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第295話 東地区


 この目で見たことで、色々と考えさせられたなぁ。

 巡り巡って良い結果を招いているんだろうけど、実際に治安の悪化にもつながっているのだとしたら、良いこととは絶対に言えない。

 難しすぎる話だし、私は干渉しないことが正解なんだと思う。


「佐藤さんは何か購入するんですか?」

「いえ。このお店はセーフといえど、死んだ方の装備品と聞いたら、あまり使う気分にはなれません」

「金があるなら新品のものを買うに越したことはない。俺の店は安さが売りだからな」


 気分的な問題であり、店主の方には申し訳ないけど購買意欲は湧かない。

 私たちは何も購入することなく、他のお店へと移動することにした。


 元々このお店にやってきたのは、店主の方にパイプ役として動いてもらうつもりだったらしく、他のみんなは何も購入しないのが普通といった感じだけど、私は少しだけ申し訳なさを感じてしまう。

 少しでもいいと思ったものがあれば、すぐに購入するつもりだったんだけど……全てが遺留品だったため、何も買えなかった。


「何か報酬とかお金をお渡しした方がいいんでしょうか?」

「俺にか? 別にいらない。紹介するだけだし、バーネットに小さくとも貸しを作れただけで十分だ」

「貸しを作った気はねぇけどな! お前の好意で紹介してくれてるんだろ?」

「……そう受け取ってもらっても構わない」

「佐藤は何も気にしなくて大丈夫。どうせ、無償で働かせていることに申し訳なくなったんでしょ?」


 ベルベットさんに私の気持ちを見透かされてしまった。

 過去の経験から、タダ働きは可哀想だと思ってしまうけど、店主さんも納得しているようだしいいんだろう。


 自分をそう納得させながら東通りを歩いていると、人の多い通りが見えてきた。

 昨日訪れた市場と同じような感じで、露店方式で様々なお店が出されている通り。


 ただ、人はいるのに活気は一切ない。

 売られている商品も見るからに怪しいし、まさに裏の市場という感じ。


「シールドレークを購入した、昨日の市場とは全く違いますね。活気が一切ありません」

「この市場に入れるのは紹介のある人間だけだからな。外から人が来ることはないし、呼び込む必要がないからこんな感じになってる」

「紹介なしでは入れないとのことだけど、この市場には入れるの?」

「そのためにこいつを連れてきた! 大丈夫なんだよな?」

「ああ。これでも俺は顔が広いからな。話を通してくる」


 黒頭巾を被った店主さんはそう言うと、通りの前にいる門番のような人のところへと向かっていった。

 会話を始めてから数分ほどで戻ってくると、私たちに雑な作りの身分証を手渡してきた。


「話を通してきた。絡まれた時はその身分証を見せろ、だと。それじゃ俺は次の場所のアポ取りに行ってくる」

「ありがとな! 次もよろしく頼むぜ!」


 通りには入らず、すぐにどこかへ行ってしまった店主さん。

 次のアポを取りに行ってくれたのは嬉しいけど、詳しい人がいない状態で中に入るのはちょっと怖いな。


「この雑な身分証だけで大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫、大丈夫! ちゃんと許可を取っているわけだし、これで向こうが変な対応を取ってきたら正当防衛だからな!」

「そういうこと。あくまでも筋を通したことが大事なだけだからね。それにバーネットがいれば、向こうから何かしてくるってことはないはず」

「バーネットさんはすごい方なんですね」


 怪しい人しかいない通りにも臆することなく、堂々と歩き始めたバーネットさん。

 冒険者ギルドでも視線を避けられていたが、ここでも同じように誰も視線を向けて来ようとすらしてこない。


 冒険者ギルドにいたから冒険者であることは分かるけど……一体どんな方なんだろうか。

 どんどんと興味が湧いてくるが、今はバーネットさんについてよりも、この通りの商品を見ることが最優先。

 ディープすぎる場所を安全に見て回る機会なんて、そうそうないだろうし、しっかりと見ておきたい。


「佐藤さん、あそこのお店……少し気になります。寄ってもいいでしょうか?」

「もちろんです。私も気になっていたので、行ってみましょう」


 提案してきたのはシーラさんで、通りを入ってすぐにある露店。

 露店には鳥かごのようなものがたくさん置かれており、その鳥かごの中には、いろいろな色に発光している生き物が入っている。


「このカゴに入っているのは何ですか?」

「オーラバードという動物ですね」

「動物? 魔物ではないんですか?」

「線引きが曖昧で難しいんですが、動物ということになっています。保護対象にもなっていますので、捕まえることができない鳥ですね」


 保護対象になっているということは、絶滅危惧種みたいな感じなのだろうか。

 確かに綺麗な色だし、遠目からだと大きなホタルのようにしか見えなかったが、近づいて見てみると、見た目もインコのようで可愛らしい。


 これはペットとして需要があるのも分かるし、ペット用に乱獲されて数を減らしたという背景まで理解できる。

 ここで売られているということは、密猟された個体の可能性が高い。

 何とも言えない気持ちになりながらも、私はオーラバードを眺めたのだった。



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