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第173話 達人


 審判の合図で試合が開始された。

 試合の有利不利に関しては、シルヴァさんがライムの他の試合を見ていたかどうかで変わってくる。


 完全初見であれば、いくら老練なシルヴァさんでも、ライムの攻撃を防ぎ切るのは難しいはず。

 そんなことを考えている内に、ライムは早速透明化を使った。


 シルバースライムに進化してから、消え方に磨きがかかり過ぎている。

 消えた瞬間に私は見失ったのだけど、どうやらシルヴァさんには見えているようで落ち着いている。


「対面しておってもこれだけ分かりづらいとはな。本当に面白いスライムだ」


 透明化を見ても、余裕そうにそう呟いたシルヴァさん。

 口ぶりからして、ライムの戦いは見ていた様子。


 初見殺しが通用しないのであれば、ちょっとライムが不利になったかもしれない。

 私はそう思って見ていたんだけど……ライムは構わず攻撃を仕掛けたようだ。


 木剣をコンパクトに構えていたシルヴァさんは、突っ込んでくるライムに合わせて剣を振った。

 その一撃は透明化しており、更に高速で移動していたライムに当たったようで、弾き飛ばされたライムが姿を見せた。


 一瞬でライムの透明化が解除され、余裕そうなシルヴァさん。

 これは早くも勝負が決着したと、私は半分諦めてしまっていたところ――。


「シルヴァさん、有効打1! ライムさん、有効打2!」


 審判のそのコールに会場が沸いた。

 慌てて、シルヴァさんの方を見てみると、分裂した2体のライムが跳ねていた。


 どうやらライムは試合開始と同時に分裂しており、列になって攻撃を仕掛けたようだ。

 先頭のライムは木剣によって弾かれてしまったけど、後ろにいた2体の分裂体はシルヴァさんに攻撃を当てており、結果としてライムは2回の有効打を浴びせた判定になったみたい。


「分裂までできるとは知らんかったな。あと1回攻撃を受けてしまったら、我が負けになるのか。……ほほほ、これはヒヤヒヤしてきたな」


 ここまで一貫して余裕そうだったシルヴァさんの額には汗が滲んでおり、まだ試合開始間もないことからも、この汗が疲労によるものではないことは明らか。


 初めて見せるシルヴァさんの焦りに、先ほどまでライムの負けが濃厚と思っていた会場の雰囲気が、一気に勝てるのではというムードに変わった。

 ただ、ライムは分裂という奥の手も使ってしまったため、ここからの攻め手がない。


 分裂、透明化、高速移動をしながら撹乱し、隙が生まれるところを狙う策のみ。

 普通の相手ならこれで勝ちが確定したと言ってもいいんだけど、相手は未知数のシルヴァさんだからなぁ。


「ここからはちょいと本気でいかせてもらう」


 シルヴァさんの周りに、赤く燃え上がるようなオーラが纏った。

 奥の手を隠していたのはライムだけでなく、シルヴァさんもだったということ。


 2名の距離が一気に詰まり、ライムは必死に逃げるように移動を開始したが、ライム以上の速度で追ってきたシルヴァさんに追いつかれ――攻撃を当てられてしまった。

 これで有効打が2-2となり、両者共に後が無い展開。


 ライム的には一度落ち着かせたいはずだけど、シルヴァさんは攻撃の手を緩めず、再び攻撃を仕掛けてきた。

 ライムは再び逃げの一手に出て、背後を突かれる形となっている。


 シルヴァさんは勝ちを確信したのか、不敵に笑ってから剣を振り下ろしたのだが――。

 何故か、シルヴァさんはバランスを崩して転倒。

 ライムはその転倒した隙を見逃さず、すかさず反転して攻撃を叩き込んだ。


「……しょ、勝者ライムさん!」


 審判も困惑した様子であったけど、ライムの勝ちは勝ち。

 最後の最後で運が味方したけど、運も実力の内と言うからね。


「シルヴァさん、ライム。お疲れ様でした。シルヴァさんも惜しかったですね。バランスを崩さなければ、勝っていたのはシルヴァさんだったと思います」

「確かにバランスを崩さなければ、勝っておったのは我だったかもしれん。ただ、あそこでバランスを崩したのは必然だよ」


 シルヴァさんはそう言ってから、自分の足を指さした。

 そんなシルヴァさんの靴は泥で汚れており、私は慌ててシルヴァさんが転倒したところを見に行くと、一箇所だけ異様に泥濘んでいた。


「もしかして……この泥濘みって、ライムが仕掛けたのですか?」


 そんな私の言葉に返答するように、ライムはぴょんと嬉しそうに跳ねた。

 この泥濘みは魔法によるものだよね?

 まさか魔法まで使えるようになっていたとは……。


「わざと攻撃を受け、我に成功体験を与えてから、トドメの一撃も相まって油断したところを狙われた。ここまで賢い魔物と戦ったのは初めてだ」

「敗因をそこまで解説できるシルヴァさんも凄いです。面白い試合をありがとうございました」

「こちらこそ貴重な体験をありがとう。決勝戦も見させてもらうが構わんか?」

「もちろんです。大会後は料理も提供する予定ですので、ぜひそちらも食べて行ってください。シルヴァさんからは色々とお伺いしたいことがありますので」

「そういうことなら、遠慮なくゆっくりさせてもらうとしよう」


 ということで、準決勝第2試合はライムの勝利に終わった。

 決勝戦は美香さん対ライム。

 予想していなかった決勝戦のカードだけに、非常に楽しみな一戦だな。




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