第174話 閉会の言葉
決勝戦。
剛の美香さんと柔のライムの非常に楽しみな一戦だったんだけど、結果はあまりにもあっさりと美香さんの勝ちで終わった。
会場のムード的にはライム優勢だったけど、美香さんの『勘』が冴えに冴えていた。
透明化も分裂も魔法も全て防がれ、真正面からの攻撃によってライムは3-0で敗れてしまった。
こればかりは美香さんを褒めるしかない。
完全に背後を取っていたのに、適当に振ったように見えた剣に当たるという不運もあったし、ライムは今回の敗戦で落ち込まず、切り替えてまた頑張ってほしいところ。
「熱い試合をありがとうございました。準優勝はライム。優勝は美香さん。おめでとうございます」
「やったー! ありがとう! 去年は悔しい敗退だったから、今年は優勝できて本当に良かった! まぁ強いて言うなら……シーラとやりたかったんだけどね」
美香さんはそう言ってから、観客席にいたシーラさんに拳を突き出した。
そんな行動に対し、シーラさんの目は燃えているため、これは来年の模擬戦大会が非常に楽しみ。
「私も美香さん対シーラさんの一戦は見たかったですが、それは来年のお楽しみに取っておきましょう。今回は美香さんの完全優勝。優勝者の美香さんに拍手をお願いします」
会場から割れんばかりの拍手が鳴り響き、美香さんはその拍手にノリノリで応えている。
「続いて、優勝賞品の授与です。今年は少しグレードを上げまして――こちらをプレゼント致します」
私が美香さんに差し出したのは、折りたたみの超軽量テント。
丈夫で軽く、持ち運びやすい代物であり、ダンジョン攻略で使えるキャンプ用品。
本当は寝袋もつけてあげたかったんだけど、予算の都合上、今回はテントのみとなってしまった。
それでも、ダンジョン攻略を行う美香さん達にとっては、かなり重宝するアイテムだと思う。
「これ、テント? すっごい! めちゃくちゃ軽いんだけど!」
「持ち運べるものを選びましたので、きっとダンジョン攻略でも使えると思います」
「去年、蓮がもらった腕時計も良かったけど、このテントも最高に嬉しい! 楽しい思いをさせてもらって、こんな良いものまで貰うなんて、何だか申し訳なくなってくる!」
「それだけ楽しませて貰っていますし、この強者ひしめく大会で優勝したのですから、それ相応の品はプレゼントします。来年も開催すると思いますので、是非ディフェンディングチャンピオンとして、また参加してください」
「もちろん参加する! 来年も開催してくれるって言ってくれてありがとう! また腕を磨いておくから!」
美香さんは親指を立てて、爽やかに笑ってから観客席へと戻っていった。
「それでは、これで第2回模擬戦大会を終了とします。なお、この後は食事会を行いますので、是非ご飯を食べて行ってください。それから……優勝者を的中させた方は、賞品をお渡し致しますので大会本部まで起こしください」
しっかりとアナウンスを行ってから、私はシーラさんにバトンを渡し、急いで厨房へと向かうことにした。
今回決勝戦を観戦することができたのは、ノーマンさん達が早めに準備に取り掛かってくれたから。
少しでも役に立てるように、今からでも手伝いに向かう。
ノーマンさんにノーマンさんの弟子の方々、それから龍人族の料理人が頑張ってくれたようで、既に大量の料理が完成していた。
私だけ楽しませてもらって、本当に申し訳ないな。
「遅くなってすみません。もうこれだけの料理を完成させてしまっていたんですね」
「下準備を入念に行っていたからな。割りとすぐに完成することができた」
「準決勝以降は見ていませんが、それまではちゃんと観戦もできましたよ!」
「そうだったんですか。少しでも楽しんでくれていたなら良かったです。本当にありがとうございます」
「俺とヤコブに限っては、ここの一員なんだから礼なんていらない。それよりも、佐藤さんは味のチェックをしてくれ」
ヤコブさんというのが、龍人族の料理人の方。
ノーマンさんが来てからの2日間で色々と教えてもらったようで、早くも弟子のような立ち位置になっている。
「分かりました。チェックして大丈夫だった料理から、運んでいきましょう。お腹を空かせた方達が待っているので、きっと大喜びしてくれると思います」
「了解! 佐藤さん、よろしく頼む」
ということで、私は味の最終チェックを行っていくことにした。
結果として、全ての料理が合格点以上。
当たり前だけど、流石は調理を生業としている方々の料理。
料理自体を知らなくても、レシピさえ教えればこれだけハイクオリティの料理を作れるのか。
心底感心しつつ、私もチェックを終えた料理をみんなの下へと運んだのだった。
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