第196話 色々な出店
私は3人の様子を伺いながら、たこ焼きの出店へと向かった。
たこ焼きを作ってくれているのは、龍人族の料理人であるヤコブさん。
ヤコブさんに慣れてもらうため、たこ焼き器は少し前に購入して渡していた。
そのお陰もあって、慣れた手つきで次々とたこ焼きを焼き上げている。
「佐藤さん! ……と、ヤト様! たこ焼きを買いに来てくれたっすか!」
「そうなのじゃ! おいしそうな匂いに、面白そうな形の食べ物じゃから気になった!」
「ヤコブさん、3パック頂いてもいいですか?」
「もちろんっす! そこに置いてあるのでもいいですし、今から焼けますよ!」
「せっかくなら焼いてほしいのじゃ!」
「分かったっす! 味はどうしますか?」
ノーマルのたこ焼きだけではなく、ネギダレにネギポン、それから照り焼きがある。
祭りの屋台にしては珍しいけど、たこ焼きの全てを味わってほしいため、私がヤコブさんに様々な種類を教えた。
「わらわはノーマル!」
「私も食べるのは初めてだし、ノーマルがいいわ。ローゼ様はどうしますか?」
「………………私もノーマルがいいです」
「なら、ノーマルを3つお願いします」
「ノーマル3つっすね! 了解っす!」
用意させておいて、全てノーマルなのは申し訳ないけど、やはり1発目はノーマルになってしまうよね。
私も食べたいところだけど、ここは我慢しないと後で何も食べれなくなってしまう。
そんなことを考えつつ、ヤコブさんの調理風景を眺める。
たこ焼きの良いところは、作っているところも面白いところ。
くるくると回っている生地を見ていると、あっという間にたこ焼きが完成した。
「はい! お待ちっす!」
3パック受け取り、早速食べてもらうことにした。
味の確認は私もしているため、不味いということはないはず。
「――美味いのじゃ! 上に乗っているのもいいのう!」
「こんなお手軽料理も美味しいのね……! ソースが抜群に美味しいわ」
「……外がカリッとしていて、中はとろとろ。……美味しい!」
ローゼさんも気に入ってくれたようで、凄い勢いでたこ焼きを食べてくれている。
そんな様子を見て、私とイザベラさんは表情が緩む。
「ぬふふ。ローゼ、もう来て良かったじゃろ!」
「……ん。誘ってくれてありがとう」
「礼には及ばん! わらわも楽しんでいるだけじゃからな!」
「……ふふ。確かに」
なんというか、非常にいい雰囲気。
ヤトさんのことをポカポカと殴っていたし、そもそも2人は仲が良いのかもしれない。
微笑ましいやり取りを見て、そんな考察をしつつ、たこ焼きを片手に次の屋台に向かうことにした。
次は甘いものかゲーム系の屋台がいいだろう。
たこ焼きはヤトさんの希望だったし、ローゼさんに聞いてみようか。
「ローゼさん。甘いものかゲームの屋台、どちらがいいですか?」
「甘いものじゃ! わらわは黒い棒が気になる!」
「さっきヤトさんが決めたので、今回はローゼさんです。ローゼさん、行きたい屋台はありますか?」
「……あの白くて、ふわふわしたの。食べてみたい……かも」
ローゼさんが指さしたのは、ヘレナとモージが作っているかき氷。
魔法の共同作業で、氷を削ってくれており、山盛りの真っ白なかき氷は遠くでも映えているため、ローゼさんも気になった様子。
「それじゃかき氷の屋台に行きましょうか。ヤトさんも大丈夫ですか?」
「うぬ! 甘いやつなら構わないのじゃ!」
ということで、次に向かったのはかき氷の屋台。
縁日の定番であり、祭りに行ったことがある人なら1度は食べたことがあるはずの氷菓。
頭がキーンとするため、私はあまり得意ではないんだけど、今回のは魔法の氷を使用していることもあって、キーンとしないフワフワタイプ。
氷を削るのも風魔法を応用しており、口に入れた瞬間に溶けるように消える。
「あっ、マスター! 食べに来てくれたんですね!」
「はい。4つお願いしてもいいですか?」
「了解致しました! モージ、一気に作りますよ」
「なー」
ヘレナが魔法で水を凍らせていき、その場で作られた氷をモージが風魔法で削っていく。
その光景は職人技であり、思わず拍手したくなるほど洗練されている。
「出来上がりました。お好きなシロップをかけてください」
「ヘレナ、モージ、ありがとうございます」
お礼を伝え、私達はかき氷を持ってシロップゾーンに進む。
今回用意したのは、イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイ、カルピス。
それから有料で、練乳も用意してある。
イチゴと練乳をいきたいけど、今回はレモン+カルピスかな。
「わらわは青いのがいいのじゃ!」
「私は緑がいいわ」
「私は黄色と白がいいですね」
「2つもありなの? なら、私も白いのをかけるわ」
「……私は赤」
ローゼさんがイチゴを選んだため、こっそりと練乳を追加してあげることにした。
余計なお世話かもしれないけど、イチゴと練乳の相性は抜群だからね。
「……私も白いの?」
「その白いのは特別なやつです。美味しいので食べてみてください」
ローゼさんは恐る恐るといった感じで、イチゴと練乳のかかった部分をすくい、口の中に入れた。
その瞬間、ここまで無表情だった顔が一気に緩んだ。
「――甘くて冷たくてフワフワで凄い!」
「本当に美味しいわね。……ここの料理は一体どうなっているの?」
「だから、佐藤は凄いと言っていたじゃろ! ――青いのも美味しいのじゃ!」
そう叫んだヤトさんの舌は、あっという間に真っ青になっていた。
そんなヤトさんを見て、ローゼさんも笑顔を見せた。
かき氷あるあるも見られたし、ローゼさんのかき氷チョイスは大正解だったようだ。
※作者からのお願い
一日一話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ
つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ





