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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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閑話 剣聖フリース その2


 牙は抜けてしまっているかもしれないけど、ある程度戦えるのであれば十分だからねえ。

 ちょっと話をしてから、手合わせをお願いしようか。


「フリースも変わっていなくて良かったぜ。今もまだ冒険者をやってるのか?」

「いいや。剣の道を極めたくてね、冒険者は随分と昔に引退したよ」

「まぁその節はずっとあったもんな。それで今は、『剣聖』になっちまうんだから。お前は凄いよ」

「グティは随分と様変わりしたようだねえ。鬼人と恐れられていたのが、今では後輩に指導とは……老いるのは怖いねえ」

「いつまでも尖ってはいられないしな。それに、この歳になって面白い経験をさせてもらっている。当時を知っているお前からしたら、今の俺は退屈しているようにも見えるかもしれないが、嘘偽りなく今が一番楽しいぜ」


 そう語ったグティの目は真っ直ぐ向いており、確かに嘘をついているようには見えなかった。

 嘘じゃないからこそ、当時は私よりも強かったグティが、戦闘以外に未来を見出したのは少し寂しくなってしまうねえ。


「そうなのかい。良かったという気持ちよりも、少し寂しくもなるよ。グティならば、私と同じく剣の道を極められると思っていたからねえ」

「はっ! 剣の道なんか極めなくとも強くはなれるだろう。少なくとも、俺はお前と切磋琢磨していた時よりも今の方が強いし、剣を持たずとも強い者も知っている」

「当時よりも強い? それは面白い冗談だねえ。確かに楽しそうではあるけど、残念ながら私には老いた軍人にしか見えないよ」

「はっはっは! ――今ここで試してみるか?」

「『剣聖』に挑もうとするとは、本当に耄碌してしまったのかねえ?」

「やりゃ分かるだろ。――おい、素振りはもういい! 少し外を走ってこい!」


 グティは先ほどまで指導していた後輩達を追い払い、中庭を使えるようにした。

 血が滾っていたし、グティとは一戦交えるつもりだったけど……本気で戦ってしまいそうで少し怖い。

 くれぐれも殺さないように、手加減をしないといけないのにねえ。


「好きな木剣を選んでいいぞ」

「なら……この剣を使わせてもらうよ」

「了解。俺はこの剣でいく」


 互いに木剣を握り、一定の距離を取る。

 約二十年ぶりの対峙だけど、やはりグティは迫力があるねえ。


「隙がないねえ。この二十年間で色々な人と仕合をしてきたけど、紛れもなく一級品の圧だよ」

「試合前から褒めてんじゃねぇ。負けんのはお前かもしれないぜ?」

「そうだったら……嬉しいけどねえ」

「まぁいいや。やれば分かるしな。コインを投げるから、そのコインが地面に落ちたら試合開始。有効打3発か、戦闘続行不可能の時点で負けでいいか?」

「ああ。それで大丈夫だよ」


 私が許可を出したと同時に、グティはコインを上に弾き飛ばした。

 お互いに剣を構え、いつでも動ける体勢を取る。


 そして、高く舞い上がったコインが地面に着いたと同時に――私は一気に仕留めに向かった。

 蹴り出した地面が抉れ、構えているグティが反応できない速度で斬りにかかる。


「――【神閃】」


 数十年かけて磨き上げてきた、神にも届きうる最速の一太刀。

 握っているのは木剣ではあるけど、まともに斬れば絶命させる一撃。


 ただ、相手はグティだから手加減はできないねえ。

 構えたまま、まだ動けていないグティの腹部目掛け、私は【神閃】をぶち当てた。


 戦闘不能で勝負あり。

 私の耳には、背後でグティが倒れる音が聞こえた。

 ……はずだったのだけど。


「甘いな。閃光での目潰しに変形までしないと、俺を初撃で仕留めるなんて無理だぜ?」


 斬り捨てたはずが、完璧に受け流していたようで、無傷のグティが背後から襲いかかってきた。

 神をも殺す一撃を受け流された意味が分からない。

 頭が真っ白になっている私は完全に冷静さを失い、あっさりと有効打3発を浴びて敗戦してしまった。


「――ほらな。俺のほうが強い」

「い、意味が分からない! なぜ最初の一撃を止められたッ!」

「はっは! 口調がおかしくなってるぞ。まぁいいや。教えてやる。まず俺の目が良くなったこと。もう一つは、その【神閃】とやらよりも厄介な技の持ち主と戦ったばかりということ」

「目が良くなった? 【神閃】よりも厄介な技の持ち主? 眉唾としか思えないねえ!」

「フリース。お前が負けた時点で、俺の言葉が嘘ではない証明はできているだろ。――へっへっへ。あんだけイキって負けたの恥ずかしいか?」


 グティはニヤニヤしながらそう言ってきた。

 私はその表情を見て、一気に体が熱くなってくるのを感じる。


「は、恥ずかしくはないよ。今のはたまたま油断しただけだからねえ」

「ほー、剣聖様が油断ねぇ。なら、もう一戦やるか?」

「グティから言い出してくれるとはありがたい。次こそは油断せず、完膚なきまでに叩き潰させてもらうよ」

「おう。いつでもかかってこい。さっきも言ったが俺の今の強さは全盛期だからな。搦手のない相手には負ける未来が見えない」

「二度と大きなことが言えないよう、剣聖の本気を見せる」


 今度こそ一縷の油断なく戦う。

 そう決めて行われた2戦目だったが、激戦ではありつつも2戦目もまさかの敗戦。


 間髪入れずに行われた3戦目すらも私は負け、牙の抜けた過去の人間と侮っていたグティに完全敗北を期すこととなった。

 悔しさ、虚しさ、喪失感、様々な感情が押し寄せるが、そんな感情よりも一番気になるのは、グティがどうやってこの強さを得ることができたのか。


 悔しすぎる敗戦であると同時に、これは私が更なる高みを目指せる好機でもある。

 私は恥を忍び、グティに何が起こったのかを洗いざらい聞き出すことを決意したのだった。



ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました!

閑話 剣聖フリース その2 にて第4章が終わりました。


そして、皆様に作者からお願いです。


現時点でかまいませんので、少しでもおもしろい、続きが気になる!


――そう思って頂けましたら!

この作品のフォローと、レビューから☆☆☆で評価していただけると嬉しいです!!


つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!


4章以降も、頑張って執筆していこうというモチベ向上につながります!!

お手数お掛け致しますが、よろしくお願い致します<(_ _)>ペコ

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