第190話 猫の村
それからすぐに、モージは私を手招きして呼んでくれた。
招き猫みたいで可愛いという感想を抱きつつ、モージの下に向かう。
「はじめまして。私はモージと一緒に暮らしている佐藤と言います」
マッシュの時と同じように挨拶をすると、キャットメイジたちは鳴いて返事をしてくれた。
鳴き声も可愛いし、キャットメイジに囲まれているのが非常に幸せ。
「従魔と言いましても、決して酷い扱いを致しませんので安心してください」
「なー」
モージが私の言葉に同意するように鳴いてくれ、他のキャットメイジ達は安心したような表情を見せた。
マッシュもそうだけど、モージも故郷のみんなに愛されているようで嬉しい。
そこからは護衛であるルーアさんと、先ほど挨拶を終えたマッシュも迎え入れてくれ、みんなでお茶会のようなものを行った。
モージ以外のキャットメイジ達もちゃんと魔法が使えるようで、器用に火と水の魔法でお湯を沸かし、特製のお茶を淹れてくれた。
このミニチュア集落からして分かっていたけど、キャットメイジ達は人間っぽい生活をしている。
あまり美味しいとは言えないものだけど、ちゃんとお茶請けも用意してくれているしね。
お茶はちゃんと美味しかったので、お礼にいつもモージにあげているものをプレゼントすることにした。
タブレットを操作し、チュールを購入する。
チュールは猫専用のおやつであり、モージもチュールが大好物。
きっと他のキャットメイジ達も好きだろうし、喜んでもらえるはずだ。
「これは私からのプレゼントになります。美味しいと思いますので、是非食べてみてください」
「なー!」
真っ先に反応したのは、普段からチュールを愛用しているモージ。
モージへのプレゼントではないんだけど、モージが食べてくれた方が他のキャットメイジも安心するはず。
ということで、まずはモージに食べてもらうことにした。
チュールを渡すと、器用に封を切り、ペロペロと一生懸命舐め始めたモージ。
この姿が本当に可愛らしい。
そんなモージを見て、他のキャットメイジたちも真似をするようにチュールを舐め始めてくれた。
最初は恐る恐るといった感じだったけど、一舐めした瞬間に美味しさが分かったのか、それ以降は夢中になって舐めている。
一斉になってぺろぺろとチュールを舐めている姿に、猫好きと言っていたルーアさんの表情も緩み切っている。
「喜んでもらえたみたいで良かったです。一箱置いていきますので、ぜひ食べてください」
非常に良い光景を見ることができたし、マッシュとモージが故郷を紹介してくれて良かった。
森に入った時はかなり不安な部分が大きかったけど、ついてきて大正解だったな。
「モージにも伝えておきますが、ここに残っても構いません。従魔といえど、無理やり働かせたくはありませんからね」
「なー」
モージは首を横に振りながら、故郷には残らないことを鳴いて伝えてくれた。
他のキャットメイジたちもモージの意思を尊重してくれているようで、モージを応援するように鳴いている。
「モージ、ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね」
「なー!」
「それでは短いですが、もう別荘に帰りましょうか。アッシュを待たせていますし、夜になったら危ないですからね」
本当なら、数日間は帰郷させてあげたかったところだけど、今回はアッシュも待たせているからね。
暗くなったら馬車を走らせなくなるため、早いところ帰らないといけない。
「私はもうしばらくここにいたかったな」
「またモージとマッシュが帰郷するときは、ルーアさんも一緒に行きましょう」
「ああ。是非とも誘ってほしい」
すぐに帰らないといけないことに対して、一番悲しそうなのがルーアさんなのが面白いな。
モージはすんなり納得してくれたみたいで、キャットメイジたちとお別れの挨拶をしている。
「また近い内に遊びにきますね。また、私達のところにもいつでも遊びに来てくださっても構いませんので」
「なー!」
キャットメイジたちはお土産として、何かの果実をプレゼントしてくれた。
よく分からないけど、もしかしたら凄い果実の可能性もある。
ありがたく受け取らせてもらい、後でノーマンさんに見てもらおう。
私達はたくさんのキャットメイジに見送られながら、モージの故郷を後にした。
「素晴らしい場所だったな。マッシュの仲間も可愛かったが、モージの仲間たちも可愛かった」
「ですね。それに、マッシュとモージが受け入れられていたのが良かったです。私の従魔になったことで、ハブられてしまっていたら申し訳が立たなかったので」
「確かにそうだな。森に入ってからは色々な魔物に襲われたし、その可能性もあってもおかしくなかった。可愛いだけでなく、仲間思いで私もほっこりさせてもらったよ」
「なー」
マッシュとモージはルーアさんの言葉に頷いており、少し誇らしげにしている。
最初はマッシュとモージがどこに行くのかも分からなかったけど、非常に良い体験をさせてもらった。
また近い内に遊びに来たいし、その時はちゃんとしたお土産を持っていきたいな。
そんなことを考えながら、私達は森を後にし、別荘へ帰還したのだった。
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