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第209話 黄金酒


 秋の作物が順調に実り始め、穏やかな日々を送っていたある日。

 久しぶりに蝙蝠の魔物が手紙を運んできた。


 手紙の送り主は、もちろんミラグロスさん。

 1ヶ月ほど手紙が届かず心配していたけれど、便りが来てよかった。


 手紙を届けてくれた蝙蝠の魔物に、小さな魔力塊を与えつつ、早速内容を確認する。

 気になる手紙の内容は、「魔王軍参加派だった兄と姉を、無事に説得できた」というものだった。


 ミラグロスさんが兄弟とかなり揉めていたことは知っていたけれど、ちゃんと説得できたみたい。

 そして、私たちと交流関係を結びたいらしく、近々また遊びに行ってもいいか、ということが書かれていた。


 シーラさんは警戒するだろうけど、ミラグロスさんなら問題ない。

 ということで、私は了承の旨をしたため、蝙蝠の魔物に手紙を託した。


 いつ訪ねてくるかは分からないけれど、近いうちにまたミラグロスさんがやって来る。

 私たちとの交流があったからこそ、魔王軍への参加を見送ってくれたのだ。


 その気持ちに応えるためにも、いろいろな知識や技術を教えたいし、美味しい料理も振る舞いたい。

 いつ訪ねてきても歓迎できるように、NPをしっかり貯めておこう。


 私の書いた手紙を持って、パタパタと飛び去っていく蝙蝠の魔物の背中を見送っていると……

 背後から声をかけられた。


「佐藤さん、ちょっといいかのう」

「ジョルジュさん! もちろん大丈夫ですが……なんだかお元気そうですね」


 声をかけてきたのは、ジョルジュさんだった。

 久しぶりに会ったけれど、以前よりもずっと元気そうに見える。


「そりゃそうじゃろ。今が人生で一番充実していると言っても過言ではないからのう。毎日漲っておるわい」

「それはよかったです。それで、今日はどうかなされたんですか? また必要なものができたとかですかね?」

「いや、違う。佐藤さんに報告しに来たんじゃ。例の果実酒が完成したという報告をな!」


 ふぉっふぉっふぉ、と高笑いする様子から、至極の逸品が完成したのが伝わってくる。

 最近姿を見なかったのは、籠もって酒造りに励んでいたからかもしれない。

 そういえば、ジョルジュさんとはお風呂でも会わなかったしね。


「本当ですか? ぜひ、飲ませてください」

「もちろんじゃ。ロッゾとシッドも呼んでおるから、佐藤さんも来てくれ」

「行かせていただきます」


 まだ農作業の途中だけど、ここまでテンションの高いジョルジュさんを前にして、「後で」とは言えない。

 そもそも私の要望で作ってもらったお酒だしね。


 ジョルジュさんの家に入ると、目を爛々と輝かせてソワソワしているロッゾさんとシッドさんの姿があった。

 酒を飲みたくて仕方がない様子で、思わず笑ってしまう。


「佐藤さん、やっと来たか。待ち時間が永遠に感じたぜ」

「こっそり飲んでしまおうか迷ったくらいだぞ! ジョル爺、早く飲ませてくれ!」

「そう焦るでない。今から飲ませるからのう」


 私はロッゾさんとシッドさんの向かいに座り、ジョルジュさんがお酒を持ってくるのを待つ。

 しばらくして、ジョルジュさんが運んできたのは黄金色の果実酒だった。


「うっひゃー! 見た目からして美味そうだな!」

「綺麗な金色の酒。シュワシュワしているのもたまらないな」

「味が悪くても、この見た目だけで人気になりそうな気がしますね」

「安心せい。味も格別……というか、味だけを追求した酒じゃからな」


 キンキンに冷えたグラスに注がれた、シュワシュワの果実酒。

 お酒が特別好きというわけではない私でも、思わず生唾を飲み込んでしまうほど美味しそう。


「の、飲んでもいいか!?」

「もちろんじゃ。率直な感想を頼むぞい」


 私たちは顔を見合わせて頷き、黄金色の果実酒を口に含んだ。

 まず飛び込んできたのは、豊潤すぎる柑橘系の香り。


 その香りにうっとりしながら、次に感じたのは爽やかな果実の美味しさと、飲みやすさを後押しする自然な甘み。

 炭酸がなければ甘ったるく感じる人もいるかもしれないけど、炭酸のおかげで後味はスッキリしている。


「うんまーい! なんじゃこの酒!」

「……すごいな。今までいろいろな高級酒を飲んできたが、この果実酒は群を抜いて美味い」

「本当に美味しいですね! ジュースとしても飲めてしまうほどです!」

「ふぉっふぉっふぉ! そうじゃろう! 佐藤さん、この果実酒はこの村の特産品になるかのう?」

「もちろんです! 全力でサポートさせていただきますので、大量生産を目指しましょう!」

「俺も手伝うぜ! この酒を大量に飲めるなら、なんでもやってやる!」

「俺もだ。何でも言ってくれ」


 酒好きの二人も協力を表明してくれたし、この黄金色の果実酒は確実に特産品になるだろう。

 作り上げてくれたジョルジュさんに感謝しつつ、私は果実酒の大量生産を目指して動き出すことを決めたのだった。



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