第181話 甲殻類
美香さんが海に入ったのを眺めていると、ものの数分で美香さんが戻ってきた。
何かが暴れているのか、水面が激しく揺れている。
「捕まえた! みんなー、引っ張りあげるからね! それー!」
背負い投げの形で、魔道具で捕まえた魔物を放り投げてきた美香さん。
突然のことだったため、全員大慌てで戦う準備を行う。
「水面から顔を出して投げるまでがはえーって!」
「魔物が来ますよ。将司は魔物が海に逃げないようにガードしてください」
「俺と唯でタコ殴りだ」
そんな会話を一瞬で行い、飛んできた魔物をあっという間に倒してみせた。
マグロくらいの大きさのピラニアみたいな魔物で、水面から打ち上げられたらほぼ無力ということもあり、かなり楽に倒していた蓮さん達。
「凄く弱いな」
「水面からあげてちゃえばこんなもんなんじゃね?」
「とにかく一体目の狩りは完了ですね。佐藤さん、ご査収お願いします」
ご査収と言われても、私も何一つ分からない。
とりあえず……食べてみようかな?
魔法で焚き火を起こしてもらい、小刀を借りて大きなピラニアのような魔物を解体する。
かなり雑ではあるけど、身を切り出すことができた。
白身魚のような感じであり、切り身自体は非常に美味しそう。
とりあえずの調味料として、アジシオを購入。
塩焼きにして頂くことにした。
「匂いは……美味しそうだな!」
「佐藤さん、味の感想が気になります」
「食べてみますね」
私は調理した魚の魔物の塩焼きを口に入れた。
……うーん、可もなく不可もなくといった感じ。
不味くはないんだけど、味が極めて薄い。
アジシオが効いているお陰で美味しい風って感じだけど、多分この魔物自体は美味しくない。
「佐藤さん、どうなんだ? 美味しいのか!?」
「……多分、不味い寄りです」
「なんだ。匂いは美味しそうだったんだけどな」
「そう上手くはいきませんね。美香にはこの魔物を狙わないように伝えましょう。それで、この残った身は、撒き餌としてばら蒔いて大丈夫ですか?」
「はい。よろしくお願いします」
一発目から上手くいくとは思っていなかったけど、少し期待していただけに悔しい結果。
残りの切り身はしっかり完食し、次の魔物が引き上げられるのを待った。
最初の魔物は不発。
それから五体の魔物を塩焼きで食べてみたんだけど、どれもパッとしない味だった。
陸地にいる魔物ほど硬くはないんだけど、やはり海にいる魔物も筋肉質なようで、かなり淡白な味になっている。
試食役も交代で行っているとはいえ、お腹にも限度があることから、狙う獲物を少し変えてみることにした。
ここまでは魚のような魔物を狙っていたが、ここからは海底に潜んでいる魔物にフォーカスする。
今は唯さんが潜っており、潜水してから約20分ほどが経過。
呼吸ができるから大丈夫と分かっているんだけど、心配になってきたタイミングで――海の中から顔を出した。
結構な大物のようで、引き上げるのに苦労している様子。
「くっ、重いですね。無理やり引っ張りあげますので、後はよろしくお願いします」
そんな掛け声の後に、魔法で陸地まで魔物を吹っ飛ばした唯さん。
飛んできたのは真っ黒な――大きなカニのような魔物。
「でっかいカニだー! これは美味しそうかもー!」
「美味しそうの前に、仕留めないと駄目だぞ。カニなら陸地でもある程度動くからな」
「魔道具も刺さっていなさそうだし、ピンピンしてやがる! 刃物が通らないかもだから、工夫して倒そうぜ!」
戦前から予想していた通り、黒いカニの魔物は陸地でも自由に動いてきた。
両腕のハサミはかなり危険で、見ている私はヒヤヒヤとしていたんだけど、蓮さん達は楽々といなしながらあっさりと仕留めて見せた。
「いっちょあがり! 佐藤、早速料理して!」
「分かりました。腕の部分だけ折ってもらっていいですかね? 私の力では折れないと思いますので」
「了解。ちょっと待っていてくれ」
蓮さんと将司さんが力を合わせ、腕の部分をへし折ってから、中身を取り出しやすいように切れ込みも入れてくれた。
私はそのカニの魔物を火にかけて焼き、焼きガニにしてから塩を振る。
本当は醤油を垂らしたいけど、小さい醤油を買うのは勿体ないからね。
今日はアジシオ一本での調理となる。
「今回は私が試食係だよね? カニは正直ちょー美味しそう!」
「殻には気をつけて食べてくださいね」
「はーい! じゃあいっただきまーす! ――うんまー!」
こちらが味の感想を気になる前に、ほっぺたを押さえてそう叫んだ美香さん。
この反応からして、カニの魔物は大当たりだった様子。
すぐに私や蓮さん達もカニの身を取り出し、食べてみたんだけど……本当に美味しい。
魔物特有の硬さがないし、味も旨味が凝縮していて控えめにいって最高。
何よりも大きいのが良く、足を1本だけしか焼いていないんだけど、4人で食べても満足できるくらいの量が詰まっている。
これは獲ってくれた唯さんにも後で食べさせてあげるとして、こうなってくるとカニ味噌も食べてみたい。
目の色が変わった私達は、必死にカニの甲羅を取り外し、カニ味噌とカニの身を心ゆくまで堪能したのだった。
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