第18話 謁見
予想していた通り、一時間かからないくらいで五巻を読み終えることができた。
感想としては、予想していたよりも何倍も面白い。
主人公がSっ気の強いイケメン男性に何故か興味を持たれる――的なものを想像していたのだけど、あだ名が貞子の大人しい女子と爽やかな優しい男の子の恋愛物語だった。
不満点を挙げるとすれば、相容れない性格の二人がどうくっつくかを見たかったけど、一巻時点で既に両思い。
なんなら五巻では、主人公の友達の恋愛の方が気になるという展開になっていた。
……というか、本当にどうなるのか気になる。
非常に良いところのため、六巻だけ買いたくなってしまったが、これを続けると堂々巡りになるのは目に見えている。
読みたい気持ちをグッと堪え、シーラさんに感想を尋ねてみることにした。
「シーラさん、漫画はいかがでしたか?」
「すっごく面白かったです! 本を読むのはあまり好きではなかったのですが、絵があることでとにかくイメージしやすくて良かったです。それに……胸がキュンとしましたね! 異世界は娯楽にも優れているんですね」
「シーラさんにも楽しんでもらえたなら良かったです」
「欲を言うのであれば、今すぐに続きを読みたいのですが……駄目ですか?」
「NP的にもここは節約したいので我慢してください。ちなみにですが、私も物凄く続きを読みたいです」
「佐藤さんも同じなのですね。これは王女様は身悶えてしまうかもしれませんね」
確かに生殺しのようで酷かもしれないが、買ってしまったからにはプレゼントするしかない。
私とシーラさんは漫画の感想を言い合いながら準備を行い、そのままの足で王城へと向かった。
衛兵に話をすると、すぐに王様の下に通してくれ、三日前に訪れた玉座の間に向かう。
この間は王女様が腰かけていた玉座に王様が腰かけており、表情が柔らかいことからも歓迎されているのが一目で分かった。
「お忙しいところお時間を頂き、本当にありがとうございます」
「よいよい。留守のところを訪ねてきてくれたようだな。大方の話は娘から聞いている」
「そうなのですね。改めてお話をさせていただきますが、別荘の周辺を畑にしても大丈夫かの確認をしに来ました」
「好きにしてくれて構わんよ。わざわざ許可を取りに来なくても良かったぐらいだ」
あっさりと許可してくれた。
想像している王様とは違い、本当に心の広い王様だ。
「ありがとうございます。そういうことでしたら、遠慮なく畑を作らせて頂きます。それと……もうひとつお話があるのですがよろしいですか?」
「もちろん構わん。ふふ、魔物のことだろう?」
「それも聞いていたのですね。……はい、そうです。実は私のスキルで魔物を従えることができまして、従魔として魔物を飼ってもよろしいかのご確認に来ました」
「魔物を従えるスキル……か。巻き込まれただけの人という認識だったが、お主もれっきとした勇者の素質を持つ人間だったということだな」
「いえいえ、そんな大それた人間じゃありません。能力は子供と同じくらいだとシーラさんに言われましたし」
買い被られるのは非常に困る。
役に立てるなら立ちたいとは思うが、私では大した役に立てないからな。
「能力値のことも神父から聞いておる。単純な能力には恵まれなかったようだな。……話が逸れてしまったが、魔物の件も好きにして構わない。ただ、管理だけはしっかりとしてほしい。何か被害が及ぶようであれば――こちらも動かざるを得ないからな」
「その点はしっかりとします。許可をくださりありがとうございます」
「何度も言うが礼には及ばない。佐藤にはこちらが礼を言う立場だからな」
笑いながら、そう声をかけてくれた王様。
全ての許可を頂けたし、自由に動くことができそうだ。
そこからは王様と近況の話を軽く行ってから、私達は玉座の間を後にした。
王様伝ではあるけど、一緒に転移してきた勇者四人も上手くやっていることを聞けたのは良かった。
「全ての許可が頂けましたね」
「はい。事前に王女様が報告してださっていたのも大きかったと思います」
「やはり相当気に入られていると思いますよ。私の知る限り、王女様は自主的に動かれる方ではありませんので」
「そうなんですかね? とにかく帰る前に漫画を渡して帰りましょうか。衛兵さんに居場所を聞きましょう」
近くにいた衛兵さんに王女様に会いたいことを伝えると、どうやら今は書斎室にいるという情報を教えてもらった。
入っても良いという許可も貰えたため、書斎室へと向かうことにした。
王城の書斎室と聞いたため、てっきり図書館くらいの大きさをイメージしていたのだけど、書斎室は想像よりも大きくはなく、何なら書斎室と聞いて想像するものと変わらない大きさ。
質屋でも本の値段は高かったし、国の王といえど大量の本を抱えることはできないのかもしれない。
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