第224話 お兄さん
この後は、参加者以外の方にも料理を食べてもらう予定になっている。
ジョエル君なんかは大失敗していたし、しっかりと料理が作れていたらどうなっていたのか、見てみたいところだ。
「佐藤さん、すみません。優勝できませんでした」
「……私も駄目でした」
落ち込んだ様子でやってきたのは、シーラさんとローゼさん。
私個人としては、シーラさんとローゼさんには95点をつけており、優勝したベルベットさんよりも高得点だった。
アイデアと料理の腕を評価したシーラさん。
単純に一番美味しいと感じたローゼさんには、ベルベットさんよりも1点多くつけた。
本当はローゼさんに96点をあげようかとも迷ったけれど、シーラさんが95点でローゼさんが96点というのは違うと思い直し、両者ともに95点という結果になった。
出番の順番が違っていたら、結果も変わっていたと思うし、本当に2人が落ち込む必要はない。
「心から美味しいと思いましたし、落ち込む必要はありません。私は優勝したベルベットさんよりも高得点をつけていますからね」
「……佐藤さんの中では、私とシーラさんが優勝だったってこと?」
「そうなりますね。出番の順番次第では、ノーマンさんやヤコブさんの点数も変わっていたと思いますから、実力負けでは決してありませんよ」
「佐藤さんは本当に優しいです。本当に悔しいですが、佐藤さんが一番高い点をつけてくれたというだけで、少しだけ胸を張ることができます」
「……私も。佐藤さん、誘ってくれてありがとう。来年もやるなら参加する」
「開催予定ですので、そのときは必ずお誘いしますね」
笑顔でうなずいてくれたローゼさん。
評判も良かったと思うし、約束をしたからには、来年も絶対に開催しないといけないな。
今回は遠方に出ていたため参加できなかった蓮さんたちも誘って、規模を大きくして開催しよう。
私がそんなことを考えていると、後ろから声を掛けられた。
「佐藤、ちょっといい?」
「ミラグロスさん、どうしたんですか?」
「料理大会のことを話そうと思ってたんだけど、ワープゲートに動きがあった。多分だけど、手紙を読んだ兄が来ようとしている」
「本当ですか? それでは迎えに行ったほうがいいですね」
「うん。さすがに暴れはしないと思うけど、一応、護衛をつれてきて」
そう言うと、ミラグロスさんは先にワープゲートへと向かった。
私も料理大会のことをいろいろ聞きたかったけれど、お兄さんがやってくるなら、先にそちらの対応をしないといけない。
“護衛を用意して”という不吉な言葉に少しビビりながら、私はライムとマッシュ、それからシーラさんを連れて、ワープゲートへと向かった。
ワープゲートの前にはミラグロスさんが立っており、まだお兄さんはワープしてきていない様子。
ただ、何の変哲もなかったワープゲートが光り輝いていることからも、今すぐにでもワープしてきそうな気配がある。
「紫色で怪しさ満点ですね」
「ミラグロスさん、お兄さんは強い方なんですか?」
「うん。強いには強いと思う。でも、ヤト様に比べたらゴミ以下だから安心して」
自分のお兄さんをゴミ呼ばわりしたことに引っかかりつつも、ヤトさんが強いということへの驚きのほうが大きい。
ヤトさん流のカレーを評価されて大喜びしているのが、私の知るヤトさんだからね。
「……来る。佐藤は少し下がってて」
ワープゲートはさらに強く発光した後、風を吹き上げた。
そして光が収まると……ワープゲートの上には1人の魔族が立っていた。
ミラグロスさんと似た青い肌だが、高身長で筋肉の量も凄まじい。
そして、なんといっても頭から生えている角が、禍々しすぎる。
「ミラグロス。手紙を読んで来たがァ……後ろにいるのがここの主なのかァ?」
「うん。知ってると思うけど、佐藤っていう」
「佐藤と言います。ミラグロスさんのお兄さんですよね? よろしくお願いいたします」
「随分と弱そうな人間だなァ。魔王軍を抜けて、こんなのについていって本当に大丈夫なのかァ? 例のドラゴンも大したことなかったら、俺は無理やりにでも魔王軍に戻るぜェ?」
「勝手にして。それより、佐藤に挨拶を返して。失礼を働いたら……私が許さない」
「……チッ。俺の名前はゼパウル・アバスカルだ」
「ゼパウルさんですね。よろしくお願いします」
不服そうながらも、自己紹介をしてくれたゼパウルさん。
説得したと言っていたけれど、この様子を見る限りでは、まったく納得していないように見えてしまう。
シーラさんは言うまでもなく、ライムとマッシュもピリついているように見えるからなぁ。
私はとにかく、荒れないようにだけ気をつけて、ここからの立ち回りを考えよう。
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