第183話 来訪者
蓮さん達との冒険を終え、平和な農業ライフに勤しんでいる。
大きな事件は特に起こっていないけど、ルーアさん達が度々ノワールクラブを狩りに行ってくれるようになった。
ノワールクラブというのは、この間狩ったカニの魔物の名前で、発見者である唯さんが名付けてくれた。
今はノワールクラブを軸に、適当な魔物を一体だけ持ち帰ってもらっているが、当たりと言えるのはノワールクラブのみ。
もっと沖の方に行けば、様々な魔物がいると思うんだけど、流石に巣潜りではリスクが大きい。
いつかは魔動の船を作るか、水棲の強い魔物を購入し、狩りを行ってもらうのが今の私の夢。
そんなことを考えつつ、農作業を行っていると……空から凄い勢いで何かが飛んでくるのが見えた。
あの黒くて大きい飛行物体は、間違いなくヤトさんだろう。
「佐藤、久しぶりなのじゃ!」
「ヤトさん、お久しぶりです。……あれ? 後ろの方は誰ですか?」
てっきりヤトさんとアシュロスさんだと思っていたんだけど、ヤトさんの後ろにいたのはアシュロスさんではなかった。
褐色肌で銀髪。
整いすぎている顔のパーツに、切れ長でありながらパッチリ二重。
そして、何より目がいってしまうのは、はち切れんばかりの胸。
隣にいるのが子供らしい可愛さのヤトさんだけに、色気が大爆発しているように見える。
つい胸に視線がいってしまうのを強い精神力で堪えながら、私はヤトさんとの話に集中する。
「ダークエルフのイザベラじゃ! エルフの国から遊びに来ておって、わらわが連れてきたのじゃ!」
「どうも、イザベラよ。ヤト様から凄く魅力的な殿方がいると聞いてやってきたのだけど……何だか冴えない男ね」
うぐっ。
自己紹介を行う前に蔑まれてしまった。
身長が180センチほどと私よりも高身長で、見下されながら蔑んだ目で見られている。
屈辱的……というよりも、悪くないと思ってしまっているのが何とも情けない。
「ぬぬぬ!? イザベラ! 佐藤に失礼なことを言うな! 佐藤はこう見えて凄い男なんじゃぞ!」
「ちょっとした冗談なのだから、そう怒らないでくれる? ヤト様のお気に入りということだし、私も丁重に扱わせてもらうわ。よろしくね」
「さ、佐藤です。よろしくお願いします」
何とか自己紹介を行い、差し出された手を握り返す。
凄く妖艶で綺麗な女性だけど、手のひらは非常にゴツゴツ。
剣を振ってきた実力者ということがすぐに分かり、そのお陰でドキマギしていた気持ちが冷静になれた。
イザベラさんは一体何者なのだろうか。
「次、佐藤に無礼なことしたら許さないからの!」
「全然大丈夫ですよ。気にしていませんし、私は何者でもありませんから」
「顔に似合わず、器は広いのね。そういうことなら、自然体で接させてもらうわ」
「駄目じゃ! イザベラのせいでわらわの評価が下がったら許さないのじゃ!」
「評価なんか下がりませんから大丈夫ですよ」
ヤトさんが連れてきた方なのに、何故か私が仲介する側になっている。
まぁヤトさんから、大事に思われていることが分かって嬉しいからいいんだけども。
「ともかく! 佐藤に失礼過ぎることを言うのは禁止じゃ! それ以上言ったら、わらわはローゼの悪口を本人の前で言うからの!」
「それをしたら――ヤト様と言えど許しませんからね」
「ん? 許さなかったらどうすると言うんじゃ? 龍族と一戦交えるかのう?」
「ちょっと待ってください! お互いに一度落ち着いてください!」
ヤトさんとイザベラさんを引き剥がし、少し落ち着かせる。
私への態度が悪いってだけで、龍族とダークエルフの戦争に発展したら洒落にならない。
そもそも私は、社畜時代にボロカスのように扱われてきた。
その経験からすれば、イザベラさんの態度は可愛いものだし、美人で妖艶なダークエルフの方からの蔑みはむしろご褒美。
……絶対に口には出せないけど。
とりあえずシーラさんにヘルプを要請し、ヤトさんを落ち着かせてもらうことにした。
私はイザベラさんに付き添い、落ち着いて話を聞く。
「イザベラさん、少しは落ち着きましたか?」
「私はずっと落ち着いているわよ。少しヤト様をからかおうとしただけだからね。予想以上に熱くなったからビックリしちゃった」
ずっと落ち着いていたようには見えなかったけどなぁ。
少なくとも、ローゼさんとやらに直接悪口を言うと言われた後からは目が本気だった。
「それなら良かったです。なら、ヤトさんが落ち着くのを待つだけですね。その間に……イザベラさんについて、色々と聞かせてもらってもいいですか?」
「もちろん構わないわよ。セクシャルなことは答えないけど」
「そんな質問はしません! 真面目な質問だけですから」
「ふふ、冗談よ。平々凡々で冴えない人間かと思っていたけど、反応がうぶで意外と可愛いかも」
完全に私をからかっているイザベラさん。
妖艶ではあるけど、私の方が年上だと思うんだけどなぁ。
年下相手にドギマギしてしまう自分を情けなく思いつつも、とりあえず色々と聞いてみることにした。
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