第212話 強烈な臭い
新しい作物の売却額についてはある程度わかったため、次は味について調べていくことにした。
一番気になるのは、もちろんアーティパッション。
ブルガールドも気になるといえば気になるけど、あの臭いからして、どれだけ美味しくても食べる頻度は限られてくる。
日本ではニンニクですら気を遣う時代であり、エチケットの面から考えても、ブルガールドの臭いを気軽に口から発することはできない。
臭いという強烈なデメリットがあるため、ブルガールドはハードルが高い。そんな中、私は各種1個ずつ手に持ち、ノーマンさんのところへ持っていった。
まだ時間が早いということもあり、ノーマンさんは台所にはおらず、リビングで漫画を読んでいた。
休憩しているところ悪いけど、作物を渡してしまいたい。
「ノーマンさん、休憩中のところすみません。少しよろしいですか?」
「ああ、佐藤さんか。もちろん大丈夫だ。……って、すごい臭いだな。もしかして、ブルガールドか?」
「はい、そうです。ブルガールドの料理も作れますか?」
「作ったことはないが、作れると思うぞ。美味しいかはわからないけどな」
ノーマンさんでも美味しく作れない可能性があるのか。
まあ、市場に出回らない野菜だもんね。
「そうなんですね。あまり期待せずに待っています」
「ただ、美味しい可能性は十分に秘めていると思う。市場に出回らないのは、確実にこの臭いが原因だからな。他の野菜が駄目になってしまうから取り扱わないだけで、ブルガールドは美味しい可能性がある」
「美味しかったら、この臭いでも許せるんですけど……それでは、少しだけ期待していますね」
「ああ、全力を尽くす」
ノーマンさんはそう言うと、漫画を棚に戻しに行き、早速調理を始めてくれた。
まずはメジャーなアイスアックから調理を始め、ものの数分で料理を完成させてみせた。
「これはアイスアックの濃汁だ。水に数滴落として飲むだけでも、眠気覚ましとして使えると思うぞ。料理と呼べるかは微妙だが、余計な雑味は取り除いてある」
「いただいてみますね」
私は言われた通り、コップの水にアイスアックの濃汁を数滴垂らし、飲んでみることにした。
――おお! これはかなりいいかもしれない。
一切期待していなかったけど、目が覚めるようなスースー感が突き抜けている。
口の中や喉はもちろん、目や鼻、耳までもスースーしており、冴え渡るような爽快感。
雑味を取り除いたと言っていた通り、飲みにくいとかはなく、冷たく感じる水といった印象。
美味しいってわけでは決してないけど、アイスアックの濃汁は非常に使えそう。
「かなり良いですね。顔がスースーします」
「気に入ってくれて良かった。眠気覚ましとして、置いておいたらいいと思う。……と、ブルガールドの料理もできたぞ」
私がアイスアックに感動している間に、どうやらブルガールドの料理も完成したようだ。
にんにくのオイル焼きのような感じで、ブルガールドをオイルで焼いた料理。
火を通した影響か、臭いはかなり消えているけど……まだ若干臭う。
私はなるべく臭いを嗅がないようにして、ブルガールドを口の中に入れた。
「――不味いです!」
料理を作ってくれた人の前で言うのはどうかとも思ったけど、そんなことを考える前に、言葉が口から出てしまった。
強烈な苦味の塊であり、苦味に驚いた勢いで臭いを嗅いでしまい、口の中が酷いことになっている。
「はっはっは! 不味かったか。賛否ある食材だったから、美味い可能性もあると思ったんだけどな」
「すみませんが、賛の人が理解できません」
「俺も1つ食べさせてもらう。……はっはっは! これは確かに不味いな」
ノーマンさんも私と同じ意見のようだが、なぜか非常に楽しそうにしている。
物珍しい食材だから、テンションが上がっているようだ。
「ブルガールドはなしですね。苦味が癖になる人もいるのかもしれませんが、臭いでアウトです」
「同意見だ。良い調理法も思いつかない。となると、アーティパッションにかかっているな。これはちゃんと味見をしながら作るから、佐藤さんはリビングで待っていてくれ」
楽しそうな表情から一転、真剣な目つきで腕まくりをしたノーマンさん。
私は本気のノーマンさんに期待しつつ、リビングで待たせてもらうことにした。
それから待つこと約30分。
料理が完成したようで、綺麗に盛り付けられた料理を持って、ノーマンさんが台所からやってきた。
「佐藤さん、けっこううまくいったぞ。ぜひ食べてみてくれ」
「見た目から美味しそうですもん。アーティパッションはこのソースですか?」
「ああ。糖度の高い野菜だったから、スイーツのソースとして使ってみた。クイードの蜜とモモの牛乳で作ったミルクプリンに、アーティパッションのソースがかかっている」
「それは美味しそうすぎます! いただきますね」
ミルクプリンだけで美味しそうだが、今回のメインはあくまでアーティパッション。
しっかりとソースを絡めながら、私はミルクプリンを口に運んだ。
――これは美味しい!
日本の料理に匹敵する味であり、甘いミルクプリンと酸味の効いたアーティパッションのソースが絶妙にマッチしている。
味的にはマンゴーを酸っぱくしたような感じであり、多分だけど、そのまま食べてもそれなりに美味しいと思う。
アーティパッションの潜在能力の高さに驚くが、やはりなんといってもミルクプリンの美味しさも際立っている。
モモの牛乳は毎朝飲んでいたから美味しいことは知っていたが、濃厚なため、プリンにすると格別に美味しい。
クイードの蜜の甘さも素晴らしく、高いNPを消費して従魔にして良かったと思える逸品。
感激する部分が多く、すごく幸せな気分。
私はアーティパッションのソースがかかったミルクプリンをゆっくり味わいながら食べ、幸せなひとときを堪能したのだった。
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