第160話 青肌の女性
ライムの素早い対処により、青肌の女性は一命を取り留めた。
ついこの間購入した【ハイヒール】の魔法玉も使い、体の方は完全に回復している。
後は目覚めるのを待つだけといった感じだったんだけど……意外にも目覚めるのが遅く、目が覚めたのは丸1日が経ってからだった。
そろそろ何かしらのご飯を食べさせないといけないと思っていたため、目を覚ましてくれてホッとしている。
「…………ん、んぅ。……あれ、ここはどこ?」
「おはようございます。意識の方は大丈夫ですか?」
「……ん。大丈夫。――って、人間ッ!?」
青肌の女性は、私の顔を見るなりベッドから飛び上がった。
人間という発言、それから人とは違う青い肌から考えて、ヘレナのような人型の魔物の可能性が高いと思う。
「落ち着いてください。危害を加えようとは考えていませんので」
壁に手をつき、最大限の警戒をしている青肌の女性に私は優しく声を掛ける。
それでも警戒を解く様子はなく、髪の毛は警戒している犬みたいに少し逆立ったまま。
「……なんで人間が私を助けたの? 何か目的があって助けたんでしょ?」
「目的なんてありません。倒れていたところを私の従魔が見つけ、保護させて頂いただけです。覚えていませんか? スライムがあなたを助けたはずなんですけど」
「……あっ。あのスライム」
どうやらライムに助けられたのは覚えていたようで、少し警戒を解いてくれた。
これで少しは話を聞いてくれればいいんだけどなぁ。
「思い出してくれましたか? 100%善意で助けただけで、見返りを求めるつもりもありませんので」
「……じゃ、じゃあもう帰るって言っても帰らせてくれるの?」
「帰りたいのであれば、もちろん帰って頂いて大丈夫です。ただ、そのお体で帰ることができるんですか?」
「帰れる」
青肌の女性は毅然とした態度でそう言い放ったのだが、その直後に可愛らしくお腹がぐぅーと鳴った。
体は正直というのはこのこと。
かなり衰弱していたようだし、それに加えてご飯も全然食べられていなかった様子。
帰りたいというのであれば、無理に止めることはできないけど、せめて回復するまではここに残った方がいいと私は思う。
「お腹が鳴りましたよね? ご飯だけでも食べていきますか?」
「……鳴っていない。私じゃない」
否定の言葉を述べたのだけど、その直後にまたしても可愛らしいお腹の音が鳴った。
青肌の女性は表情1つ変えず、毅然とした態度を見せているけど、顔色は青肌なのが分からないくらい真っ赤に染まっている。
「食べやすいものをお持ちします。帰るのはそれからでも遅くないと思いますよ。私は絶対に引き留めませんので」
「……本当にいいの? 人間なのに私に優しくして」
「もちろんです。ここでは色々な方が暮らしていますからね。あなたみたいな人も珍しくありませんよ」
「……そ、うなんだ。なら……ご飯を少しだけもらいたい……かも」
「分かりました。すぐにお作りしますので、ここで横になって待っていてください」
青肌の女性にそう微笑んでから、私は急いで台所へ向かい、おかゆを作ることにした。
塩や梅、鮭なんかもあるけど、私が一番好きなのは卵がゆ。
鶏ガラと醤油だけの味付けのシンプルな味付けながら、何杯でも食べることができてしまいそうなほど美味しいお粥だ。
時折、無性に食べたくなり、特に体調を崩していない時でも作って食べていた。
そんなことを考えながら、サクッと作り終えた私は、味見をして抜群に美味しいのを確かめてから、私は部屋で待っている青肌の女性の元に持っていった。
私がお粥を作っている間に逃げ出さないかが心配だったけど、ちゃんと横になって待っていてくれていた。
「お待たせ致しました。卵がゆになります。お熱いのでお気をつけてお食べください」
「……匂いはいいけど、ドロっとしていて変な食べ物。毒とかじゃないよね?」
「わざわざ助けて毒なんか食べさせません。本当に美味しいので、騙されたと思って食べてください」
「騙されるのは嫌だけど……ごくっ」
卵がゆにも警戒しているみたいだったけど、匂いが抜群に良いため、生唾を呑み込んだ青肌の女性。
早く食べさせろと言わんばかりに、お腹もギュルギュルと鳴っており、ゆっくりとスプーンを手にして、私が作った卵がゆをゆっくりと口の中に入れた。
「――な、なにこれ! お、美味しすぎる……!」
食べる前までのゆっくりした動作が嘘のように、掻き込むように卵がゆを食べ始めた青肌の女性。
相当熱いはずなんだけど、食べ進める手は止まらず、なんと涙を流しながら食べている。
何も語ってくれないから事情は一切分からないけど、ここまで大変だったことは倒れていた時の衰弱具合から容易に想像できる。
私は一切口を挟まず、青肌の女性が食べ終わるのを静かに待った。
「……んぐっ、ぐすっ。……美味しかった。人生で食べたものの中で一番美味しかった。……疑ってごめんなさい。助けてくれてありがとうごさいました」
「気にしないでいいんですよ。困った時はお互い様です。それよりも、おかわりはどうですか? 食べられるようであれば、追加でお作り致します」
「お、おかわりまで貰っていいの? た、食べたいけど……あんなに美味しいご飯、申し訳なくていっぱい食べられない」
「遠慮しないでください。おかわりを持ってきますね」
食べることが一番の回復に繋がるからね。
美味しいご飯のお陰で、私への警戒は完全に解いてくれたみたいだし、後はご飯をいっぱい食べてもらって回復してもらうだけ。
そこから更に、追加で2杯の卵がゆをご馳走し、満足した様子の青肌の女性は、初めて私に笑顔を見せてくれたのだった。
※作者からのお願い
一日一話投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで少しでも「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、ブクマと↓の☆☆☆☆☆から評価頂けましたら幸いです <(_ _)>ペコ
つまらないと思った方も、☆一つでいいので評価頂けると作者としては参考になりますので、是非ご協力お願いいたします!
お手数だと思いますが、ご協力頂けたら本当にありがたい限りです <(_ _)>ペコ





