第20話 来訪
王都から戻ってきて、あっという間に三日が経過した。
当たり前の日常に戻るのも早く、畑には新しい作物が育っていて活気に満ち溢れている。
ちなみに今育てているのは、ブラウンターンという野菜。
クラックドラフでも良かったんだけど、せっかくだし気分を変えるがてら新しい野菜の苗を植えることにした。
入手できるNPを考えつつ、どの野菜を育てるのが一番良いかを決めていきたいと思っている。
農園を作るにしても、魔物の牧場を作るにしても、異世界の宿泊施設を作るにしても、今はNPが足らなすぎるからな。
改めての確認だけど、現在の手持ちNPは4538NP。
一時は所持NPが6000を越えていたけど、日本の食材を買ったり、王女様へのプレゼント用の漫画を購入したせいで結構減ってしまった。
パーっと使う予定だったのだけど、三つの目標を立てたからには、NPを増やすために使いたい。
そのため、NPの使い方には三日間どう使うのかずっと悩んでいて、未だに結論は出せていない状況。
候補自体は三つあって、一つ目は魔物を購入して人手を増やすこと。
二つ目は農地の質の強化を行い、野菜一つ当たりの値段アップを狙うこと。
三つ目はNPを稼ぐことのできる野菜が増えることを願って、購入できる野菜の苗を増やすこと。
この中で一番堅実なのは、人手を増やすこと。
農地を広げたのは良いものの、手が回っていない部分がある。
それにスキルの畑以外にも畑を作って、食べたり売る用の野菜も育てたい。
その点を考えると、人手になる魔物を購入して働いて貰いたいのだけど……如何せん、人手になり得る魔物が分からない。
ゴブリン、オーク、オーガといった人形の魔物は流石に知っているけど、それらの魔物だって働いてくれるかは未知。
そういうことを考えると、魔物の購入もギャンブル要素がある。
二つ目の農地の質を強化させる――は更にギャンブル要素が強く、農地の質を上げたところで買い取ってくれるNPの値段が変わらなければ無意味となる。
単純に味や大きさが大きくなるだけって可能性の方が大きいと思うしね。
三つ目も言わずもがなで、NP効率の高い野菜の苗が売られるか分からない。
売却額は変わらないけど、単純に成長するのが遅い野菜――なんていうのが追加されるだけの可能性がある。
結局、今日も結論を出せないまま頭を抱えていると、先に別荘に戻っていたはずのシーラさんが走ってこっちに向かってきた。
シーラさんが焦っているところを見るのは初めてということもあり、話を聞く前から緊張してしまう。
「シーラさん、そんなに慌ててどうしたのですか?」
「じ、実は――王女様がやってきたのです! 佐藤さんに会いたいと言っていまして、すぐに来てくれますか?」
「えっ? 王女様がこの別荘にですか?」
「はい! それもお一人でして、ここに来た理由は佐藤さんにだけ話したい、と」
王女様の来訪は想像すらしていなかったため流石に驚いたけど、危険が迫っているとかではなくて良かった。
……いや、何か王女様の逆鱗に触れてしまった可能性もあるのか?
そうなってくると再び怖くなってきたけど、とにかく話を聞いてみないと分からない。
別荘の外で待機するシーラさんに頭を下げて見送られ、私は一人で別荘の中に入った。
「……佐藤、呼び出して悪かったわね」
「いえいえ、こちらこそわざわざ来てくださりありがとうございます。それで……今日はどんな用事で訪ねてきたのでしょうか?」
もう少し雑談を挟むべきなのだろうけど、理由が気になりすぎて雑談のネタすら思い浮かばない。
そんな私の問いに対し、王女様は可愛らしくモジモジし始めると、高級そうな箱から――私がプレゼントした漫画を取り出した。
「…………貰った本、面白かったわ。続きはないのかしら」
消えてしまいそうなほどか細い声で、そう質問してきた王女様。
……なるほど。漫画の続きが気になって、お忍びでやってきたのか。
「申し訳ありませんが、続きは手元にはないですね」
「――え"っ!」
私の返答に対し、王女様はこの世の終わりかとも思うほどの絶望した表情を見せた。
そんな表情に私は思わず笑いそうになってしまったが、何とか堪えて話を続ける。
「手元にはありませんが、続き自体は存在しています」
「それは本当!? それは……今どこにあるの?」
「説明が難しいのですが、私のスキルで手に入れることができます」
「な、なら、続きを売って欲しいわ!」
先ほどまでの絶望的な表情から一転、花が咲くような笑顔を見せた。
愛想がなく、淡々としたイメージしかなかったんだけど、好きなものには感情が出てしまう人なのかもしれない。
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