第172話 龍の力
ここでひと休憩入れたいところだけど、今回は予選も行ったため、ゆっくりしている時間がない。
ということで、すぐに準決勝が行われることになった。
準決勝の対戦相手は、くじ引きによって決められた。
準決勝第1試合は、美香さん対アシュロスさん。
第2試合は必然的にシルヴァさん対ライムとなった。
どちらのカードも、勝者が分からない好カード。
「龍人と戦えるなんてラッキー! 絶対に勝つからね!」
「龍族の誇りにかけて、絶対に負けません」
試合開始前から火花が散っている。
両者共に武器は片手剣。
ゴリゴリのアタッカー同士の戦いということもあって、ワクワク感が凄まじい。
「それでは――試合開始!」
審判の合図により、飛び出たのは美香さんだった。
対するアシュロスさんは、ドレイクさんとの戦いと同様に、初っ端から【龍化】を使用した。
「間近で見る【龍化】、めちゃくちゃかっこいいー!」
「そう楽しんでいられるのも今のうちですよ」
アシュロスさんはそう呟くと、居合の構えを見せ――考えなしで間合いに踏み込んだ美香さんに斬りかかった。
目に止まらぬ高速の一撃。
俯瞰で見ている私ですら目で追えなかったため、この一撃は絶対に食らってしまっていると思ったんだけど……美香さんはギリギリで回避した様子。
いや、それだけでなく、高速の居合に対してカウンターを合わせていたようで、バランスを崩したのはアシュロスさんの方だった。
「み、見えていたということですか?」
「ううん、見えてはいなかったよ! 攻撃の方向は分かるから、後は勘で合わせた!」
「か、勘?」
想定外の返答だったようで、アシュロスさん史上一番驚きの表情を見せている。
美香さんは美香さんで凄く楽しそうだし、なんというか一皮剥けた感が凄い。
そこからは美香さんも身体能力を向上させるスキルを発動させ、近距離の斬り合いが行われた。
ハイレベルの剣戟に会場は静まり返り、2人の息遣いと剣を打ち合う音だけが響いている。
素人目では、基礎能力も技量もアシュロスさんが一枚上手。
ただ、時折見せる、美香さんの突拍子もない動きにアシュロスさんは翻弄されており、最後は去年のシーラさん戦で見せた舞うような連撃により――美香さんの勝利で試合は終わった。
「勝者――美香さん!」
「やったー! 勝ったー! めちゃくちゃ面白かったー!」
「ま、負けてしまいました。お強かったです」
「いやいや、アシュロスの方が強かったから! ただ、居合斬りを返されてから動揺しすぎ!」
「出鼻を挫くつもりで放った不可避の一撃でしたので。まさか合わせられるとは思ってもいませんでした。本当に勘で合わせたのですか?」
「うん。本当に勘だよ! 最近、ピンチの時になると勘が冴え渡るんだよね!」
美香さんのその返答に、再び驚きの表情を見せているアシュロスさん。
運で負けたようなものだから、アシュロスさんもこんな顔になってしまうだろう。
ドニーさんが美香さんの成長が凄まじいと言っていたけど、その言葉の意味がこの試合でよく分かった。
美香さんの言う『勘』が、急成長の大きな要因であることは間違いない。
「美香さん、アシュロスさん。お疲れ様でした。凄く面白くていい試合でした」
「こちらこそありがとうございました。想像以上にハイレベルな大会で、久しぶりに燃えることができました」
「それなら良かったです。ヤトさんも声を枯らすくらい応援していましたよ」
「本当ですか? お礼を伝えてきます」
アシュロスさんの目の色が変わり、すぐにヤトさんの下へと走って行った。
「佐藤、ありがとう! どう? かっこよかったでしょ!」
「はい。めちゃくちゃかっこよかったです。決勝も頑張ってくださいね」
「うん! 任せて! 盛り上げた上で、優勝するからさ!」
美香さんはそう言うと、スキップしながら唯さんの元に向かった。
そんな2人に代わり、試合会場に入ったのはシルヴァさんとライム。
このカードに関しては、勝敗が分からないどころか、どんな試合展開になるのかも想像がつかない。
なんとなく、シルヴァさんはまだ底を見せていないように思えるし、第1試合に引き続き非常に楽しみな一戦。
「魔物が参加しているのは承知しておったが、まさか準決勝でスライムと戦うことになるとは思っておらんかった」
「決して悪いスライムではありませんので、そこだけは理解してください」
「ほっほっほ。分かっておる。異世界人が参加する大会があると聞いて、何の気なくやってきたのだが、想像以上に面白い場所だな」
「そう言って頂けて良かったです。ライムとの一戦も楽しんでください」
1回戦でマッシュと戦っていたから分かっているとは思うけど、改めて危険な魔物ではないことを伝えた。
シルヴァさんには聞きたいことが山ほどあるけど、それを聞くのは大会が終わってから。
今は余計なことを考えず、純粋に試合を楽しむことにしよう。
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