第187話 魔物たちの要望
ミラグロスさんを無事にもてなすことができ、大満足の様子でヤトさんと帰っていった。
また来てくれることを願いつつ、私はいつもの生活へと戻る。
色々とイベント続きだったこともあり、この1ヶ月ほどは農業に専念。
細かな事件がありつつ、季節は初夏を迎えていた。
「ふぅー。佐藤さん、段々と暑くなってきましたね」
「ですね。そろそろ夏野菜への切り替えのタイミングかもしれません」
気温による四季の変化だけでなく、育てる作物によっても四季を感じることができる。
夏野菜といえばカレーだし、育ったら今年は夏野菜カレーを作りたいな。
「夏の作物を育てるのですね! 夏野菜を食べるのが楽しみです」
「期待していてください。龍人族の畑が完全に形になりましたし、今年はいっぱい食べられると思いますよ」
「龍人族の方々が移住してきてくれたのは、この村にとって本当にありがたいですね」
「ええ。貴重でありがたい戦力です」
そんな会話をしつつ、収穫作業を行っていると、マッシュとモージが私のところに近づいてきた。
何かを伝えてきているけど、何を伝えたいのかさっぱり分からない。
従魔はヘレナ以外、言葉を話せないからなぁ。
こちらの言葉は理解しているみたいなんだけど、如何せんこちらが向こうの言葉を理解できない。
「うーん……何を伝えたいんでしょうか?」
「進化の件ではないですか? モージとマッシュは進化できていませんから」
なるほど。進化のことを訴えている可能性があるのか。
他の魔物は比較的順調に進化できている中、モージに関してはまだ一度も、マッシュは長いこと進化できていない。
魔力塊に関しては、みんな平等に分け与えているんだけど、やはり種族や個体によって進化のしやすさが違うみたい。
ライムに関しては、もう何回も進化しているからね。
「私もそうかと思いましたが、モージもマッシュも違うと言わんばかりに首をふりふりしていますね」
「ふふ、何だか可愛いです」
シーラさんの言う通り、ブサカワ要素が強いモージとマッシュの可愛い行動はよく映える。
私も同じことを思ったけど、抗議をするようにシーラさんの足に頭をぶつけていたため、私は口に出すのを止めた。
「進化ではないというと……休みが欲しいとかですかね?」
私がそう口にした瞬間、モージとマッシュは大当たりと言わんばかりに嬉しそうに飛び跳ねた。
この大喜びの行動も可愛らしい。
「休みならいつでもあげますよ。どこか行きたい場所とかあるんですか?」
私がそう尋ねると、モージとマッシュは息を合わせたように行きたい場所をジェスチャーで示した。
何を伝えたいかはさっぱり分からないけど、可愛いことだけは確か。
「うーん、どこか分からないですね。私抜きでも行けそうですか?」
「……難しいみたいですよ。遠いところってことですかね?」
モージとマッシュの反応を見るに、近場ではなさそう。
どこに行きたいのか見当はつかないけど、頑張ってくれているし連れて行ってあげたい。
「分かりました。私が御者をしますので馬車で行きましょうか。細かな道案内はよろしくお願いします」
「私もそれがいいと思います。お仕事は私にお任せください」
「はい。シーラさん、よろしくお願いします」
ということで、モージとマッシュを連れての遠出が決まった。
行き先は分からないけど、多分危険な場所ではないと思う。
念の為、護衛要因についてきてもらおうかな?
ということで、翌日の早朝。
前日にルーアさんに声をかけ、護衛としてついてきてもらうことにした。
本当はシーラさんがベストだったんだけど、モージとマッシュ、それから私が抜けてしまうと、シーラさんには残ってもらわないと厳しい部分がある。
そのため、今回は戦力になるルーアさんにお声がけさせてもらった。
「今回は護衛を引き受けてくれて、ありがとうございます」
「いや、気にしないでいい。佐藤には色々と良くしてもらっているからな。これぐらいのことなら喜んで引き受ける。ただ……2人というのは緊張するな。私と佐藤はあまり話す機会がなかったし」
「確かにそうですね。モージとマッシュはいますが、一対一で話すのは初めてでしょうか?」
「ああ。シーラがいたり、ポーシャとロイスがいたからな」
「じゃあ本当に2人きりは初めてですね。色々とお話を聞くチャンスでもありますので、私は凄く楽しみです」
「そう言ってもらえて良かった。私も佐藤のことは色々と聞きたいから、緊張はあるが楽しみな部分も大きい」
ルーアさんとそんな会話をしつつ、早速だけど出発することにした。
大まかな向かう方向については分かっており、進む先は東。
詳しい目的地についてはまだ分からないため、着いてからのお楽しみとなる。
モージもマッシュも同じ目的地のようだし、魔物に関わる何かしらがある場所なのかもしれない。
私はワクワクしつつ、馬車を走らせたのだった。
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