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第292話 画廊


 ご飯を食べた後は、ベルベットさんの案内でとある建物へとやってきた。

 パッと見ではお店っぽくはなく、民家のような感じの外観。


「普通のお家みたいですね。ここは何のお店なんですか?」

「中に入ったら分かる。見たらきっと驚くと……いや、佐藤は別に驚かないかも」


 すごい場所なのであれば私も驚くと思うんだけど、ベルベットさんは私をなんだと思っているんだろう。

 まぁ、お店については見てからのお楽しみということで、私はベルベットさんの後を追うように、民家のような建物に入った。


 中に入った瞬間、目に飛び込んできたのは大量の絵画。

 見渡す限り絵画が飾られており、私はその絵画の数に圧倒されつつも、どんどんと先へと進んでいくベルベットさんの後を追って、建物の奥へと進んでいく。


「すごい量の絵画ですね。ベルベット様は本だけでなく、絵もお好きだったんですか?」

「うーん……。絵を好きになったのは、佐藤から漫画をもらってからなの。だから、歴も浅いし、好きと言っていいのかも迷うくらい」

「漫画から興味を持った感じなんですね。ここに飾られている絵も異国のものなんですか?」

「ここにあるのは異国のものだけじゃないわ。グレイラン王国にいる画家の絵もあるし、世界各国から集められた絵が売られている感じね」


 なるほど。それでこの数の絵画が飾られているのか。

 一枚一枚のクオリティは素晴らしいし、娯楽の少ないこの世界にとっては貴重な娯楽の一つなはず。


 ただ、この世界は地球に比べても非常に危険な世界。

 前にも話してもらった通り、娯楽に時間をかける余裕がないことも影響してか、絵のクオリティ自体はそこまで高くないように思えてしまう。


 もちろん、私のような素人と比べたらとんでもなく上手いんだけどね。

 私よりは上手いけど、ベルベットさんやローゼさんの絵の方が上手いと思うクオリティのものが多数あるのは気になる。


「……失礼かもしれないですが、大半の絵よりもベルベットさんの描いた絵の方が上手くないですか?」

「その発言は本当に失礼だから。私はすごすぎるくらいの手本となるものがあるから描けてるだけ。というか、シーラがいるんだからその話は禁止!」


 これ以上の話は禁止と言わんばかりに、怖い顔で睨まれてしまった。

 もう少しお話を聞きたかったけど、禁止されてしまったら仕方がない。


 飾られている絵に意識を戻し、想像以上にお客さんが多い中、私たちはすごいスピードでお店の奥へと進んでいく。

 そんなお店の奥にいたのは、シルクハットがトレードマークの、小太りでちょび髭の優しそうなおじさん。


「おやおや、ベルベットお嬢様ではないですか。ようこそお越しなさいました」

「エーベルハルト、久しぶりね。私が出した手紙は読んでくれたかしら?」

「もちろんお読みいたしました。こちらに頼まれていた品のご用意をしております」


 エーベルハルトと呼ばれたちょび髭のおじさんは、私たちをさらに奥へと案内してくれた。

 通されたのは倉庫で、展示できないであろう絵画が大量に保管されているようだ。


「こちらが頼まれていた品でございます。ご確認いただいてもよろしいですか?」

「ええ。見させてもらうわ」


 大きめのスケッチブックであり、チラッと覗かせてもらったけど、スケッチブックには大量の絵が描かれている。

 展示されていた絵もいくつか描かれていたから、ここにある絵画を模写したものなのかもしれない。


「……完璧ね。注文通りの品だわ」

「ありがとうございます。ただ、急遽写したものでして、レプリカとも呼べない代物ですが、よろしいのでしょうか? お時間をいただければ、一枚一枚しっかりと複製させていただきます。もちろん現物の販売も可能ですよ?」

「大丈夫。十分すぎるクオリティだわ。それで、いくらなの?」

「手数料込みで白金貨1枚となります」

「随分と安いわね。なら、これを受け取っておいて」


 ベルベットさんは白金貨2枚をエーベルハルトさんに握らせた。

 シーラさんの強引な値引きもすごかったけど、倍の額を支払うというベルベットさんの懐の広さもすごい。


「倍額をいただいてしまってもいいのですか? 本当に模造品とも呼べない代物ですよ?」

「いいの。ただ、また珍しい絵画を複数手に入れた時は連絡してくれる? 同じ要領で模写したものを買い取らせてもらうから」

「分かりました。私も絵画については積極的に探す予定ですので、見つけ次第お嬢様にご報告いたします」

「ありがとう。私の方でも珍しい絵画の情報を手に入れたら教えるから」


 ベルベットさんはエーベルハルトさんと固い握手を交わしてから、画廊を後にした。

 先ほどのシーラさん以上に笑顔なことからも、よほど欲しかった品だったみたいだ。


「ベルベットさんも、無事に目当てのものを手に入れられて良かったですね。そのスケッチブックは飾るんですか?」

「飾りはしないわ。ちょっと……使うのよ」


 私はそのわずかな間で、ベルベットさんが何に使用するのかを理解した。

 おそらくだけど、漫画の資料にするつもりなんだと思う。


 資料であれば、本物に近いクオリティは必要ないからね。

 何なら、スケッチブックに描かれていた方がありがたいだろうし、ベルベットさんが満面の笑みを浮かべていた理由が分かった。


 詳しい話はまた別で聞くとして、シーラさんもベルベットさんもお目当ての品を購入することができて良かった。

 まだ初日だし、ここからは特に目的もなくぶらつくことになると思う。

 滞在期間中に、私も何かビビッと来るものに出会えたら嬉しいな。



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