第158話 食の開拓
ダグラスさんと、ホットミルクとゆで卵の話で一盛り上がりした後、美味しい魔物について更に聞いてみることにした。
「ダグラスさん。ここまでの食材は、直接的なものではないという認識なのですが、やはり魔物の肉などは食べないのでしょうか?」
「いいや、ワシは食べるぞ。お主は魔物を飼っていると聞いたからのう。直接的なものは避けただけじゃ」
「なるほど。配慮してくれていたんですか」
犬を飼っていても牛や豚のお肉は食べるし、何ならインコを飼っていたこともあるけど、鶏肉は普通に食べていた。
エゴといえはエゴなのかもしれないけど、私は自分の中で線引をしているため、魔物の肉であろうと食べることができる。
「別に配慮しなくていいのであれば、オススメの魔物の肉を紹介するぞい」
「大丈夫です。是非教えてください」
「了解した。まずはブログドリの肉から紹介させてもらう」
そこからは、ダグラスさんが持ってきた魔物の干し肉を色々と食べさせてもらった。
美味しいものだけ選別して紹介してもらったんだけど、肉の方は正直あんまりピンとはこなかった。
ジビエよりも更に獣の臭さが残っている感じであり、干し肉ということもあって肉質も非常に硬い。
この世界の食材と大差ないように感じてしまったな。
「……なんじゃ。微妙な反応じゃな」
「すみません。そこまで美味しいという感じではありませんでした」
「随分とはっきり言うのう。干し肉じゃから旨味は強いはずなんじゃが」
そう言いながら、魔物の肉のジャーキーをもぐもぐと食べているダグラスさん。
個人的にはヒットしなかったけど、魔物の肉も食べることができると分かったのは大きい。
この感じだったら、もしかしたら美味しい魔物なんかもいそうな感じがあるからね。
陸地だと筋肉がついて硬くなっちゃうだろうけど、水棲の魔物なら筋肉がついても美味しい可能性がある。
「ダグラスさんは水棲の魔物は食べたことはないんですか?」
「一度もないな。ワシは森の魔物専門。そもそも水棲の魔物は狩りづらすぎて、誰も狩ろうとはしないんじゃ」
「そうなんですか……。アドバイスを頂けないのは残念ですが、水棲の魔物は未知ってことですよね?」
「そういうことになるのう。……もしかしてお主、美食ハンターになるつもりか?」
「いえ。私は弱くて戦えないので、美食ハンターにはならないです。ただ、依頼して狩ってもらい、水棲の魔物を食べたいとは思っていますね」
基本的には、ルーアさん達に依頼して獲ってきてもらうことになると思う。
もちろん命の危険がないよう、絶対に無理をしないように忠告はする。
「ふぁっふぁ。それはいいのう。新しい美食ハンターが出てきてくれて良かった。それだけでここまで来た甲斐があったのう」
「こちらこそ、わざわざ来て頂いてありがとうございました。来てもらっただけじゃなく、色々とご馳走にもなりましたし」
「気にしなくていいんじゃよ。何か美味しい食材を見つけたら共有する。それが美食ハンターの暗黙のルールでもあるからのう」
「そうなんですね。では、私も美味しい魔物を見つけたら、すぐにダグラスさんに教えます。今度は私のほうが赴きますので」
「それは楽しみじゃな」
コミュニティが狭い分、繋がりを大事にしているみたいだ。
わざわざこうして普及しに来てくれたのも、未知の食材への探究心から。
私は恥ずかしさもあって美食ハンターとは名乗れないけど、ダグラスさんは生粋の美食ハンター。
困ったことがあったら、遠慮せずに色々と聞かせてもらおう。
「今回のお礼というほどのものではありませんが、ご飯を食べていきませんか? 魔物の食材ではないのですが、美味しい料理をご馳走します」
「美味しい料理? 気になりはするんじゃが、魔物ではないなら……」
「もちろん食べていくわ。ダグラスが拒否しても私は食べて帰る。連れてきたのだからいいわよね?」
ダグラスさんは拒否しようとしていたのだが、ベルベットさんが食い気味で反応した。
もちろんベルベットさんにもお礼がしたいため、ご馳走するつもり。
「もちろんです。ベルベットさんもこう言っていますし、ダグラスさんもせっかくなので食べていってください」
「ワシ一人では帰れないからのう。そういうことなら、少しだけ頂くことにする」
「佐藤の料理は、魔物なんかの比じゃないくらい美味しいからね。ダグラスもきっと驚くわよ」
「魔物より美味しい食材など、絶対にありえないわい」
そう言っていたダグラスさんだったけど、私の作った日本料理を一口食べ、目が飛び出るくらい驚いていた。
少しと言っていたけど、ご馳走して良かったと思えるくらいに綺麗に完食してくれた。
唯一の懸念点が、魔物の食材から日本の食材に意識が向いてしまわないかだったけど……私の心配は杞憂で済んで良かった。
今回ご馳走した料理以上の美味しい魔物を見つけると気合いが入ったようで、やる気満々でダグラスさんは帰って行ったのだった。
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