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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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夜刀神の大冒険 その1


 ――エデルギウス山。


 リュックに荷物をパンパンに詰めて、これで準備は万端。

 わらわが何をしているかというと、佐藤へのプレゼントを手に入れるため、大冒険に出かける支度を整えていたところなのじゃ。


 アシュロスからは必死に止められたが、ローゼとイザベラが同行するということで、特別に許可をもらえた。

 わらわももう成長しておるというのに、アシュロスの過保護ぶりにはほんと困ってしまうのう。


 まあ、許可は下りたし、支度もできた。ならば早速出発じゃ!

 気合いを入れて、リュックを背負い、家を後にする。


「お嬢様、くれぐれも危ないことはなさらないでくださいね。それから、ローゼ様とイザベラさんにご迷惑をかけることのないように」

「わかっておる! それに、わらわが迷惑をかけるなどあるものか! 逆に世話を焼いてやるくらいの気持ちじゃからな! ぬっはっは!」

「…………あとでちゃんと話を聞かせてもらいます。ご迷惑をかけていたと分かれば、旦那様に報告いたしますからね」

「だから、大丈夫じゃと言っておるのに! アシュロスは心配性すぎるのじゃ! それじゃ、行ってくるぞ!」


 渋い顔をしているアシュロスにそう言い残し、わらわはエデルギウス山を後にした。

 山の麓にはすでにローゼとイザベラの姿があり、ローゼはあくびをしながら、いかにも眠たそうな様子じゃ。


「来てくれて感謝するのじゃ! ――って言いたいところじゃが、ローゼ、なんでそんなに眠そうなんじゃ! これから大冒険なんじゃぞ!」

「……だって、朝早いんだもん。それに、面倒くさいのが勝っちゃって」

「むむむ! ローゼは本好きのくせに、冒険は嫌いなんじゃな! 自分で冒険すれば、本ももっと面白くなるというのにのう!」

「……意味わかんない。本は想像するのが楽しいの。自分でやろうとは思わない」

「ロマンがないのう! イザベラは楽しみじゃろう?」

「ううん。面倒くさいわ。アシュロスさんに頼まれたから、仕方なくついてきただけよ」

「うっぐっぐ……! 揃いも揃って何なのじゃ! これから冒険が始まるというのに!」


 まったく、イザベラもローゼも期待外れなのじゃ!

 ここで説教でもしてやりたいところじゃが、そんな暇はない。


 冒険が始まれば、きっと2人とも楽しみ始めるはず。

 そう信じ、少し出鼻をくじかれたものの、気を取り直して出発することにした。


「……ねぇヤト、どこまで行くの?」

「今回の目的地は、ラージャの湖じゃ! 冬の時期は湖が凍って、その中央にある洞窟へ入れるらしいのじゃ。そこにお宝が眠っていると言われておるのじゃ!」

「ラージャの湖って、確かデスフロッグが大量にいる場所じゃなかった? カエル系の魔物がいるなら行きたくないんだけど」

「……私もカエルは無理」

「冬はおらんのじゃ! さっさと向かうぞ!」


 文句ばかり言う2人を引き連れ、ラージャの湖を目指して歩き始めた。

 本音を言えばドラゴンの姿に戻ってひとっ飛びしたいのじゃが、洞窟の探索前に体力を使い切ってしまうのは危険じゃ。

 体力温存のため、歩いて向かうことにしたのじゃ。



 途中で野宿を挟みつつ、歩くことまる一日。

 ようやくラージャの湖が見えてきた。


「おおっ! ようやくラージャの湖が見えてきたのじゃ!」

「やっと着いた……寒すぎて最悪だったわ」

「……夜、死ぬかと思った」

「そんな簡単に死なん! それよりラージャの湖じゃぞ! もっとこう……あるじゃろ、リアクションが!」


 2人はずっとこの調子で、せっかくの冒険が台無しじゃ。

 気を取り直して、湖の凍り具合を確認するため近づいてみる。


「おー、カッチカチになっておる! これなら湖の上を歩いて進めるのじゃ!」

「……本当に凍ってる。まあ、この寒さなら当たり前か」

「寒すぎて、魔物どころか生き物もほとんどいないわね。ヤト様が適当なこと言ってるのかと思ってたけど」

「わらわは嘘なんかつかん! とにかく、さっさと洞窟に向かうぞ!」


 内心では2人に文句を言いつつ、わらわも寒さで震えておる。

 洞窟の中なら多少は暖かいだろうから、早く中に入りたいところじゃ。


 ただ、今の場所からは洞窟の姿は見えず、どれほど歩けばいいのかまったく見当がつかん。

 湖は見晴らしがいいのに見えないということは、かなり距離があるということじゃな。


「……何も見えないけど、本当に洞窟なんてあるの?」

「湖の上を歩けるのはちょっと面白いけど……今のところ、寒いだけね。これで洞窟がなかったら無駄足もいいとこよ」

「噂ではあるって話だったから大丈夫じゃ! ……多分」

「……その“多分”が一番不安なんだけど。ヤトだって本当は帰りたいと思ってるんじゃないの?」

「そ、そんなこと……お、思っておらん! わらわは、佐藤へのプレゼントを見つけるまでは帰らんのじゃ!」


 ローゼの鋭い指摘に、気合いを入れ直すようにそう宣言する。

 だが氷の上を歩いているせいで、足元から冷えてきて、もう感覚がほとんどない。


 ここまで来たらもう引き返せん。

 泣きたい気持ちをこらえつつ、意地で足を前に出し続けていると……遠くに何かが見えた。


 まだ湖の上であることを考えると、あれは間違いなく洞窟じゃ!

 折れかけていた心に再び火がつき、わらわはその洞窟へと足早に向かい始めたのじゃった。



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