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第2話 能力値


「待たせてすまなかった。4人のことは調べ終わったから、そなたの話を聞かせてもらおう。確か、希望があるのだったな?」

「はい。できれば自然豊かな場所で生活できればと思っておりまして、山小屋が何かあればそこに住ませてほしいです」

「や、山小屋? 山小屋は持っていないのだが……。おい、ドミニク。第3別荘の管理はまだ行っているか?」

「はい、しております。……ですが、最後に見に行ったのは半年前ですので、状態は完璧とは言えません」

「うーむ。……管理が甘くなっているようだが、私の第3別荘はいかがだろうか。王都から馬車で30分ほどの場所にあって、目の前には広大な平原が広がっており、裏には小さいが山がある。その裏山には小川が流れていて魚も捕まえることができるぞ。更に魔物の出現が少ないだけでなく、低級の魔物しか現れないのも魅力の1つだ」


 王様が提案してくれた場所は、私にとって理想も理想。

 確実にスローライフを送れる上に、この王都からも遠くないため、ずっと気になっていたファンタジーの世界も味わうことができる。


 即座にその別荘をお借りしたい気持ちでいっぱいなのだが……引っ掛かるのは王様の別荘というところ。

 私なんかが使っていいのかも気になるし、王様が良くても家臣はいい気がしないはずだからな。


「凄く魅力的なのですが、王様の別荘を私なんかが使っていいのでしょうか?」

「もちろんだ。私が良いと言ったら良い。なにせ私の別荘なのだからな。それに王の別荘と言ったら聞こえはよいが、実際はこの部屋くらいの大きさしかない小さな家だ。私の子供たちに自然を触れさせたいと思って建てさせたが、馬車で30分というのが意外とネックで、10年ほど前に数回利用しただけ。そんな別荘とは名ばかりの場所でもいいのであれば、自由に使ってほしい」

「そういうことであれば……遠慮なく使わせて頂きます。ご配慮頂き、本当にありがとうございます」

「礼には及ばない。こちらの不手際で巻き込んでしまったのだからな。残ってくれるという決断をしてくれたお主には頭が上がらない」


 そう言うと、私に対して深々と頭を下げてきた王様。

 王が頭を下げるというのは、国が頭を下げると同義。


 いくら非公式の場といえど、王様が簡単に頭を下げてはいけないことは私でも知っているのだが……。

 とにかくいち早く頭を上げてもらわないといけない。


「頭を上げてください。私は別荘をお借りできただけでも満足していますので」

「そう言ってくれるのは本当に助かる。……とりあえず別荘までの案内。それから護衛として、そなたには引き続き従者を1人つけさせてもらう。――シーラ、頼めるな」

「……はい。王の命令とあれば引き受けさせて頂きます」


 そう返事をしたのは、私と一緒にここで待ってくれていたメイド服の従者さん。

 見知らぬ土地。それも魔物のいるところで1人は怖かったし、護衛をつけてくれたのは本当にありがたいのだが……。


 シーラと呼ばれた従者さんが、一瞬ではあったけれど思いっきり顔を引き攣らせたのを私は見逃さなかった。

 王命だから受け入れたものの、異世界から何かの間違いでやってきたおじさんの護衛なんて普通は嫌だろう。


 上司の命令に従えない辛さは身に染みて知っているため、ここは護衛はいらないと進言してあげたいが、私も異世界の地で早々に死にたくはない。

 本当に申し訳ないが慣れるまでは護衛についてもらい、慣れたらすぐに護衛の任を解いてもらえるように私の方から王様を説得しよう。


「シーラさん。すみませんが、どうかよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願い致します」

「よし。これで全て決まったな。これからシーラに別荘の鍵と食糧を渡しておくから、そなたは鑑定を行ってくるとよい。手違いでやってきてしまったと言えど、きっと少しは使えるスキルが身についてあるはずだ」


 鑑定という言葉を聞き、年甲斐もなくテンションが上がってしまう。

 漫画やアニメの主人公であれば、ここでおじさんながらに最強の力が身についていることに気が付き、勇者として世界を救う――のが定石なのだけど、私は主人公なんかではなくブラック企業に心を折られたおじさん。


 最強の力なんて身についていないことは分かっているし、仮に最強のスキルを持っていたとしても戦うことなんて到底無理。

 ただ……それでも楽しみなものは楽しみ。

 従者さんが言っていた初級魔法の1つでも身についていれば御の字であり、私は高望みをしないで鑑定に臨むつもりだ。


「はい、分かりました。鑑定を受けさせて頂きます」

「この扉を出た先を真っ直ぐ進むと、小さいが教会がある。そこにいる神父に鑑定を頼んでくれ」

「教会にいる神父さんですね。分かりました」

「ああ。鑑定が終わったらこの部屋に戻ってきてくれ。その時には別荘に向かえる準備が整っているはずだ」

「何から何までありがとうございます」


 私は王様にお礼を伝えてから、1人部屋を出て教会に向かった。

 城の中に教会がある――か。


 ゲームではよくある話だけど、改めて考えると凄まじい。

 城の大きさに圧倒されつつ、王様の指示通りに進んでいくと……そこには小さいながらも本当に教会があった。


 教会という存在自体はもちろん知っていたが、人生で一度も行ったことがなかったため、その神々しさに思わず息を呑む。

 ステンドグラスや光の差し具合が神秘的であり、信仰心は一切持ち合わせていなかったけど、もしかしたら神様はいるのではとすら思ってしまった。


「おやおや、あなたが『勇者召還』に巻き込まれてしまった方ですな。王からお話は聞いております。鑑定を致しますのでどうぞ私の前まで来てください」

「はい。よろしくお願い致します」


 お年を召している神父さんであり、優しさが外見にまで現れているような感じ。

 私は神父さんに従い、講壇の前へと進む。


 講壇には大きな水晶が置かれており、私が目の前に立つと同時に、神父さんは水晶に手をかざした。

 すると水晶は光り輝き始め、その光は私の体に纏い始めた。


「――鑑定が終わりましたよ。水晶を覗き込んで確認してみてくだされ」

「覗けばいいんですか?」

「ええ、水晶に浮かび上がっていると思いますよ」


 言われるがまま水晶を覗き込むと、そこには私のステータスが浮かび上がっていた。

 まるでゲームの画面であり、非現実なその光景に心が躍ってしまう。



―――――――――――――――


【佐藤浩一】

職業  :農民

体力  :10

筋力  :5

耐久力 :7

魔法力 :1

敏捷性 :4


【攻撃スキル】

なし

【通常スキル】

なし

【特殊スキル】

『異世界農業』



―――――――――――――――



 鑑定を行う前から分かってはいたけど、やはり私は主人公なんかではないただの一般人。

 凄まじく低い能力値がそのことを物語っており、この世界の基準は一切分からないけど、それでも私の能力が低いことだけは分かる。


 攻撃スキルも通常スキルもなく、特殊スキルと書かれたところに1つだけスキルがあるが……。

 確実に戦闘に役立つものではないのは、その名前からして分かる。

 

 『異世界農業』。

 スキル名だけではどんなスキルなのか全く分からないけど、職業が農民であることからも農業がしやすくなるスキルなのかもしれない。



お読み頂きありがとうございます!


この小説を読んで、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも感じましたら、

ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、是非よろしくお願いいたします!

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