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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第218話 疑い役


 料理大会、仮装大会のルールが決まり、準備を進めること二週間。

 大会本番が明日に迫る中、来訪者がやってきた。


「ミラグロスさん!? お久しぶりです! 佐藤です!」


 その来訪者とはミラグロスさんであり、久しぶりの再会に思わずテンションが上がってしまう。

 一方のミラグロスさんは、かなり疲弊しているようで、テンションの高い私とは対照的にロートーンだった。


「ん。久しぶり。いきなりで悪いんだけど、水をもらってもいい? 疲れちゃった」

「もちろんです。すぐに持ってきますね」


 ミラグロスさんは安堵の表情を見せ、その場に座り込んだ。

 私はすぐに水を汲んで、ミラグロスさんに手渡す。


「……んぐ、ぷはっ。生き返った。ありがとう」

「お礼なんていりません。今回も相当お疲れのようですね」

「警戒がすごいから、本当に大変。一度来たことがあっても、全然慣れることがない」

「毎回、ミラグロスさんにだけ危険な道のりを通らせてしまって、すみません。こちらからも行ければいいんですが……」

「無理なのは分かってる。佐藤が魔王の領土に来たら、すぐに死んじゃうし」

「やっぱり魔王の領土は危険なんですね。とにかく、無事にまた会えてよかったです」

「私も、また会えてよかった」


 私はミラグロスさんに手を差し出すと、彼女は少し照れながらも握り返してくれた。

 見た目こそ人とは異なる部分が多いけれど、握った手は人間そのもので、少なくとも私とミラグロスさんは仲良くできるという確信があった。


「喉が渇いているということは、お腹も空いていますよね? まずはご飯を用意します。無粋な質問ですが、何が食べたいですか?」

「やった。卵がゆが食べたい!」

「分かりました。すぐに準備しますね」


 分かってはいたけれど、ミラグロスさんは卵がゆを所望した。

 白米と卵だけで作れる、非常に安価で手軽な料理を好んでくれている。


 思い出補正が強いんじゃないかな、と思わなくもないけれど、好きな料理なら作ってあげたい。

 ということで、さっそく卵がゆを作りに別荘へ戻ろうとしたところで、呼び止められた。


「ごめん。ご飯の前に一つ、やりたいことがある。……いい?」

「やりたいことですか? 何をやりたいんでしょうか?」

「ワープゲートをここに作りたい。私の住んでいる街とこの場所とを自由に行き来できるゲート」


 へえ、ワープゲートなんてあるんだ。

 私たちがこの世界に転移してきたときに使われたものと、似た原理なのだろうか?


「そんな便利なものがあるんですね。もちろん構いませ――」


 二つ返事で了承しかけたが、言い切る前にシーラさんの顔が脳裏に浮かんだ。

 私は問題ないと思っていても、勝手に魔王の領土とこちらを結ぶゲートを作ったとなれば、確実に怒られてしまう。

 ミラグロスさんを疑っているわけではないけれど、シーラさんには嫌われたくない。


「すみません。シーラさんに確認してもいいでしょうか? 勝手に作ったら怒られてしまいますので」

「もちろん。私も無理に作るつもりはないから」


 そう伝えてから、私は急いでシーラさんを呼びに行った。

 事情を軽く説明しながら、シーラさんと二人でミラグロスさんのもとへ戻る。


「ミラグロスさん、お久しぶりです。いきなりですが、私はワープゲートの設置には懐疑的です。佐藤さんはお人好しなので疑っていないと思いますが、そのゲートから魔王軍が大量にやってくる可能性もあるんですよね?」

「シーラ、久しぶり。ないよ。私たちは魔王軍に加担しないことに決めたから」

「その言葉の真偽が分からないんです。ミラグロスさんが私たちを騙している可能性がありますので」

「私が佐藤とシーラを騙す? え? なんで?」


 本当に分からないという表情で、小首を傾げているミラグロスさん。

 この様子を見ても、騙しているようには到底見えなかった。


「なんでと聞かれましても……。騙してゲートを設置することで、魔王軍に有利になるからです」

「もし魔王軍についたとしても、恩人を裏切るようなことはしない。それに、ワープゲートは人一人をワープさせるのにも大量の魔力が必要になる。大群を一気にワープさせるのは物理的に不可能」

「むむむ……。ワープゲートの仕組みが分からないので、その言葉が本当かどうか……」

「シーラさん、ミラグロスさんを信じませんか? 嘘をついているとは到底思えません。それに、【勇者召喚】と似た原理と考えれば、整合性も取れます」

「…………分かってますよ! 私も最初の反応で、嘘はついてないなぁと思いましたけど、佐藤さんがほいほい信じちゃうので、形式的に私が疑いの役を担っているんです!」


 シーラさんは頬をぷくっと膨らませながら、そう声を上げた。

 私が人を信じすぎるために、シーラさんに損な役回りをさせてしまっている。

 本当に申し訳ない。


「シーラさん、すみません。これからは私も、少しは疑うようにします」

「そんなことはしなくていいです! 佐藤さんはお人好しでこそ佐藤さんなので! ということで、ミラグロスさん。ワープゲートを設置してもいいですよ」

「……え? 設置していいの? 話の流れが全然分からないんだけど」

「分からなくていいんです。私自身もよく分かっていないので!」

「そう? なら、お言葉に甘えて設置させてもらうね」


 前々から甘えすぎているなと思っていたし、今回の件で少しは変わろうと思えた。

 だけど、シーラさんから“変わらなくていい”と言われてしまった。


 どうするのが正解か分からないけれど、変わらなくていいなら私は私を貫かせてもらおう。

 シーラさんにはこれからも迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、その分、楽しいことで返していく。

 そう心の中で誓いながら、私はミラグロスさんのワープゲート設置作業を見守ったのだった。


※作者からのお願い


一日一話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


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