第220話 料理大会
料理大会当日。
今回の参加者は、ヤトさん、ローゼさん、ベルベットさん、ルーアさん、ヘレナさん、ポーシャさん、ジョエル君、シーラさんの8人に加え……
急遽参加が決まったミラグロスさんを交えて、9人で争ってもらうことになった。
人数が半端なため、もう1人参加者を増やしたかったのだけれど、ロイスさんとブリタニーさんは料理ができないというレベルを超えているらしく、断固として参加を拒否された。
唯一参加を表明してくれていたロッゾさんは、前日にお酒を飲みすぎて二日酔いでダウンしてしまい、予定通り9人で大会を行うことになった。
ルールは非常にシンプルで、30分という制限時間内にどれだけ美味しい料理を作れるかの勝負である。
本当は食材も指定して、当日に発表する形式も考えたのだけれど、ノーマンさんに「やめた方がいい」と止められてしまった。
そのため今回は、“美味しい料理を作る”というだけのシンプルなルールにしている。
順位の決め方は、私とノーマンさん、ヤコブさんの3人が100点満点で採点し、その合計点で競ってもらう。
作る品数には制限を設けていないため、時間内に可能であればフルコースを作ることもできる。
30分という制限時間を考えれば、頑張っても2品が限界だと思うけど。
そして優勝者には、私、ノーマンさん、ヤコブさんの3人からそれぞれ“最高の料理”を一品ずつ振る舞う予定。
NPに糸目はつけないため、本当に最高の料理が食べられるはずだ。
「――以上がルールになります。参加者の方で何か不明な点はありますか?」
「ない! いつでも作ることができるのじゃ!」
「最高の料理を食べるために最高の料理を作る。……面白いルールですね」
「……頑張ります」
それぞれに気合いが入っているようで、準備は万端といった様子。
それでは早速、大会を開始しよう。
3人ずつ調理してもらう予定で、まずはくじ引きで選ばれたジョエル君、シーラさん、ポーシャさんの3人からスタート。
優勝候補のシーラさんが、いきなりの登場だ。
「一番最初の組ですか……。様子を窺いたかったのですが、こればかりは仕方ありませんね。佐藤さんの料理を食べるためにも、ここは優勝しかありません」
「うぅ……最初は緊張します! 男が僕だけだったのも緊張する要因の1つだったのに、最初なんてツイてないですよ!」
「ちゃんと作れば大丈夫ですよ。お互いに頑張りましょう」
一人、張り切っているシーラさんと、萎えているジョエル君。
そして、そんなジョエル君をポーシャさんが慰めているという構図。
1番最初は評価の基準が難しいため、審査員の立場からすると点数を伸ばしにくい。
しかし、お腹はすごく空いているからね。
これから9人分の料理を食べなければならないことを考えると、一般的には賞レースで1番手は不利とされるけれど、今回の大会に限って言えば、最初の組が不利とは思わない。
“空腹は最高のスパイス”という言葉もあるわけだし、全力を尽くして頑張ってほしいところだ。
私がそんなことを考えている間に、調理が始まった。
冷静に、そして淡々と食材の準備を進めるシーラさんとポーシャさん。
その2人の横で、あたふたしているジョエル君。
事前のインタビューでは“料理は得意”と言っていたのだけれど、この様子を見ると、あまり期待はできない。
ジョエル君にも頑張ってもらいたいんだけどね。
時間の経過とともに料理が仕上がっていく中、最初に完成させたのはポーシャさんだった。
まだ20分も経っていないのに、私たちの前に料理が並べられた。
食べる順番は、もちろん完成させた順。
採点は3人の料理をすべて食べてから行うけれど、ファーストインプレッションは大きいと思うので、ポーシャさんが若干有利になったと言える。
そんなポーシャさんが作ったのは、サンドイッチとチーズオムレツのような料理。
使える食材はこの世界のものに限定されているのだけれど、見た目はとても美味しそう。
期待しながら、まずはサンドイッチから口に運ぶ。
……うん。パンは固く、野菜には独特の臭みがある。
オリジナルソースで多少は緩和されているけれど、まさにこの世界の食材といった感じ。
美味しくはないけれど、不味くもない。
評価としては微妙に思えるかもしれないけれど、この世界の食材であることを考えれば高評価だと私は思う。
オムレツのほうは、チーズの香りがあまりにも独特で、個人的にはかなりマイナス。
ヤギのチーズを3倍くらい臭くしたような感じで、私は苦手なタイプの料理だった。
ただ、臭いチーズが好きな人にとっては、たまらなく好まれる料理なんだろう。
我ながら、かなり辛口な評価だとは思うけれど、この世界の食材であることを前提とすれば、この評価がデフォルトになる。
どれだけ美味しく作れるかよりも、どれだけ不味く作らないかが重要になる。
ポーシャさんの料理を食べて、私はそう思ったのだった。
※作者からのお願い
一日一話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ
つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ





