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第15話 武器屋


 シーラさんと共に王都の中心街へとやってきた。

 この国で一番栄えている場所ということもあり、気を抜けばはぐれてしまいそうになるくらい人の往来が凄い。


「中心街はとんでもない人の多さですね。ここまで栄えているとは思っていませんでした」

「人気店が連なっていますからね。佐藤さんはどこか行きたい場所とかございますか?」

「行きたい場所……。買いたいとかではないのですが、武器屋や防具屋、それから魔法を扱っているお店なんかがあれば行ってみたいですね」


 ファンタジーの世界にやってきたのであれば、一度は行ってみたいお店たち。

 武器も防具も魔法アイテムも私では扱うことができないし、決して購入することはないだろうが、見るだけならタダだからな。


「意外とそういう系に興味があるのですね。人並み以上には詳しいと思いますので私が案内します」

「ぜひお願いします」


 シーラさんに案内をお願いし、はぐれないようにだけ気を付けながら必死に後ろをついていく。

 既に行くお店が決まっているようで、迷いなく進んだシーラさんが向かった先は――いかにも武器屋っぽい武骨な雰囲気のお店があった。


「着きました。ここは武器と防具を主に扱っているお店です。店主さんは少し気難しい方なのですが、王都で一番の武器屋さんだと思います」

「王都一のお店ですか。それは楽しみです」


 私はワクワクしながら扉に手をかけ、即座に中へと入った。

 あまり大きくないお店ながらも、店内にはたくさんのお客さんの姿がある。


 そして――とにかく蒸し暑い。

 どうやら奥が鍛冶場となっているようで、その熱気がこちらまでやってきてしまっている。


 お店としての環境は最悪なはずだが、それでもお客さんで一杯ということは良いお店である証拠。

 早速、お店の入口付近に立て掛けられていた真剣を手に取り、見させてもらうことにした。


「これは鉄の剣ですよね? 刀身が綺麗で切れ味も良さそうですね」

「こちらに置かれているのは格安の武器ですね。ただ佐藤さんが仰った通り、このお店の中では最低の質でも、他のお店なら質の良い武器として扱われているぐらいの剣です」

「これで最低品質なんですか!? 何が低品質なのか私にはさっぱり分からないです」


 剣を見慣れていないということもあるだろうが、何が劣等品質なのか私には皆目検討もつかない。

 私が格安の鉄の剣を見ていると、何やらお店の奥から一人のおじさんがこっちに向かってきた。


 年齢は私よりも少し上な感じがあり、背は低く髪も髭も毛むくじゃら。

 もしかしてだが……ドワーフだろうか?


「おう! シーラじゃねぇか! 最近顔を見せねぇと思ってたけどどうした?」


 口ぶりからして、このお店の店主さん。

 そして、シーラさんとは知り合いの様子。


「ロッゾさん、お久しぶりです。今は王命でこの方の護衛をしておりまして、王都を離れていますので来れなかったのです」

「王命で護衛? するってぇと、この冴えないおっさんは要人か何かなのか?」

「はい。最近【勇者召還の儀】が行われたのはご存知ですか?」

「もちろん知っているぜ! ……ん? てことは、このおっさんが勇者……」

「ではなく、【勇者召還】に巻き込まれてしまった方です。それと、冴えないおっさんはやめてください。佐藤さんというお名前がありますので」

「いえ、私は別に気にしていませんので大丈――」

「駄目です。ロッゾさんにはお世話になっておりますが、それ以上に佐藤さんにはお世話になっていますから」


 毅然とした態度でロッゾさんなる店主さんに注意したシーラさん。

 ロッゾさんは少し申し訳なさそうに頭を掻いた後、私に対して頭を下げてきた。


「すまねぇな。シーラにとってあんたが大事な人だとは思っていなかった。いっつも愚痴を溢していたから、てっきり嫌なお偉いさんだと思って軽口を叩いちまった」

「いえいえ、私は気にしていませんので大丈夫ですよ。気遣って頂き、ありがとうございます」

「……ほーん。本当に良い人みたいだな! シーラが気に入っている様子なのも頷けるわ!」


 ロッゾさんはそう言うと、がっはっはと豪快に笑い始めた。

 見た目通りの大雑把な感じの人ではあるが、シーラさんを大切に思っているような感じだし……性格はかなり良い人に思える。


「はい。佐藤さんは本当に良い人です。なので、ロッゾさんも良くしてあげてくださいね」

「シーラに頼まれたら断れねぇな! んで、今日は武器を買いに来たのか?」

「いえ、武器を見に来ただけですね。佐藤さんは異世界から来た方ですので、武器や防具が珍しいようですので案内しているんです」

「ほー、そうかそうか! だから、掘り出し物置き場の剣を楽しそうに見ていたんだな! うし、シーラも世話になっているみたいだし、佐藤さんには剣を一本やるよ! ショーケースに入っていないものなら好きに持っていってくれて構わねぇ!」


 唐突にそんなことを言い出し始めたロッゾさん。

 流石に無償で頂くのは悪いため、私は断ろうと思ったのだが……。


「ロッゾさん、ありがとうございます。遠慮なく頂きますね」

「おうよ! 遠慮なく持っていってくれ!」

「あの……本当にいいんですか?」

「嘘なんかつかねぇよ! なんとなく、佐藤さんには媚びを売っておいた方がいいって、俺の本能がいっているんでな!」

「そういうことでしたら、遠慮なく頂きます」

「おうよ! ゆっくり選んでってくれ!」


 そう言うと、ロッゾさんは店の奥へと戻っていった。

 本当に色々と豪快な人だな。


 シーラさんが気に入られているからというのが大前提だろうが、お金が少ない私にとっては本当にありがたい提案。

 遠慮なく、武器を一本選ばせてもらうとしよう。




お読み頂きありがとうございます!


この小説を読んで、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも感じましたら、

ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ


読者様の応援が作者の何よりのモチベーションとなりますので、是非よろしくお願いいたします!

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