第223話 結果発表
調理がスタートし、3人とも落ち着いた良い立ち上がり。
慌てふためいていないヤトさんは珍しく、段取りよく料理をしている。
そんな3人の中で一番変わっているのはベルベットさんで、どうやらスイーツを作っているようだ。
ここまで甘いものを作った人はいなかったが、ベルベットさんが初めてスイーツ作りに挑んでいる。
スイーツを30分で作るのは難しいが、何かしら算段があっての行動なのだろう。
一方のローゼさんは、見たことのない植物を使ってソースのようなものを作っている。
そんな中、一番最初に料理を完成させたのはヤトさんだった。
これには私も驚いてしまった。
「ヤトさんが一番乗りですか!」
「わーはっは! 密かに練習していたからのう! 佐藤、早く食べるのじゃ!」
私たちの目の前に置かれたのは、黒いドロドロの液体がかかった料理。
もしかして……カレーを再現したのかな?
「ヤトさん、これはカレーですか?」
「うぬ! 佐藤のカレーには遠く及ばぬが、わらわなりに頑張って近づけたのじゃ!」
カレーっぽいスパイスの香りもするが、実際に黒いドロドロの液体を目の当たりにすると、口に入れるのが少し怖い。
異世界の方にカレーを振る舞うというのはこういうことなのかと、少し申し訳なくなりつつも、意を決してヤトさん流カレーを口に入れた。
……おお? 思っていたよりも悪くない。
苦味がかなり強いが、辛みも強くしていることでカレーらしさが出ている。
ご飯の代用として使われた穀物はあまり美味しくないが、これは仕方がない。
もしシーラさんが作ったパイをヤトさんが再現できていたら、さらに高評価をつけていただろう。
とんでもないものを想像していただけに、美味しい料理が出てきたことへの驚きが強い。
完成も一番早かったし、事前に準備をしてくれていたのだと思うと、微笑ましくなってしまう。
ヤトさんの力作カレーを味わい終えたところで、次に料理を持ってきたのはベルベットさん。
スイーツだから時間がかかると予想していたが、ホットケーキに近いスイーツだったため、すぐに作ることができたようだ。
そのパンケーキのような生地の上には、ホイップクリームと果物、さらにたっぷりの蜜がかけられている。
恐らくクイーンニードルの蜜で、甘党の私にとっては非常に楽しみな一品。
全てを一口大にまとめ、フォークとナイフを使って口に運んだ。
――美味しい!
生地は少し硬く、クリームには若干の牛臭さがあるが、甘くてとても美味しいスイーツ。
クイーンニードルの蜜が美味しさの8割を占めている気もするが、不味くはなく、しっかりと美味しさを引き立てており、かなりクオリティの高い一品だ。
シーラさんのスイーツとは別のベクトルなので、採点は非常に難しいが……これは高得点の予感がする。
まさかベルベットさんがここまで美味しいものを作るとは思っていなかった。
そして、最後に料理を出したのはローゼさん。
デザートの後に再び食事という、あまり経験のない順番だが、完成順なので仕方がない。
そんなローゼさんが作ったのは、先ほどから作っていた緑色のソースが美しくかかったステーキ。
良いお肉のようで、気味の悪かった緑色のソースもステーキにかかるとお洒落に見えてくる。
高級フレンチレストランで出てきそうな見た目の料理に、食べる前から期待が高まる。
早速ナイフとフォークで切り分け、口の中へ運んだ。
――これまた美味しい。
何の肉かは分からないが、非常に臭みが少ない。
鶏のささみのステーキのような食感で、ややパサつきは気になるが、普通に美味しいお肉だ。
さらにローゼさん特製の緑色のソースが抜群に合っていて、絶妙な酸味がさっぱりとした仕上がりを演出している。
王女様組はあまり期待していなかったが、ヤトさんも含めて非常にハイレベルなグループだった。
高得点も狙える料理で、ノーマンさんとヤコブさんが何点をつけるのか楽しみだ。
「それでは最後の組の採点を発表します。ヤトさん67点。ベルベットさん94点。ミラグロスさん95点」
「ヤトさん77点。ベルベット様98点。ローゼさん97点」
「ヤト様80点。ベルベットさん100点。ローゼさん98点っす!」
「全員の採点が出揃いました。第1回料理大会の優勝者は……ベルベットさんです。おめでとうございます」
「えっ!? 嘘! 私が優勝したの? なんか接戦すぎて分からないんだけど!」
私は暗算ですぐに計算し結果を発表したのだが、ベルベットさんはまだ戸惑っている様子。
シーラさん291点、ベルベットさん292点、ローゼさん290点と、超がつく接戦だったため、すぐに実感が湧かないらしい。
そのため、みんなが指を折りながら、本当にベルベットさんが優勝なのかを黙々と計算していた。
「やったのじゃー! わらわが高い点を取ったのじゃー!」
優勝争いには絡まなかったが、ヤトさんが優勝者以上に喜ぶという不思議な状況が生まれている。
優勝にはまだ遠い点数ではあるが、本当に嬉しそうで、見ている私も嬉しくなってしまう。
そんなヤトさんを見ながら微笑んでいると、どうやら皆の計算も終わったようだ。
僅差で敗れたシーラさんとローゼさんは悔しそうにしており、本当に優勝だと分かったベルベットさんは満面の笑みで跳び跳ねている。
「本当に私が優勝してた! 忖度なしの大会で優勝したの初めてだから、なんだか予想以上に嬉しいかも!」
ベルベットさんとヤトさんは手を取り合って喜び、喜びを分かち合っている。
この光景を見ることができただけでも、料理大会を開催して本当に良かった。
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