第191話 果実酒
完全に夏がやってきた。
気温が高くなり、半袖でないと過ごすのが厳しい季節。
ただ、猛暑という感じではなく、30度ほどの気持ちの良い夏。
畑で育てている野菜は完全に夏野菜となっており、これらが収穫できる頃に夏野菜を使ったカレーパーティーを開催しようと思っている。
夏の暑い日に食べる辛いカレーは最高なため、早く育ってくれることを願いながら、農業にまい進する日々を過ごしている。
そんな中……最近、一番気合いが入っているのはジョルジュさん。
年配ということもあり、これまでは趣味で酒作りを楽しんでいるって感じだったけど、キャットメイジ達からお土産でもらった果実を受け取ってから、酒作りへの力の入れようが変わったのだ。
ノーマンさん曰く、果実自体はそう大したものではないみたいだけど、酒にするにはうってつけのようで、私は全ての果実をジョルジュさんに渡した。
その果実を切っ掛けに、最高の果実酒を作ろうとしている様子。
ジョルジュさんのお酒はクオリティが高いものが多く、日本で買えるお酒にも引けを取らないと私は思っている。
そんなジョルジュさんが最高と思えるお酒が作れたら、きっとこの村の特産品になるのは間違いない。
果実酒は他のお酒に比べて、飲みやすさも段違いだろうし、男女問わず人気になる可能性を秘めている。
更に、材料はこの世界で手に入るであろう果実。
モージの故郷ということもあり、キャットメイジ達とは友好関係を築くことができているし、多分だけど取引をしてくれるはず。
そうすれば、果実は大量に手に入れることができるため、NPで買わなくてはいけないものと違って大量生産も可能。
『ジョルジュの果実酒』は私にとっても、この村にとっても大きな可能性を秘めているため、私は全力でジョルジュさんの酒作りをサポートすることに決めた。
まぁ私にできることといえば、日本で得ることができる知識をジョルジュさんに分け与えることだけどね。
今日も新たなお酒を手に、ジョルジュさんの下に向かうことにした。
「ジョルジュさん、いますか? 今日も異世界の果実酒を持ってきました」
「おー、佐藤さん。今日も酒を持ってきてくれたのかの!」
「はい。何かの参考になればと思いまして。プレゼントした酒作りの本はいかがでしたか?」
「良い内容じゃったぞ。ふぉっふぉっふぉ、まさかこの年になって、新たなことを学べるとは思っておらんかった」
「そうですか。それならプレゼントした甲斐がありました。必要なものがありましたら、何でも言ってくださいね」
「あー……早速、一つ欲しいものがあるんじゃがよいか?」
どうやら何か欲しいものがあるようで、少し申し訳なさそうに尋ねてきた。
「もちろんです。私から欲しいものがあったら言ってくださいと言ったので。それで、欲しいものとはなんですか?」
「シュワシュワの水が欲しいんじゃ。異世界のお酒に入っているものがあるじゃろ?」
「あー、炭酸ですか」
確かに果実酒を炭酸で割って飲むのは、一番メジャーな飲み方。
缶のものでは炭酸で割られているものもあるし、ジョルジュさんも炭酸を使って作りたいというのがあるのかもしれない。
ただ……炭酸か。
私は炭酸水を購入してウイスキーを割って飲んでいたけど、炭酸水を自分で作ったことがないため、実際に作れるのか分からない。
確か、重曹とクエン酸を水に溶かせば炭酸水にはなるはず。
ただ、重曹もクエン酸も作り方が分からないため、ここはNPを使って購入するしかない。
私はタブレットを取り出し、軽く値段を調べてみたんだけど……思っていた以上に安い。
1キログラムでもそう大した値段ではないため、私は重曹とクエン酸を購入することにした。
「ん? その袋はなんなんじゃ?」
「この袋に入っているものを混ぜ合わせれば、シュワシュワした水になります。ちょっと試してみますね」
コップを借り、井戸から汲んだばかりの冷たい水をコップに入れる。
そして、クエン酸と重曹を小さじ一杯分ずつ入れ、混ぜ合わせると……本当にシュワシュワとしてきた。
初めて炭酸を作ったけど、こんなに簡単に作れることに驚き。
それに、1キログラムのを購入したけど、小さじ1杯分しか使っていないからコスパも相当いいと思う。
「おー! 本当にシュワシュワの水になったのう!」
「これで炭酸水を作ることができます。こちらはジョルジュさんにプレゼントしますので、ぜひ活用してください」
「これはありがたい! まさか言った傍からプレゼントしてもらえるとは思っておらんかった。期待に応えるためにも、完璧な果実酒を作るからのう」
「そんなに気負わないで大丈夫ですよ。ただ、もし作れた時にはこの村の特産品とさせてください」
「もちろんじゃ。まず最初に佐藤に飲んでもらうから、期待しておってくれ」
「はい。楽しみにしています」
ジョルジュさんの目は燃えており、この様子なら素晴らしい果実酒を完成させてくれるはず。
その果実酒を飲めることを楽しみにしつつ、ジョルジュさんの酒蔵を後にしたのだった。
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