表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

274/393

第260話 連載作品


 しばらく自分の描いた漫画を抱きしめた後、私に温かい目で見られていることに気が付き、慌てた様子で平静を装ったベルベットさん。

 色々と遅い気はするけど、人前で取り乱したときの恥ずかしさはよく分かるため、特に触れないようにする。


「――んんっ。展示を強く勧めてくれてありがとう。ここに置いて良かったって本気で思ってる」

「面白い漫画でしたので、こうなると確信していました。私にお礼を言うよりも、自分を褒めてあげてください」

「自分を褒めるなんておかしいでしょ。でも……ちょっと、ううん。けっこう自信がついたかも」


 そう言ったベルベットさんの目は燃えており、今すぐにでも新しい漫画を描きたいといった表情をしていた。

 ただ、まだ新作を読ませてもらっていないし、滞在期間中は農作業を手伝ってもらう予定のため、実際に作業に移れるのはだいぶ先になりそうなのが、少し申し訳ない。


「それなら良かったです。では、新作を読ませてもらってもいいでしょうか?」


 私はテーブルに置かれた新作の漫画を手に取ろうとしたのだが、ベルベットさんに無言で止められた。

 大きく深呼吸しており、どうやら心の準備をしている様子。


「……あれ? 自信がついたんじゃ……」

「自信がつく前の作品だから。それに、自信がついても読まれるのは不安なの! ……すぅーはぁー。……うん、読んでいいよ」


 捲し立てた後、もう一度深呼吸してから、ようやく許可を出してくれた。

 私はすぐに受け取り、間を置かずに読み始める。


 今回のジャンルはミステリー。

 ただし本格的なものではなく、身近な不思議なトラブルを解決する、コメディータッチのミステリー作品だった。


 主人公は王女様で、従者たちのちょっとした困りごとを解決していく構成。

 かなり描写も細かく、実話が混ざっているような雰囲気があり、王城内の様子が分かってとても面白い。


 「誰がおやつを食べたのか」といった可愛らしい内容ながらも、伏線がしっかり張られており、読みながら推理も楽しめる良作だった。

 これまでの作品とは打って変わって感動路線ではないものの、1話完結の長期連載も可能で、ずっと読み続けられそうな作品だ。


「――すごく面白かったです! ほのぼのしていながらも、推理がしっかりしていたのが良かったですね!」

「そ、そう? そう思ってくれたのならホッとした」

「この作品なら、長期連載も可能ではないでしょうか? 2話、3話と続けられそうですし、コンセプトもとても良かったです」

「うーん……可能といえば可能だけど、ミステリー部分を考えるのが大変なの。あと2話分くらいは実際にあった面白い出来事があるけど、それ以降を1から考えるのは無理かも」

「そうですか……。フォーマットが出来上がっているので勿体ない気もしますが、確かにネタを考えるのは大変ですね」


 これが仕事として成立するのであれば、無理にでも描くことを勧めるのだけど、現状では仕事になるわけではないからね。

 ベルベットさんが意を決し、ここ以外でも漫画を公開できるようになれば、仕事にすることもできるのだけど……それはもう少し先になりそうだ。


「佐藤が考えてくれたら描けるけど、ミステリーの案って何かないの?」

「うーん……。1から考えるのは難しいですね」

「そっか。佐藤が無理ならやっぱり厳しいかなぁ」


 パクりならいくらでも案を出せるけど、異世界とはいえネタをパクるのはどうかと思ってしまう。

 この線引きは難しいけど、私はやりたくないなぁ。


 そこまで思考していて、ミステリーの案を出してくれそうな人が一人思い浮かんだ。

 それはもちろん、ちょうどやってきているローゼさん。

 なんとなくだけど、彼女ならミステリーのネタも考えられそうな気がする。


「あの、ローゼさんに頼んでみるのはどうですか? 本を読み漁っていると言っていましたし、原作として迎え入れたら化学反応が起きそうな気がします」

「無理! 絶対に無理だから! 漫画をここに置くのは許可したけど、私が描いてるってことは絶対に言っちゃダメ!」

「高評価ですし、言いふらしても問題ないと思いますけど……。でも、ベルベットさんが嫌と言うなら、強要はできませんね」

「まだ無理! 今回の作品も受け入れられるか分からないし……」

「面白いので、その心配はないと思いますよ。とりあえず、偶然ローゼさんも来ていることですし、漫画関連の話をしてみるのはいかがでしょうか? ローゼさんも漫画を読み漁っているので、描いていることを伏せたままでも仲良くなれると思います」

「うーん……。確かに話は盛り上がったし、もっと話してみたいとは思ってたけど、やっぱり話しかけるのはハードルが高いのよね」

「大丈夫ですよ。似た者同士だと思いますので、ぜひ話しかけてあげてください」


 ベルベットさんは少し悩んだものの、最終的には頷いてくれた。

 これで2人が話して盛り上がり、どちらかがカミングアウトしてくれれば、一気に距離が縮まると思うけど……それはさすがに期待しすぎかな。


 ということで、新しい漫画もここに飾らせてもらう許可を得てから、ベルベットさんとの話は終わった。

 次はローゼさんとの話し合いだ。彼女にも色々とアプローチをかけてみようと思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 私の別作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 私の作品です!1/27発売ですので、どうかお手に取って頂けたら幸いです! ▲▲▲ 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ