第231話 修繕
仮装パーティーから1週間が経過した。
ミラグロスさんとゼパウルさんは昨日、魔王の領土へと帰っていった。
サツマイモの苗と肥料も一緒に持ち帰っており、戻り次第すぐに育ててみるとのこと。
帰りの魔力を貯めるのに時間がかかったこともあり、しっかりと農業のノウハウを教えることができたから、サツマイモが育つ土なら問題なく育つはずだ。
ちなみに、今後の取引ではサツマイモの種を渡すつもりだけど、今回は育つかどうかを確かめるために苗を渡している。
そしてミラグロスさんは、こちらに来るための魔力が貯まり次第、すぐに戻ってくると言っていた。
その際には鉱石類を持ってきてくれるようで、サツマイモの種との交換品はそのときに決める予定だ。
ロッゾさんやシッドさんという超一流の職人がいるので、私は鉱石類が良いと思っているんだけどね。
仮装パーティーのときのすごい仮装を思い出しながら、そんなことを考えていると……タイミングよくロッゾさんがやってきた。
一瞬、何の用か分からなかったが、その手に持っているものを見て、すぐに訪ねてきた理由が分かった。
「おう、佐藤さん! シーラはいるか?」
「はい。自室にいますので呼んできますね。その手に持っているのは七呪剣の件ですよね?」
「そういうことだ! 完璧に直せたから、シーラに返したくてな! 呼んできてくれると助かる!」
「もちろんです。すぐに呼んできますね」
ロッゾさんにそう告げてから、急いでシーラさんを呼びに行った。
すぐに出てきてくれたシーラさんと共に、ロッゾさんのもとに戻る。
「ロッゾさん、もう七呪剣を直してくれたんですか? 想像以上に早くて驚きました」
「俺の手にかかりゃこんなもんよ! シーラ、ちょっと見てくれ!」
そう言って差し出された七呪剣は、あの錆びついた剣とはまったくの別物に変貌を遂げていた。
一見、普通の剣にも見えるが、所々に施された黒い装飾が禍々しさを放っており、刀身にある赤い流線はまるで血のように見えて非常に恐ろしい。
……七呪剣と聞いているから、そう見えているだけかもしれないけど。
「あの錆びた剣が、こんなに綺麗な剣になるんですね。見ていると、何だか吸い込まれそうな感覚があります」
「し、シーラさん、大丈夫ですか? 呪われてるみたいですし、私はちょっと不安なんですけど……」
「ふふ、大丈夫ですよ。あくまで噂ですし、私も使うつもりはありません。ロッゾさんに売上金の10%をお渡しする約束もありますし、近々売りに出そうと思っています」
「ふぅー、それなら安心しました。噂とはいえ、シーラさんに呪われた剣は使ってほしくなかったので。ちなみに、どこで売るんですか?」
「佐藤さんって、スピリチュアルを信じるんですね。ふふ、意外な一面が見られて良かったです」
シーラさんは楽しそうに笑っており、心配しすぎていたのが何だか恥ずかしくなってくる。
スピリチュアルは基本的に信じていないけど、この世界なら何があってもおかしくないからね。
現にワープゲートなんてものも、最近見たばかりだし。
「売る場所ですが、春と秋に一度ずつ、王都のホテルで大きなオークションが開催されるので、そこに出品しようと思っています」
「へぇー! オークションなんてあるんですね。すごく面白そうです」
オークションの存在自体は知っていたが、実際に見たことは一度もない。
ハンターハンターでの知識しかないこともあって、憧れはあるし、ぜひ行ってみたいな。
「よければ、佐藤さんも一緒に行きますか? 王都は近いですし、日帰りで戻って来られますからね」
「ついて行っていいんですか? 行きたいです!」
「もちろんですよ。それでは七呪剣を売りに行きましょう。オークションは近いうちに開催されると思いますので、出品が認められたら日程をお伝えしますね」
「はい。楽しみにしています!」
オークションに参加できるのは嬉しい。
単純にオークションの雰囲気を楽しみたいし、この世界の貴重な品々が集まるという点でも、期待が膨らむ。
七呪剣がいくらになるのかも気になるし……今からワクワクが止まらない。
「王都のオークションに出品すんのか!
なら、ついでに俺のコレクションも売ってきてくれ!」
「もちろん構いません。ただし、出品が認められなければ売れませんが」
「俺のコレクションだぜ? 認められるに決まってんだろ! 売上の10%は手間賃でくれてやるよ!」
「いえ、手間賃は必要ありません。七呪剣を直してくれたお礼も兼ねていますから」
「そうか? わりぃな!」
こうして、七呪剣とロッゾさんのコレクションを売りに行くことが決まった。
まだ日程は分からないけれど、冬まで特に大きなイベントがない中、楽しみな予定が一つできたのは大きい。





