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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第225話 夜刀神の力


 無事に自己紹介はできたものの、ゼパウルさんの私たちを見る品定めのような視線は変わらなかった。

 ミラグロスさんはそのことに対して、かなりイライラしている。


「ゼパウルさん、お腹空いてますか?」

「ん? 当たり前だろ。腹が空いてないときなんかねェ」


 魔王の領土が作物の育ちにくい土地であることは知っていたし、近年はさらに不作が続いて食糧難だということも、ミラグロスさんから聞いていたけど……。

 “お腹が空いていないときがない”というのは、少し衝撃的だった。


 空気を和らげるために話を持ち出したけど、これは仲を縮める絶好の機会かもしれない。

 ゼパウルさんにも、日本の料理を振る舞おう。


「それならちょうどよかったです。これからご飯を作るので、一緒に食べませんか?」

「ご飯だァ? 俺は夜刀神に会いに来ただけ――」

「なら、夜刀神に会ってすぐに戻ればいい。ムカつく」

「ミラグロス、その態度はなんだァ? それに、食べねェとは言ってねェぞ!」

「素直に“食べたいです”って言いなよ。敵地だと思って気を張ってるのかもしれないけど……わがままな子どもにしか見えない」

「……うぐ。誰がわがままな子どもだァ!」


 思い当たるところがあったのか、ミラグロスさんの言葉に少し効いている素振りを見せた。

 口調も態度も悪いけど、ゼパウルさんが警戒する気持ちはよくわかる。

 ミラグロスさんのお兄さんということなら、心の底から悪い人ではないと私は思っている。


「言い合いはその辺にして、ご飯を食べましょう。ミラグロスさんも今日は作っただけですし、お腹空いてますよね?」

「……ん。味見で少し食べたけど、お腹は空いてる」

「私もお腹が空いています! 佐藤さんのご飯が食べられるんですか?」

「今日は盛り上げてもらいましたし、私も手伝うつもりです。とりあえず、別荘に移動しましょうか」


 みんなお腹が空いているみたいだし、今度は私が料理を振る舞う番。

 料理大会ではこの世界の食材限定という縛りを設けていたけど、私は日本の食材をふんだんに使うつもり。ちょっとズルい気もするけど、みんなも美味しい料理を食べたいだろうしね。

 ゼパウルさんの胃袋も掴みたいし、ここは本気でもてなそう。


 すぐに別荘に戻って、ノーマンさんとヤコブさんと一緒に料理を始めようと思ったんだけど……。

 別荘の前には、上機嫌なヤトさんとベルベットさんの姿が見えた。


 まだお互いに褒め合っていて、こちらのピリついた空気とは正反対の幸せオーラがすごい。

 ゼパウルさんも、あれが夜刀神だとは微塵も思っていないようで、スルーしかけていた。


「……兄さん。あれがヤト様」

「んァ? ……はァ? どれが夜刀神なんだよ」

「手前にいる小さい人がヤトさんです。私から紹介しますね」


 料理を作る前に、紹介を済ませたい。

 作っている間にいろいろな話ができるだろうし、多少揉めたとしても、美味しい料理でなんとかなるはず。


「ヤトさん、ちょっといいですか?」

「ん? 佐藤、どうしたんじゃ?」


 満面の笑みで、スキップしながらやってきてくれたヤトさん。


「ヤトさんに会いたいという人が来てまして、こちらはミラグロスさんのお兄さんのゼパウルさんです」

「わらわに会いたいとは、兄妹揃って変わっておるのう! わらわがヤトじゃ! よろしくのう!」

「本当に……夜刀神なのかァ? とても伝説のドラゴンには見えねェぞ」

「別に信じられないなら信じなくてもいいのじゃ! 料理人としての才能が目覚めたわらわは忙しいからな! ベルベットと料理談義をしなくてはいけないから、さらばじゃ!」


 去っていこうとするヤトさんを引き止めたのは、ゼパウルさんだった。

 ミラグロスさんは一目で本物だとわかってくれたけど、ゼパウルさんはまだ信じられないようだ。


「ちょっと待ってくれや。あんたが本物かどうか確かめない限り、俺は帰れねェんだわ。俺に一発攻撃して構わねェから、本物だと証明してくれやァ」

「めんどくさいのう! でも……今日のわらわは機嫌がいいから構わないのじゃ! それじゃ本気で攻撃するからのう!」


 そう言うと、ヤトさんは両手で円を作るように構えた。

 力を込め出すと、素人の私でもわかるくらい強烈な力が集まり、両手の円の中心が陽炎のようにゆらゆらと揺らぎ始めた。


 その揺らぎはうねりへと変わり、一瞬でドス黒い塊に変化した。

 気弾のようなものだと思うけど、まるで“死”が具現化したようで、冷や汗が止まらない。


「それでは一発だけ攻撃させてもらうからのう! 死なないように気張るんじゃ!」

「ちょ、ちょっ、ちょっとま――」


 ゼパウルさんもその気弾の危険さに気づき、中止を要求しようとしているが、焦りで口が回っていない。

 ヤトさんは笑顔で黒い気弾を構え、今にも放とうとしていた。


「ぶっ飛ぶのじゃー! ――なんちゃって! 冗談なのじゃ! ここで黒龍弾を放ったら、辺り一帯を全部ぶっ壊してしまうからのう!」


 ヤトさんの両手の中にあった気弾は、その言葉とともに霧散し、全員が心の底から安堵した。

 冗談がわかりにくいし、今回は本当に焦った。


 直接、黒龍弾を向けられていたゼパウルさんは、完全に腰が抜けてしまったようだ。

 ついさっきまでの精悍な顔つきが嘘のようにげっそりしており、ヤトさんによって心を完全に折られてしまった様子。


 私も本気で焦ったけど、ヤトさんにはいい仕事をしてもらった。

 これでゼパウルさんも、少しは丸くなってくれるはず。


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