第286話 レアチーズケーキ
水田が完成した翌日。
まだまだやることはあるんだけど、今日は貯めたNPの使い道について考えることに決めた。
もちろん私1人ではなく、シーラさんと話し合って決める。
仕事終わりに空き部屋の一室を使い、しっかりとスイーツを用意してから、早速話し合いを始める。
「今日は時間を取っていただき、ありがとうございました。ここ最近は色々と忙しく、シーラさんにもご迷惑をかけてしまっています」
「いえいえ、気にしなくて大丈夫ですよ。忙しいですが楽しいですし、少しずつここが大きくなっていくのが私は嬉しいので」
「そう言ってもらえて、本当に助かっています」
私は深々と頭を下げながら、献上品であるスイーツを差し出した。
今回用意したスイーツは、手作りのレアチーズケーキ。
クッキー生地の土台に、甘くてふわふわなレアチーズを乗せた一品だ。
レモンの酸味も効いているため甘すぎず、ふわふわとザクザクの食感も楽しめるスイーツになっている。
「真っ白でふわふわなスイーツですか!? バニラアイスに似ていて美味しそうです!」
「アイスとは別物ですね。どちらかといえば、クリスマスに食べたケーキの方が近いです」
「なるほど! 早速いただきますね! ――うぅー! ふわんふわんで美味しいです! 甘味と酸味のバランスも良く、土台部分も美味しい! このスイーツ、すごく美味しいです!」
シーラさんは興奮気味に感想を語りながら、レアチーズケーキを一瞬で食べ終えてしまった。
食べながらゆっくりと話し合いたいんだけど、いつも話し合う前になくなってしまう。
「あー……もうなくなってしまいました。幸せな時間は過ぎるのが早いですね」
「お代わりもありますので、話し合いが終わってからお出ししますね」
「本当ですか!? なら、すぐに話し合いをしましょう! 今回は……イベントのことでしょうか? 去年行った縁日の日が近づいていますよね?」
確かに、縁日についてもそろそろ企画しないといけない。
今回は去年よりも規模を大きくしたいし、オリジナルの屋台をやってもらいたいとも思っているからね。
ただ、縁日の運営もサムさんに依頼したいと思っているため、また近いうちに別で話し合うことになると思う。
「縁日も確かに近づいていますが、今回は貯めた通貨の使い道についての話し合いがしたいんです。春の期間は忙しかったこともあって、全然使っていなかったので、結構なものが買えるんですよね」
模擬戦大会や果樹園作りは行ったものの、苗木自体はそこまで高い買い物ではなかった。
模擬戦大会も優勝商品がスマホと、高価ではあるけど超高額というわけではないからね。
ちなみにスマホの現在の行方については、美香さんが所持している状況。
決勝戦のことをライムから根掘り葉掘り聞いていたときに、優勝商品のスマホについての交渉を行ったみたい。
珍しい鉱石に、大量の魔力塊を渡すという約束で、ライムから美香さんへと渡った。
ライムの使い道としては、スマホを取り込むぐらいしかなかったからね。
スマホを取り込んだことで新たな進化を遂げるのでは、という期待も密かに抱いていたんだけど、取り込む選択はしなかったみたい。
ただのゴミとして何事もなく吸収される可能性の方が高いし、物々交換の材料にしたのは良い選択だと思う。
「確かに一切散財していませんでしたね。佐藤さんは何か使い道を考えているんですか?」
「今のところは娯楽室の強化を考えています。宿が近々建ちますし、宿泊したお客さんに楽しんでもらえるものを買いたいとは思っています」
「いいと思います。何より、私たちも楽しむことができますし、人数も増えたことでゲームの待ち時間とかも増えましたからね」
入り浸っているソアラさんとルナさんだけでなく、ルチーアさんを筆頭にダークエルフの皆さんがちょこちょこと遊びに来るようになった。
単純にSwitchが1台だけでは足りなくなってきたし、もう1台用意するのは確定かもしれない。
「シーラさんもそう言ってくれるのであれば、娯楽強化は確定ですね。シーラさんの方で、この部分を補ってほしいという意見はありますか?」
「私は畑を守ってくれる従魔がほしいですね。畑が大きくなりましたし、クロウだけでは負担が大きいと思います」
「確かに必要ですね。空を飛べて、クロウのように狩り能力の高い魔物を従魔にしましょうか」
それからシーラさんの意見を聞きつつ、私が選んだ魔物はフレイムホークとカッティングビートル。
フレイムホークは火属性攻撃を得意とする鷹で、見た目がかっこいいだけでなく、狩り能力も高く冒険者からは避けられている魔物らしい。
一方のカッティングビートルは、知名度も情報も少ない魔物で、私が見た目の好みだけで選んだ。
大きくてかっこいいクワガタのような見た目であり、大きな角は刃物のように鋭く、凶悪なフォルムをしている。
狩り能力は不明だけど、少年心をくすぐられてしまってつい選んでしまった。
もしかしたら、何もできない可能性もあるけど……それでも良いと思ってしまうぐらい、魅力的な容姿をしている魔物。