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第290話 市場


 翌日。

 昨日は移動の疲れもあって、ぐっすり眠ることができた。


 日本にいた頃は眠ることすら一苦労だったけど、こうして見知らぬ場所でも爆睡できるようになったのは嬉しい。

 とはいえ、眠れるようになったことは今はさておき、今日は交易都市ルダークの観光だ。


 昨日は本当にご飯を食べただけで、ルダークがどんな場所なのかはまだ分かっていないけど、シーラさんとベルベットさんの話によれば、いろいろな物が流通している街らしい。

 他国からやってくる品々の大半は、一度このルダークに運ばれてから王国内に流通していくとのことだ。


 レノヴィーの街で開かれていたフリーマーケットも品数は豊富だったけど、ルダークの比ではないらしい。

 安さでいえばフリーマーケット、数と質でいえばルダーク、という感じのようだ。


 ただ、治安自体はあまり良くないらしく、安さを求めるならルダークの東側に行けば、破格でさまざまな物が手に入るらしい。

 とはいえ、盗品が並ぶ「泥棒市」や、違法な品が売られる「闇市」、さらには危険な薬物やドラッグまで蔓延しているとのことで、決して近づいてはいけないと二人から念を押されている。


 私の周りが平和すぎてつい忘れてしまうけど、この世界にも闇の部分があるということを思い出させる話だ。

 蓮さんたちの話によれば、日本よりも圧倒的に治安が悪いみたいだからね。

 知らない場所に赴くときは、あまり平和ボケせずに気をつけなくてはいけない。


「佐藤、おはよう」

「佐藤さん、おはようございます。ちゃんと眠れましたか?」


 身支度を整えてから部屋を出ると、ロビーにはすでにベルベットさんとシーラさんの姿があった。

 私もかなり早く起きたつもりだったけど、どうやら二人の方が気合いが入っていたようだ。


「おはようございます。すみません、お待たせしてしまいましたか?」

「いえ、私もベルベット様も今来たところですよ」

「うん。謝る必要なんてないわ。それより早くルダークを見て回りましょう。まずはどのエリアから行く?」

「私は全く分からないので、シーラさんとベルベットさんのおすすめの場所でお願いします」

「なら、まずはシーラの行きたい場所でいいわ。目星はつけてあるの?」

「はい。異国の品が並んでいる場所から行きたいですね。狙っている物がありまして、朝一で行きたいと思っていました」

「いいですね。まずはそこに行きましょうか」


 シーラさんを先頭に、私たちは異国の品が並ぶ場所へと向かうことにした。

 朝一に行きたいと言っていたことから考えるに、シーラさんが狙っているのは人気の品なのだろうか。


 グレイラン王国の品すらよく分からない私にとっては、この異世界そのものが異国のようなものだから、正直ピンと来ない。

 ただ、シーラさんがわざわざ狙っている物なのだから、きっとすごい物なのだろう。


 気持ちの良い朝のルダークの街を歩きながら、たどり着いたのは市場のような場所。

 まるで築地のような、大きくて活気のある市場で、早朝にもかかわらず多くの人で賑わっていた。


「朝なのに活気がありますね。売られている物も、確かに独特な品が多い気がします」

「異国の品だけあって、王国では見られない物が多いわね。で、シーラが欲しい物って何なの?」

「私が狙っているのはシールドレークです。熱帯地域でしか育たない作物で、食べれば一時的に防御力が上がる効果があるんです」


 一時的に防御力が上がる作物なんてものがあるとは思ってもいなかった。

 これまで作物には美味しさしか求めていなかったから、目から鱗が落ちる思いだった。


「身体能力を強化する作物なんてあるんですね。珍しい物なんですか?」

「王国では育たないものですし、かなり珍しいので高値で取引されています。能力上昇系の作物は、基本的に熱帯地域か寒帯地域でしか育たないのが特徴ですね」

「そうそう。それも、栽培方法が解明されていないものばかりだから、滅多に入ってこないの」

「へえ、そんなに珍しい物なんですね。私もこの目で見てみたいです」


 種が手に入るなら、ぜひスキルの畑に植えてみたいところ。

 気候の問題がある以上、育たない可能性の方が高いけど、スキルの畑ならワンチャンあるかもしれない。


 それにしても、厳しい環境でしか育たない作物か……。

 厳しい環境で育つからこそ、能力を上昇させる効果があるのかもしれない。


 そんなことを考えながら、三人で市場を練り歩き、シールドレークを探す。

 見た目はメロンを真っ青にしたような感じらしく、一目で分かるとシーラさんは言っていたが、今のところ見当たらない。


「ありませんね。これだけ探してもないとなると、もうすでに売り切れてしまった可能性があります」

「そもそも入荷されているかどうかも怪しいからね。なかったらなかったで、切り替えて他の物を探そう」


 完全に諦めムードが漂う中、私だけは諦めきれずに周囲を探していると……真っ青で大きな球体が視界の端に映った。

 すぐにそちらに視線を向けると、明らかに異質な物が置かれている。


 私はシールドレークを見たことがないが、直感的にそれがシールドレークだと理解した。

 慌ててシーラさんとベルベットさんを呼び、私たちは急いでその売り場へと向かったのだった。



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