第164話 移住希望者
例え遊びに来なくなってしまったとしても、ヤトさん達の生活が良くなるのであれば、私としては嬉しい。
一気に人手が増えるのも嬉しいし、龍族の方たちは新しい技術を手に入れられる。
これこそwin-winの提案だ。
「恐らくですが、エデルギウス近辺でも農業を行えるようになると思います」
「本当なのか!? なら、龍族のものを受け入れてほしいのじゃ!」
「もちろん構いません。ただ、住む場所がないので、受け入れるのはもう少し先になってしまうと思います」
「住むところまで用意してもらわなくても大丈夫なのじゃ! 勝手に家を建てて、勝手に住まわせてもらうからのう!」
「それは逆にこちらが困ってしまいますので、しっかりとこちらで家を準備させてください。龍族には大工さんはいますか?」
私のそんな言葉に、ヤトさんとアシュロスさんは顔を見合わせて固まった。
どうやら大工さんがいるかどうかまでは把握していなかったようで、お互いに首を傾げ合っている。
「うぬぅ……分からないのじゃ! だけど、エデルギウス山には建物はあるから、きっと大工はいると思うのじゃ!」
「私もお嬢様と同じ考えです。移住希望者に大工がいるかどうかは分かりませんが、貸し出すことはできますので遠慮なく申してください」
「分かりました。とりあえず、移住希望者の中に建築を行ったことがある方がいるかを聞いてください。いなかった場合は、お給料をお出ししますので、協力してくださる方を募って頂けたらありがたいです」
私としては、移住希望者の中に大工さんがいてくれたらありがたい。
移住希望じゃないのに手伝わせてしまう申し訳なさもあるけど、それとは別に大工さんにも技術や知識を与えることができるからね。
ロッゾさんやシッドさんは超一流だと思っているし、きっと学びは大きいと思う。
せっかくなら龍族には色々な面で発展してもらいたいし、盗める技術は全て盗んでいって欲しい。
「分かったのじゃ! とりあえず連れてきたみんなに聞いてくるから、待っていてほしいのじゃ!」
「分かりました。よろしくお願いします」
ヤトさんはそう言うと、今回引き連れてきた移住希望者達に聞き取りを行い始めた。
簡単な聞き取りだったこともあり、すぐに戻ってきてくれた。
「佐藤! 聞いてきたのじゃが、大工に鍛冶師、料理人もおったのじゃ!」
「そんなに多種多様な方がいたんですか。それなら早速、大工さんと鍛冶師さんにはここに残って仕事をしてもらってもよろしいでしょうか?」
「もちろんなのじゃ! ここにいる全員、今日移住するつもりで来ているからのう!」
ヤトさんはすぐに呼んできてくれ、今日やってきた38名中7名が大工さん又は鍛冶師さんであり、ロッゾさんとシッドさんの下へと向かってくれた。
申し訳ないけど残りの31名の方は、家が建つまで住むことはできないので、エデルギウス山に戻ってもらう。
今日、このまま移住するつもりで来てもらったところ、即帰させてしまうのは申し訳ないけど、こればかりは仕方がない。
「それでは住む家が建ち次第、ご連絡しますので待っていてください」
「うぬ! 佐藤、色々とありがとうなのじゃ!」
「いえいえ。私も人手が増えて嬉しいので、こちらこそありがとうございます」
「佐藤には何かお礼がしたいのじゃ! この間、プレゼントを受け取ってもらえなかったからのう!」
「お礼なんかいりません。その代わりといったらなんですが……エデルギウス山近辺で農業ができるようになっても、ヤトさんとアシュロスさんには変わらず遊びに来てほしいです」
先ほど思ったことを伝えてみることにした。
私は恥ずかしさを堪えて伝えたんだけど、2人はぽかんと口を開けており、私の言葉を理解できなかったのか呆けた表情を見せている。
「……伝わっていなかったようなので、もう一度言わせてもらいます。エデルギウス山――」
「いえ、ちゃんと伝わっていましたよ。ただ……ねぇ?」
「うぬ! 当たり前のことすぎて頭に入ってこなかったのじゃ! わらわ達は当たり前のように遊びに来るぞ! 何ならば、近い将来、わらわ達も移住する気満々じゃからな!」
「ええ。私とお嬢様が一番の移住希望者でしたから。と言いますか、私は今回のタイミングで移住できたのですがね……」
「抜け駆けは許さないのじゃ! アシュロスにはわらわが移住できるように協力してもらわないといけないから、移住するタイミングはわらわと一緒じゃないと駄目なのじゃ!」
「ということなのです」
なるほど。
移住したければ、ヤトさんも一緒に移住できるようにしろってことなのか。
クリカラさんは猛反対するだろうし、かなり未来の話になりそう。
ただ……2人が変わらず遊びに来てくれると知って、本当にホッとした。
「……うぬ? 佐藤はなんで嬉しそうなのじゃ! わらわ達が移住しなくてホッとしているのか!?」
「その逆です。移住したいと思ってくれているほど、気に入ってくれていることが嬉しいんですよ」
「佐藤は変な奴じゃ! ここに越してきたいと思うのは普通のことじゃぞ!」
「ですね。これだけ楽しい場所、他には絶対にありませんので」
そう言ってくれるだけでありがたい。
ヤトさんとアシュロスさんがここに移住できるまで、楽しいと思ってくれる場所であり続けられるように頑張らないといけないな。
※作者からのお願い
一日一話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ
つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ