 私が金額に怖気づいている中、そう宣言したのはシーラさん。

 さっきは泣く泣く諦めたからこその、この判断の早さなんだと思う。


「あら、思い切りがいいわね。1羽だけでいいの? 2羽買えば繁殖する可能性があるわよ?」

「な、なら、もう1羽は私が買います」


 シーラさんがもう1羽を勧められたところで、今度は私が宣言した。

 もう少し色々と見てから決めたかった気持ちはあるけど、オーラバードを購入したかったのは私も同じ。

 今後を考えたら、白金貨10枚でも安くはない……はず!



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