第200話 怪しい人
縁日に流しそうめん、スイカ割りに花火。
夏のイベントは一通りこなし、後は涼しくなるのを待つだけとなった。
本当はプールを作ってみんなで遊びたい……もとい水着を拝みたい気持ちはあるんだけど、プールを作るのはそう簡単なことではない。
ロッゾさんとシッドさんにも相談したけど、完成までは途方もない時間と労力がかかるということで断念してしまった。
水着を見ることができるということを知り、やる気100%の2人の意見でもこれだったため、本当に実現には大きな力が必要だと思う。
もし凄い魔導士の方と知り合いになった際には、いつか相談して作ることを目標にしつつ、今はできることに注力するつもり。
ということで、私はせっせっと農業に勤しむ日々を過ごしていたんだけど……。
人が増えて活気が出てきたからか、色々な事件がよく起こる。
今回はまだ事件とは確定していないが、今日は朝から明らかに怪しい人物が遠くから見ているんだよなぁ。
汚いローブというか、ポンチョのようなものを羽織っており、大きな傘帽子のようなものを被っているため、顔はここからでは確認できない。
ファンタジーに出てきそうな旅人のような恰好だけど、実際に見ると怪しさしか感じない。
顔が見えないことから性別は認識できないけど、ガタイ的には男性のようには見えており、腰の辺りに武器のようなものが見えることからも危険人物にしか見えない。
触らぬ神に祟りなし。
向こうから接触してこないのであれば、帰ってくれるまで待とうと思っていたんだけど……怪しげな人物は未だに一向に帰る気配がない。
クロウは警戒して、近辺しか見回ることができていないようだし、シーラさんもいつ飛び出してもおかしくないくらい警戒度が高まっている様子。
これ以上あそこに留まられると、業務に支障が出かねないため、こちらから接触するしかないようだ。
「シーラさん。朝からあそこでこちらの様子を窺っている人に、こちらから話を聞きに行こうと思っています。ついてきてもらえますか?」
「もちろんです。私ももう捕まえにいこうと思っていたところでしたので、ちょうど良かったです!」
シーラさんは腕をブンブンと回しており、やる気満々といった感じ。
私は一戦交えるつもりはなく、穏便に話をつけるつもりなんだけど……この様子を見る限りだと、私がしっかりしないと駄目かもしれない。
そんな一抹の不安を抱えながら、私はシーラさんと一緒に怪しい人物の下に向かうことにした。
近づいてくる私達に逃げる素振りは見せず、不審者の割に堂々としている。
体格から男性と判断したのは間違っていなかったようで、私と同い年くらいのおじさんだった。
ただ、遠くからでは分かりづらかったけど、体が非常にガッチリしていて、汚い見た目に反して非常に強そう。
それに腰に差してあるのは、時代劇でよく見る刀。
こちらの世界は剣が主流ということもあり、刀は見たことがなかったけど、柄の感じからして刀で間違いないと思う。
「あの、朝からずっとそこで見ていましたが何かありましたか? 何か用事があるのであれば、こそこそとしていないで声を掛けに来たらいかがでしょうか?」
私が刀と雰囲気に飲まれている中、いつもと変わらない口調で声を掛けてくれたシーラさん。
……いや、いつもと同じではなく、いつもよりも語気は強め。
ずっと見られていたし、思っていたよりもストレスが溜まっていたのかもしれない。
「いやぁ。別にコソコソとしていた訳じゃ、ないんだがねえ」
「……それでは、あなたはここで一体何をされていたのですか?」
「ここに強い者がいると風の噂で聞いてねえ。遠くから探していたんだけど、見つからなくて困っていたところだったんだよ」
「強い人……? 私の隣にいるシーラさんはあなたの言う強い人だと思いますが、別の方を探しているってことですか?」
「このお嬢さんも、多少は腕が立つようだけどねえ。ちょっと物足らないなあ」
真正面からシーラさんを見て、そう言い切った小汚い旅人風の男性。
なんというか目線も挑発的な感じであり、シーラさんを煽っているように私は感じた。
「なら、ここには強者はいないと思います。シーラさんがここでは一番強い方なので」
一触即発の雰囲気を感じたため、すぐさま間に入るように私は言葉を続けた。
シーラさんはピリついており、この男性は挑発するため非常にヒヤヒヤする。
「そうなのかい? それは残念だねえ。物凄い強いドラゴンがいるというのは、デマだったのかねえ?」
「それよりも、あなたは一体誰なのですか? 人にズカズカと質問する前に、自分のことを名乗ってはいかがでしょうか?」
「これは失礼したねえ。てっきり知られている者だとばかり思っていたよ。私の名前はフリース。ジャンフォルク帝国では『剣聖』と呼ばれているよ」
剣聖が通称ということは、この世界では知らない人がいないくらい有名な人なのかもしれない。
雰囲気はあるし、持っているのが刀だし、剣聖と言われても納得はできる。
強い人を探しに来たという理由の辻褄も合うしね。
ただ、本当に剣聖であるならば、厄介度は確実に増したため、引き続き警戒しながら話は進めていかないといけないな。
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