第271話 2回戦
2回戦も同時に色々なところで行われており、一戦ずつは追っていられないため、高い場所から試合結果だけを確認していく。
美香さん対ミラグロスさんは、序盤ミラグロスさんペースで試合が進み、0-2まで追い込まれながらも対応し切り、結果3-2で美香さんが勝ち上がった。
ヘレナ対シャノンさんの魔術師対決は、シャノンさんの圧勝。
魔法のレベルだけでいったらヘレナの方が上だったと思うけど、戦闘センスや経験の差が顕著に現れた試合だった。
ドレイクさん対アシュロスさんは、制限時間まで戦う死闘であり、序盤のリードを何とか保ったアシュロスさんの勝ち上がり。
ただ、最後の1分間はドレイクさんに攻められ続けており、どっちが勝者なのか分からないぐらい疲弊しきってしまっている。
スレッド対ゼパウルさんも名試合であり、1-0で制限時間となりスレッドの勝利。
魔族だとバレないように、慣れないヘルメットを身に付けてもらっており、そのせいで死角が生まれて1本食らってしまった。
この1本がなければ延長戦だったことを考えると、少しだけ可哀そうだけど……こればかりは仕方がない。
ライム対唯さんは、ライムの今大会一番の圧勝。
分裂からの高速攻撃にどう対応することもできず、秒殺勝利を飾った。
分裂へのクリーンヒットも有効打としてみなされるため、メリットばかりではないんだけど、対応するのはあまりにも難しい。
そして、優勝予想最多票獲得のフリースさんの番がやってきた。
対戦相手はブリタニーさんで、フリースさんの圧勝が期待される中、結果は3-1で順当にフリースさんの勝利。
結果だけを見ればフリースさんの圧勝だけど、最後にミラグロスさんの渾身の一撃を右の脇腹に貰ってしまった。
どこからでも逆転できる可能性があるのがブリタニーさんの怖さであり、その一撃をもらってしまったことで勝敗が揺らぎかけたけど、何とか1本を取り切り勝利をもぎ取った感じ。
ダメージも大きく、次の試合に影響を及びそうだけど、フリースさんはちゃんと強い。
私は変人というイメージの方が強かったけど、剣聖の名に偽りはなく、動きの一つ一つがドニーさんを彷彿とさせる感じ。
それでも、優勝候補に挙げるまではいかないけどね。
そして、昨日の予選通過者の方との試合は、シーラさん、ローゼさん、蓮さんが順当に勝ち上がった中、マッシュがレオノールさんと戦って敗北。
レオノールさんはヤトさんにも勝利した冒険者で、立ち回りが基本に忠実。
ルーアさんと似た感じであり、どうやらマッシュの対応策も考えてあったようで、胞子攻撃を完璧に封じられて負けてしまった。
とはいっても、しっかり有効打を2本与えていたし、レオノールさんがマタンゴの知識を持っていなければ勝てたと思う。
とにかく、これで残るは最後の試合となった。
2回戦の最終試合はイザベラさん対シルヴァさん。
トーナメント表的にも、本来はシーラさんが最終試合のはずなんだけど、制限時間いっぱいまで伸び、更にシーラさんがパウルさんに即勝利を収めたことで、こっちのカードが最終試合になってしまった。
ただ、2回戦の注目カードの1つだったし、このカードをゆっくり見ることができるのは嬉しい。
シルヴァさんに至っては、前回大会の終わりにゆっくり話したかったのに、気づけば帰ってしまっていたからね。
今大会は参加してくれないんじゃないかと思っていただけに、こうして姿を見せてくれて良かった。
「シルヴァさん、お久しぶりです。今回も参加してくれてありがとうございます」
「こちらこそ、参加させてくれてありがとう。去年は急に帰ってすまんかったな。急用ができて、帰らざるを得なかったんだ」
「気にしていないので大丈夫ですよ。もし、時間がある時に話しましょう。今回もお時間がなければ、帰っていただいて大丈夫ですので」
「気づかってもらってすまんな。それじゃ、ちょいと試合をしてくるよ」
シルヴァさんは重そうな体を軽く動かしてから、試合会場へと向かった。
シルヴァさんの実力は知っているけど、対戦相手はイザベラさん。
相当な実力者だし、このカードもどちらが勝つのか分からない。
個人的にはイザベラさんに勝ってもらい、敗退したシルヴァさんとゆっくり話したいけど……それは流石に自分都合すぎるか。
「それでは2回戦最終試合を始める! 両者定位置につけ!」
「よろしくね。お年寄りでも手加減はしないわ」
「ふぉっふぉ。ワシもお嬢さん相手だろうと手加減はできん。全力でいかせてもらうが許してくれ」
「生意気な爺さんね。ちょっと痛い目を見てもらうわよ」
「望むところじゃ」
バッチバチな煽り合いの後、お互いに武器を構えた。
イザベラさんは片手剣で、シルヴァさんは両刀。
「それでは――始め!」
レフェリーの合図によって、試合が開始された。
どちらが勝つのか……非常に楽しみな一戦だ。





