第288話 休日の予定
この数日間は農作業を終えてから、新しく購入した『ドラゴンボール』を読む日々を送っていた。
久しぶりに読み直したけれど、やはり『ドラゴンボール』は不朽の名作だ。
内容はもちろんのこと、キャラクターのかっこよさが際立っているのがよくわかる。
スーパーサイヤ人は言わずもがなの天才的イラストだし、フリーザをはじめとした敵キャラもかっこいいんだよなぁ。
明日から数日間は休日の予定だ。
夏はイベント尽くしのため、その前に夏休みを取ってしまおうという算段である。
『ドラゴンボール』もいいところだし、この夏休み期間は購入した漫画を読み耽りたい気持ちもあるけれど……
さすがにどこかへ出かけないともったいない。
ということで、漫画は一時中断して旅行に出かけることにした。
すでに農業は始まってしまっているため、今回もシーラさんとの二人旅になると思う。
どこへ行くかはまだ決めていないし、今日のうちに決めておきたいところだ。
「シーラさん、またお呼び立てしてすみません。明日からどこかへ旅行に行こうと思っているんですが、シーラさんも一緒に来てくれませんか?」
「もちろんお供します! それにしても急ですね! 私は嬉しいですが!」
今日の明日で申し訳ないと思いつつも、シーラさんは二つ返事で了承してくれた。
本当は前もって計画したかったけれど、明日からの夏休みも急遽決まったことだったからね。
「ありがとうございます。それでは、明日からの休日は一緒にどこかへ行きましょう」
「はい! 行く場所は決まっているんですか?」
「いえ、まだ決まっていません。その相談もしたくてシーラさんをお呼びしたんですが、どこか良い旅行先ってありますか?」
すべてをシーラさん頼りにするのは申し訳ない。
ただ、この世界については本当に詳しくないからなぁ。
私が選ぶとしたら、王都かランゾーレの街くらいになってしまう。
「良い旅行先ですか……。いくつかありますが、目的によって変わりますね。闘技場のあるギナワノスの街、交易都市ルダーク、世界最大級のカジノがあるミデッカの街、王国で一番治安の悪いメルロデ最終処分場、神が堕ちた場所とされているサレヴォ廃神殿。近場ではないですが、王国内ではこのあたりが有名なところでしょうか」
「どこも面白そうですね。すべての場所に興味がそそられます」
提示してくれた場所は、本当にどこも興味深い。
ただ、メルロデ最終処分場とサレヴォ廃神殿だけは少し怖さがある。
名前の響きもそうだし、シーラさんの一言説明も怪しさ満点だからね。
怖いもの見たさで行ってみたい気持ちはあるけれど、弾丸旅行で行っていい場所ではない気がしてしまう。
「佐藤さんは、今挙げた中では一番どこに行きたいですか?」
「交易都市か闘技場ですかね。カジノも興味はありますが、遊ぶのはもう少しお金があるときじゃないと駄目ですね」
「なるほど。それでは、ギナワノスとルダークについて少し調べてきます。佐藤さんは、明日にでも出発できるように、諸々の準備をしておいてください」
「えっ? 調べに行くって、今からですか?」
「はい。それでは行ってきます!」
質問を終える前に、シーラさんはそう言って飛び出していってしまった。
私も追いかけたのだけれど、すごい速度で走っていってしまい、あっという間に見えなくなった。
調べるって……どこに調べに行ったんだろう?
シーラさんの行方も気になるけど、あの人のことだから心配はいらないはず。
言われたことをやったほうがいいと判断した私は、急いで自室へ戻り、すぐにでも旅行に行けるよう準備を整えることにしたのだった。
――その日の夜。
行方知れずとなっていたシーラさんが戻ってきた。
「シーラさん、お帰りなさい。どこに行っていたんですか?」
「少し王都まで行って、情報収集をしてきました」
「えっ!? あの後に王都に行っていたんですか?」
とんでもない行動力に、開いた口が塞がらない。
ありがたすぎるけど、申し訳ない気持ちのほうが大きくなってしまう。
「走ったら、すぐに着きますので。それより、いろいろと調べてきたのですが、今はギナワノスよりもルダークの方が良さそうです。闘技場では何かしらのイベントが毎日行われているようですが、今は暑いこともあって、大したイベントは開催されていないと教えてもらいました」
「そうなんですか! それでは、今回の旅行先はルダークの方が良さそうですね」
「はい。秋の終わりごろからは、年に一度の大きな大会が開かれるみたいなので、ギナワノスにはその時に行きましょう」
「賛成です。シーラさん、今回はわざわざ調べに行ってくださり、本当にありがとうございました」
「いえいえ。明日が楽しみです」
シーラさんは笑顔でそう言うと、「早めに寝ます」とのことでシャワーを浴びに行った。
私も明日に備えて、早めに眠るとしよう。