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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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夜刀神の大冒険 その2


 近づいていくうちに、遠くから見えていたものが洞窟であることがはっきりと分かった。

 もし何もなかったらどうしようかと不安だったが、無事に存在が確認できてひとまず安心じゃ。


「洞窟があったのじゃ! さっそく探索して、お宝を手に入れるのじゃ!」

「洞窟があって本当によかったわ。お宝より何より、まずは寒さをしのぎたい……」

「……私も。もう足の感覚がない。氷の上だから火属性魔法も使えないし、つらい……」


 全員一致で「とにかく洞窟に入りたい」という結論に至ったため、わらわたちは駆け込むように洞窟の入口へと向かった。

 もう目と鼻の先、というところで、先頭を歩いていたイザベラが突然足を止める。


「なんじゃ、急に止まって。もうすぐ洞窟なのに!」

「ローゼ様、ヤト様! 洞窟の中をよく見て!」


 イザベラの声に促されて洞窟の中を覗き込むと……そこには、ぎっしりと詰まった大量のデスフロッグたち。

 体を寄せ合うようにして洞窟内を埋め尽くしており、苦手ではないわらわでさえ思わずたじろぐほどの気持ち悪さじゃった。


「……うわ、気持ち悪い。あれ、もしかして冬眠してるの?」

「無理無理! あんなとこ、絶対入れないって!」

「イザベラ、文句を言うな! ここまで来た以上、もう入るしかないのじゃ! お宝もそうじゃが、寒くて限界なのじゃ!」


 正直、わらわも入りたくはない。じゃが、今さら引き返すという選択肢はないのじゃ。

 ローゼが言っていた通り、氷の上では火属性魔法も使えず、暖を取る術がない。


 つまり、来た道を戻ろうものなら、寒さで動けなくなるのは目に見えておる。

 生き延びるためにも、この気持ち悪いデスフロッグの群れをどうにかするしかないのじゃ。


「うぅ……ついてこなきゃよかった。ヤト様がデスフロッグはいないって言ったから来たのに……」

「こんなことになってるとは、わらわも思わんかったのじゃ! でも、動く気配もないし、多分冬眠中じゃ。ならばわらわとローゼの力で、一気に倒せば大丈夫じゃ!」

「……私も嫌だから、魔法で全部消し飛ばす」

「ローゼ様、お願いします」


 わらわとローゼは目を合わせ、頷き合ったあと――最大火力の攻撃を放った。

 ローゼの超級雷魔法と、わらわの黒龍弾。


 エネルギーをほとんど使い切ってしまうのじゃが、今は洞窟に入ることが最優先。

 二人の強力な攻撃が洞窟内に炸裂し、轟音と衝撃がこちらまで伝わってきた。


「すごい威力ね。さすがヤト様。普段は頼りないけど、力だけは本物だわ」

「はぁ〜……疲れたのじゃ。早く中に入るのじゃ!」


 デスフロッグたちがいなくなったのを確認してから、急いで洞窟内へと駆け込む。

 外とは比べものにならないほど、中は暖かかった。


 さっきまでデスフロッグたちが体を温めていたおかげか、ここで寝られるくらいの暖かさじゃ。

 本当に引き返さなくてよかったのう。


「はぁ〜……あったかい。外と中でこんなに温度が違うなんて」

「……そりゃデスフロッグも集まってくるわけよね」

「もはや、この暖かい空間がお宝ってオチでも許せるくらいだわ」

「そんなオチではないはずじゃぞ! 行商人の話では、この洞窟の奥に“魔法帝のスペルリング”が眠っているって話だったのじゃ!」


 正直、座り込んで休みたい気持ちもあるが、それより先にお宝を見つける方が先じゃ。

 へたり込んでいたローゼとイザベラを引っ張り起こし、洞窟の奥へと足を進める。


 もしさっきの攻撃で壊してしまっていたら最悪じゃが、奥にあるという話だったし、多分大丈夫じゃろう。

 明かりを灯しながら、先細っていく洞窟を進んでいくと――その奥に、錆びた鉄の箱が見えてきた。


「あった! あったのじゃ! あれは間違いなく宝箱じゃー!」

「本当にあるの? 絶対ハズレだと思ってたのに……」

「……私も。でも、中が空っぽって可能性はまだある」

「それでもきっと大丈夫じゃ! ローゼ、魔法で開けるのじゃ!」


 錆びた箱をローゼに託し、わらわはワクワクしながら開封を待つ。

 ローゼが魔法で錠前を破壊し、ゆっくりと蓋を開ける。


 中に入っていたのは、スペルリングと思しき指輪と、大ぶりな宝石が三つ。

 その瞬間、疲れが吹き飛び、思わずぴょんと飛び跳ねてしまった。


「やったのじゃーっ! 本当にお宝があったのじゃーっ!」

「ほんとにあったわね……しかも、中々に凄そうなやつ」

「……宝石も大きくて綺麗。このサイズ、見たことない」

「本物だったらすごい価値じゃ! 宝石は一人ひとつずつ分けるとして、このスペルリングは佐藤にあげようと思うのじゃが、よいかのう?」

「もちろん。そもそも、そのために来たんでしょ?」

「……ちゃんと私とイザベラも手伝ったって、佐藤に伝えてくれるなら、あげてもいい」

「二人とも、なんていい奴なのじゃ! さっきまで文句ばかり言って、嫌なやつだと思ってたこと、ほんとにすまんかったのじゃ!」

「ちょっと!? 無理やり連れてこられた上に、それ思ってたの!? ……なんか、渡したくなくなってきた」

「じょ、冗談じゃ! 冗談なのじゃ!」


 イザベラの目は冷たかったが、なんとか許してもらえた。

 本音を言えば、わらわもここまでうまくいくとは思ってなかったのじゃが……最高の思い出になった。


 佐藤への最高のプレゼントも手に入れられたし、佐藤がよく言う“一石二鳥”というやつじゃな!


「……なんだかんだ、面白かったかも。終わりよければすべて良しってやつ?」

「確かに。デスフロッグ見た瞬間は本気で後悔したけど、こうして宝石が手に入ると、来てよかったって思えちゃうわ」

「二人にとっても良い思い出になったなら、それだけで満足なのじゃ! あとは無事に帰るだけじゃから、ちょっと休んだらエデルギウス山に戻るとするかの!」


 それからわらわたちは、洞窟でしっかりと体力を回復させ、翌朝に出発した。

 帰り道もなかなかハードだったが、それも含めてすべてが良い思い出。

 今はただ、佐藤にプレゼントを渡したときの反応を楽しみにしながら――わらわの大冒険は、大成功で幕を閉じたのじゃ!




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